5月の山は美しい
抱卵交代で巣穴からオスが飛び出した
5月14日(8日目) 水曜日 曇り
クマゲラの観察と撮影も残すところ2日となった。今日は自転車専用道路を歩いて歴史の森を散策し、観察テントに入ることにした。昨日の抱卵交代は9時50分と13時20分だった。天気予報では日中の気温は11℃〜13℃だったが、朝からどんよりと曇っており、利尻島に来てから一番寒いと感じた。9時に観察テントに入ることにして7時20分に宿を出た。
柔らかな緑が増していく5月の山は美しい
利尻島にやってきてから1週間が過ぎているが、日一日と柔らかな緑が増していく5月の山は実に美しい。朝からノゴマがソングポストの枝に止まり、赤い喉を膨らませながら美しい声で高らかに鳴いていた。雲が流れてようやく利尻富士が美しい姿を現したが、まだ周りには雲が立ち込めていた。
ウグイスがサクラの枝でさえずっていた
歴史の森に向かう途中の藪のなかで、エゾムシクイに似た鳥が目についた。鳴いておらず、ちょこまか動いていた。歴史の森のなかを散策していると、枯れた大木が至るところに立っており、そこにクマゲラの食痕が多く見られた。クマゲラのキョーンキョーンという鳴き声が遠くから聞こえてきていた。ウグイスがサクラの木の枝でさえずっていた。公園に植えてあるサクラは早咲きだが、山のサクラはまだ蕾か咲きだしたばかりである。その枝でウグイスが縄張り宣言のさえずりを繰り返していた。
再び、シマリスに出会った
昨日と同じあたりでシマリスに出会った。同じシマリスだろうから、このあたりに巣があるのだろう。シマリスは私が写真を撮っていても、食事に夢中で私には関心を向けない。写真を撮り終わったので、シマリスに敬意を表して2mくらい離れて歩いたが全く逃げる様子はなかった。
巣穴の外のオスと内のメスが話していた
観察テントに着いたのは8時50分だった。これから1時間以内にメスからオスへの交代があるだろう。テントのなかで横になって待機した。森の奥からクマゲラの鳴き声が届いていた。なかなかオスは交代にやってこなかった。メスが巣穴から顔を出し、まだ来ないのかな?という感じで周りを見渡していた。11時になってもオスは交代にやって来なかった。天気予報に反して気温が上がってこず、風はなかったが冷え込んでおり寒かった。歩いていないと体が冷え込むので、早くオスが交代にやってきて私は観察テントを出たかった。
飛び出したメスの体にササが被ってしまった
キョローンという声が聞こえたと思ったら、突然オスが巣穴の下に飛びついた。11時42分に抱卵交代だった。メスが巣穴から飛び出すところの写真は撮れたが、
観察テントと巣穴の中間にあるササの葉がメスとかぶってしまった。以前から気になっていたササだったが、早めに処理しておくべきだった。13時半までテントを離れることにした。
キツツキ類で最小のコゲラが歌っていた
北麓野営場に向かっていくと、枝を垂直に移動している野鳥がいた。ゴジュウカラかコゲラかと想ったが、初めて聞く美しい声で鳴いていた。写真を撮ってみるとコゲラだった。幕張で見かけるコゲラはジーンとしか鳴かないので、あれほど美しく鳴くとは知らなかった。コゲラはキツツキ類で最小であり、これで利尻島に棲んでいるキツツキ類3種類のクマゲラ・アカゲラ・コゲラに出会ったことになった。
携帯トイレ回収BOXも設置された
明日、5月15日に北麓野営場がオープンする。そのための準備が着々と進んでおり、入山下山の際に登山靴の底を洗う設備も準備され、トイレも開けられ携帯トイレ回収BOXも設置された。利尻山は8合目の長官山の先に避難小屋があるが、トイレは設置されていない。そのために登山者は必ず携帯トイレを準備して登っていくのがマナーだ。携帯トイレは観光案内所や宿で1こ500円で売っている。
15年前に利尻山に登った(2011年9月10日)
利尻山は深田久弥の『日本百名山』の最北の山として1番目に紹介されており、ほぼ円形に近い利尻島の海岸のどこからも見ることができ、その孤高の姿から利尻島のシンボルとなっている人気の高い山である。私が利尻山の山頂1719mに登ったのは、15年前の2011年9月のことだった。雨や強風など天候に恵まれずに登山を見合わせたり途中で引き返すことが多く、4回目のチャレンジでやっと頂上に着くことができたのだった。
花ガイドに必要なことは?
北麓野営場で私が泊まっている『利尻ぐりーんひるinn』に常駐している『利尻はなガイドクラブ』の新人2人が自主研修をしていた。若い男性の牧野さんと会ったので「花ガイドにとって何が一番大切だと思いますか?」と尋ねてみた。牧野さんは「安全、気配り、おもてなし」などと答えたが、私は「コースの安全確認や気配りも当然ですが、一番大切なのはプロとしての知識を伝えることです。お客さんはガイドが1年目の新人か、10年目のベテランかは分かりません。そのお客さんに対して1年目でもプロとして利尻島の自然に関する知識を伝えるのです。シーズン前の今は、その知識を必死になって学び取ることが大事です。そしてお客さんの質問に対して嘘は言わずに真摯に対応することです。そうすればお客さんの信頼が取れると想いますよ。頑張ってください」と伝えると、「ありがとうございます」という言葉が返ってきた。牧野さんは真面目な青年だと思った。
なが〜い舌を出したメス
テントに戻ったのは13時10分だった。邪魔だったササの葉を処理し、おにぎりを3こ食べて待機することにした。午前中の交代が約2時間も遅れたので、午後の交代もずれて遅くなるだろう。1時間ほど横になってから、メスがいつ交代に来てもいいように撮影の準備にかかった。強い風が吹き出していた。
抱卵交代で巣穴からオスが飛び出した
15時10分に交代の合図のような鳴き声が聞こえたのでカメラを構えると、巣穴からオスが首を出し入れしていたが、そのまま潜ってしまった。その1分後にメスが巣穴の下に飛びついた。やはり、あの鳴き声は交代の合図だったのだ。オスが巣穴から飛び出すのに入れ変わってメスが巣穴に潜り込んだ。今日はこれで観察と撮影を終了し、明日の観察最終日には4時起きでテントに向かおうと考えた。
利尻富士温泉の露天風呂
利尻富士温泉には15時50分に着いた。昨日の温泉客は私1人だったが、今日は3人だった。町営の温泉施設だが、この客の入りでは赤字ではないかな。汗を流したあとは座敷でいっぱい。昨日まで飲んでいたサワーが売り切れだったのが残念だった。
今日の夕ご飯(5月14日)
今日も残雪の利尻富士を眺めながらの夕ご飯は、鮭弁当、キムチ3種盛り、冷奴、味玉、蕗の薹のおひたし、焼き餃子、ビールはサッポロクラシック500ml、サッポロ極ゼロ500ml、おたるワインだった。おたるワインは日本一10年連続とは知らなかった。焼き餃子は冷凍品を買ってきて自分で焼いたのだった。温泉で汗を流したあと350mlを2缶飲み、夕ご飯で500mlを2缶飲み、そのあとに地酒となると、少し飲み過ぎだろうか?
私の旅のパワーの源は酒を愉しく飲むことにあり、年齢を重ねると身体のあちこちに不都合なことが出てくるが、今回も元気に野外観察をやりながら十分愉しんでいる。酒が飲めない身体になれば、野外観察や撮影も出来なくなるだろう。