オタトマリ沼と仙法志海岸の野鳥観察へ
オタトマリ沼にやってきた
5月11日(5日目) 日曜日 晴れ
昨日午後より降り始めた雨は、ひと晩中降り続き朝方には止んだが、水たまりがあちこちに出きており、ササ薮のなかの観察テントは水浸しと想われた。今日のクマゲラ観察と撮影は休みにし、島の反対側にあるオタトマリ沼、仙法志御崎海岸にでかけることにした。2500円の1日フリー乗車券を買って、島内路線バスを乗り継いでの野鳥観察である。
利尻島でも廃屋が目立った
利尻島にやってきたのは今回で5回目だ。1回目は50年前、2回目は40年前、3回目は15年前、4回目は1年前だった。昔に比べると島内に空き家や廃屋が目立つ。空き家や廃屋は全国的に起きている現象だが、自然の厳しさに加え、漁業と観光で成り立っている離島にとって厳しい現実だと想う。
オタトマリ沼をゆっくり2周した
オタトマリ沼で下車し、沼を回りながら野鳥観察をすることにした。沼をゆっくり1周すると約1時間である。利尻富士は雲に隠れて姿が見えない。姿が見えると沼に逆さ利尻富士が映って絶景なのだが残念だ。
若芽をくわえて飛び立つコガラ
オタトマリとは、アイヌ語で「砂のある入江」という意味で、北海道内でも珍しい穏やかな砂丘海岸が広がっている。オタトマリ沼は利尻島最大の沼浦湿原のなかにあり、約7000年前に起きたマグマ水蒸気爆発の火口跡に、縄文海進による海面上昇で水が溜まり、今では海とは切り離されて淡水となっているが、今の姿は約4000年前に誕生したとのことだ。
メボソムシクイの鳴き声を聴きたかったが・・・
沼は海に近いために夥しい数のウミネコが飛んできて水面に浮かんでおり、ミャーミャーと絶え間ない鳴き声で騒々しかった。カモ類ではハシビロガモやカルガモの姿が目についた。メボソムシクイが枝に止まっていたので声が聴きたかったが、鳴かなかったのは残念だった。ムシクイ類は色や顔が似ているので名前の判別が難しく、鳥類図鑑をネットで見て確認した。
夏鳥のツメナガセキレイ
北海道に夏鳥として渡ってくるツメナガセキレイが枝に止まっていた。他の野鳥に比べると爪が倍くらいの長さがあるので「ツメナガセキレイ」という名前がついている。北海道だけに渡りの途中で休むか、夏鳥としてやってきて子育てをする。私は初めての出会いだったが、鮮やかな黄色が印象的だった。
オオバナノエンレイソウの清楚な白い花
白い3枚の花びらを開いたオオバナノエンレイソウの清楚な花が目についた。本州で見られるのは茶色の小さい花だが、それに比べると大きくて純白な花が美しい。日本縦断てくてく一人旅の途中で、この花の大群落に出会って感動したのを思い出す。花を撮っていてもイラクサが生えているので油断がならない。イラクサの茎や葉に付いているトゲトゲに触れると、強烈な痛みのあとに痒さが続くのがたまらないのだ。
若いカップルは白い恋人の丘に行くようだ
沼浦展望台から見た打ち寄せる波(2011年9月7日)
沼の反対側まで来ると、白い恋人の丘(沼浦展望台)が見えた。15年前に沼浦展望台を訪れた時には、「白い恋人の丘」という名前は無かったが、スイスの山並みのように美しい山が北海道にもあることを知ってほしいと、北海道銘菓のホワイトチョコレート『白い恋人』の箱缶に描かれているのが冬の利尻富士である。その絶景が見える場所が白い恋人の丘として観光名所となっており、そこでプロポーズしたカップルには鴛泊港フェリーターミナル内の観光案内所でプロポーズ証明書が発行されている。
2頭のクジャクチョウが戯れていた
2頭のクジャクチョウが遊歩道で戯れていた。クジャクチョウは翅の表側にクジャクの飾り羽のような大きな目玉模様がある。一度見れば忘れられないチョウである。クジャクチョウは成虫のまま越冬するので、雪の北海道での越冬は大変だろうと想う。果たして2頭はつがいだろうか?
