クマゲラ観察の最終日

 

観察テントに籠る

 

 5月15日(9日目) 木曜日 晴れ

クマゲラ観察の最終日を迎えた。今日は朝一番の交代は6時ころを予想し、4時30分に宿を出て、朝・午前・午後の3回のシャッターチャンスを狙うつもりだったが、3時に風の音で目覚めると、外は宿の建物を揺るがす強風が吹いていた。

 

 

終日11m〜12mの強風が吹き荒れる予報だった

 

天気予報を確認すると、宗谷地方は快晴で気温も19℃まで上がるが、強風濃霧注意報が発令されていた。風は終日11m〜12mが吹き荒れるとのことだ。風があまりにも強いので朝の観察は中止し、午前と午後の2回に変更した。

 

素晴らしい利尻富士が見えた

 

7時10分に宿を出ると今回の旅で1番素晴らしい利尻富士が見えた。雲ひとつかかっていない早春の利尻富士だった。かっこいいの一言に尽きた。

 

テントは強風で半分になっていた

 

観察テントに8時15分に着いた。テントは強風で半分に縮まっていた。テントを整備しカメラの設定を確認したあと、しばらく横になって休むことにした。今回のクマゲラ観察では午前中で1番早く抱卵交代したのは7時55分だったが、10時ころまでには午前中の交代が行われるはずである。大木の葉を揺らす風の音がすごかった。風が強すぎて鳥たちは森の奥か藪のなかに入ってしまい、鳴き声があまり聞こえてこなかった。そのようななかで時折りアカゲラの鳴き声が聞こえてきていた。

 

 

オスがなかなか交代に来ないので巣穴から外を窺うメス

 

10時にメスが巣穴から2度3度顔を出して外を確認していたが、オスは交代にやって来なかった。10時15分に突然、メスが巣穴から飛び出した。メスが急に飛び出してしまったので、撮影することはできなかった。そのあとオスが幹に飛んできて、巣穴に潜り込んだ。次の交代は13時から14時ころだろう。それが最後のシャッターチャンスである。

 

テントから足を投げ出して休んだ

 

強風が吹き止まず鳥は姿を消しているのでバードウォッチングには出ずに、おにぎりを食べたあとはテント内で横になって休むことにした。13時に起き出してカメラの設定確認をして待機することにした。今回のクマゲラ撮影のカメラ(ソニーα6000)設定は、画像の大きさ6000×4000ピクセル、シャッタースピード1/1250〜2000秒、ISO2000〜3200、望遠レンズ200〜600mmズーム、というもので天候によって設定を変えていた。

 

巣穴に入る直前のメス(頭頂部の赤が小さい)

 

13時31分、またもやオスが突然巣穴から飛び出してしまった。午前と同じで飛び出す瞬間の写真は撮れなかった。すぐにメスが巣穴に潜り込んだので、これで最後のクマゲラ観察と撮影を終了した。8日間ササ藪のなかに張りっぱなしにしていた観察テントを折りたたみ撤収した。

 

巣穴に入る直前のオス(頭頂部の赤が大きい)

 

今回観察したクマゲラのカップルは、オスとメスが交互に抱卵を繰り返し、交代時刻は朝の6時ころ、午前の10時ころ、午後の14時ころ、夕方の18時ころだった。約4時間ずつの抱卵時間である。このことが分かったのは観察を始めてから5日ほど経ったころだった。夜はオスが朝まで一晩中卵を温めていた。その抱卵の交代時刻に合わせて観察テントのなかに潜り込み、わずか1〜2秒のシャッターチャンスを狙っていたわけだが、巣穴から飛び出すタイミングがつかめず、なかなか想うようにはいかなかった。

 

タンポポが笑っていた

 

昨年も感じたことだが、利尻島に来て広い森の奥からクマゲラのキョーンキョーンという鳴き声は聞こえてくるのだが、島の中央に位置する利尻山の周りを、ドーナッツ状に取り囲む原生林のなかで、巣を探すのは大変なことだと実感する。今回はたまたま宿のオーナーが、お客を利尻山登山口まで車で送迎する時に、車道のそばでクマゲラが巣を作っていたところを発見し、巣の場所を教えてくれたものだった。そのことがなければ今年も森のなかを探し回り徒労に終わったことだろう。

 

ノゴマが「また会いましょう」と見送ってくれた

 

今回は絶滅危惧種のクマゲラを間近に見ることができ、観察と撮影を通して十分に楽しむことができた旅だった。撮影に関しては次の7つの姿が撮れれば上出来と考えていた。

@   巣穴から外を確認するオスの姿

A   巣穴から外を確認するメスの姿

B   巣穴の幹に垂直に止まるオスの姿

C   巣穴の幹に垂直に止まるメスの姿

D   巣穴から飛び出すオスの姿

E   巣穴から飛び出すメスの姿

F   抱卵交代でオス・メス両方が1枚に写っている姿

この7つのパターンの全てが撮影でき本当にラッキーだった。

 反省点もあった。

@   撮影の際に望遠レンズの手持ちでは、巣穴からクマゲラが飛び出す瞬間を待つまでの時間に、望遠レンズが重すぎて腕にかかる負担が大きすぎたので三脚が必要だった。

A   テント内の撮影姿勢が座ったまま窮屈だったので小さな椅子が必要だった。

反省点にあげた三脚も椅子も幕張の自宅にあるので次回は持参しようと想った。

 

最後の晩餐(5月15日)

 

いつものように利尻富士温泉に入り、コンビニで夕ご飯のつまみを買って宿に戻った。今日の夕ご飯は、焼き餃子、冷奴、キムチ3種盛り、蕗の薹のおひたし、味玉、ザンギ、コロッケ、ネマガリタケ、ビールはサッポロクラシック500ml、サッポロ黒ラベル500ml、おたるワインだった。ネマガリタケはクマゲラ観察の帰りに自分で採ってきて湯がいた。ポン酢をかけて食べるととても美味かった。窓側の指定席から利尻富士を眺めながら最後の晩餐だった。これだから自由旅はやめられない。

 

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