ヒラヒラひらひら、ようやくやってきた春を2頭は楽しんでいるようにも見えた。
アオジが実に複雑な美しい声で鳴いていた
幕張では冬鳥としてやってくるアオジは、地味なジッジッとしか鳴いていないが、こちらでは夏鳥として渡ってきて、自分の縄張りを確立すると、ソングポストと呼ばれている枝の先に止まって、ピィリ、リリリリリ、ピュピュリ、ピュピュリと実に複雑な美しい声で鳴いている。
春の利尻富士が雲のなかから姿を現してきた
沼の1周目は半時計回りに、2周目は時計回りで戻ってくると、早春の利尻富士が雲のなかから姿を現してきた。真っ白な白一色の冬の姿よりも、残雪の早春の姿の方が稜線がはっきり見えるので、山の急峻さを出していると思う。それにしても利尻富士はかっこいい山だ。サイクリングの外国人青年がやってきたので、雲が飛んだ利尻富士を背景にシャッターを押してもらった。こちらも青年のスマホのシャッターを押した。私がバス停に向かうときには、青年は名物のアイスクリームを食べていた。
仙法志御崎海岸
オタトマリ沼の次の野鳥観察地は仙法志御崎海岸だった。風が徐々に強くなってきていた。海岸に降りて行き、打ち寄せる波しぶきにカメラを濡らさないように注意しながら歩いた。岩礁の上にウミネコとウミウが所在なさげに佇んでいた。海の透明度は素晴らしく、ウニが何個も海底に転がっているのが見えた。
ウミウが佇み、ウミネコが飛んでいた
ウミネコのミャーミャーという鳴き声が絶え間なく聞こえてきていた。岩場ではウミウが休憩しウミネコが飛んでいた。この場所にも観光客はいなかった。民家に昆布が干してあったが、まだ漁期に入っていないので、海岸に流れ着いたのを拾って干しているのだろう。
仙法志御崎海岸から眺めた利尻富士
海岸から眺める利尻富士も素晴らしく、一幅の絵になると思った。バス停の近くでは黄色のスイセンの花が満開だった。北海道では自宅の周りにスイセンやチューリップを植えていることが多い。それらの花々は早春にいち早く花を咲かせ、春が訪れたことを知らせてくれるからだろう。北国にも遅い春がやってきたのだ。
今日も利尻富士温泉を楽しんだ
今日の野鳥観察は2か所で切り上げて利尻富士温泉に向かった。露天風呂で地元の漁師たちが話をしているのを聞いていると「今年はウニが浅場では全く見られない。深場に行けばたくさん見られるが、中身がスカスカだから取る気はしない」とのことだ。ウニ漁の解禁は6月1日だから、下見でウニの生育状態を調べたようだ。今年のウニ漁は不漁らしいが、ウニは昆布などの藻類を食べて育つので、海水温の上昇で藻類が減少しているのだろう。ウニ丼は高くなるのかもしれない。テント内でのクマゲラ観察と撮影は、膝を伸ばしているものの、長い時間座っている状態なので腰痛や血行不良を起こしやすい。今日は骨休みが出来て良かった。
今日の夕ご飯(5月11日)
今日の夕ご飯から仕出し弁当が終わったので、コンビニのセイコーマートで花弁当を買った。弁当に加えて野菜とエビのビーフン、サバの塩焼き、エビフライ、味玉、蕗の薹のお浸し、酒はサッポロクラシック500ml、サッポロ極ゼロ500ml、地酒は増毛の国稀・鬼ころしだった。野外観察と撮影は体力勝負なので食事が大切なのだ。77歳にしてこの食欲。青空の広がった素晴らしい利尻富士を眺めながら至福の時を過ごした。