ライバルに負けるな〜

 

私の美しい歌声を聞いて!

 

 4月7日 晴れ

 今回の花島公園までのバードウォッチングの目的はウグイスの雄の撮影であった。ウグイスは藪の中から滅多に姿を現すことはない。しかし、恋の季節になると状況が変わるのである。雄は自分の恋人探しのために雌から見えやすいように藪から出て木の梢に留まって美声を競うのである。その囀りの力強く美しいものが雌に受け入れられ、めでたくカップルになるのである。下手な囀りの雄は雌を捕まえることができず、繁殖期が終わる晩夏になっても寂しく鳴き続けるのである。諦めの悪い雄というのは、どの世界にもいるものである。このようなウグイスの習性から春の時季がウグイスの雄を撮影するのに最適なのである。

 

私の歌声は日本一

 

四方八方からウグイスのホーホケキョの囀りが聞こえてくる。普段はチッチッかジィジィと聞こえる地鳴きなのだが、春の時季だけは美しい声でホーホケキョと囀るのだ。雄にとっての美しい歌声は雌を獲得する手段なのだ。そのために見晴らしのいい梢で歌うのである。雌は美しく力強い囀りをする雄が優性遺伝的に丈夫な子どもが出来ることを知っている。春は雄としては自分の子孫を残すことができるか否かの重要時期を迎えているので、張り切って囀ずるのである。雌が雄を選ぶのである。雌は下手な囀りには見向きもしない。雄同士の競争は厳しいのである。

 

1番目に出会った雄の歌声は美しかった

 

 1番目に出会った雄は、美しい声で囀っていた。はっきりとホーホケキョ・ケキョケキョと歌っていた。雄にも個性があり、上手に歌える個体もいるが、調子はずれで歌になっていない個体もいる。音痴な雄は生存競争から脱落するのは自然界では仕方がないところだ。最初に撮影した雄は美しい声で歌っていた。おそらく恋人が見つかるだろう。よくウグイス色という言葉が聞かれ、うぐいす餅の明るい黄緑色を連想しがちだが、実際のウグイスは写真でも分かるように地味な暗い色をしているのである。

 

2番目に会ったウグイスの歌声も美しかった

 

2番目に出会った雄は、河川敷に生えたクワの木の梢に留まり、10分間も囀り続けたのである。 まさに私を捕まえて、と自己主張しているようだった。残念ながら私はウグイスの雌ではないが、その雄の囀りは美しいと思った。バードウォッチング中にとても下手なウグイスの歌声が耳に届く時があるが、この時の雄の歌声は美しかった。ホーホケキョの囀りは恋人募集中の意味と同時に、雄のテリトリー縄張りを宣言している意味もある。最初の雄を撮影した場所から100mと離れていないところで2羽目のウグイスを撮影したので、結構近くで自分の縄張りを持っているものである。

 

4番目の雄は胸を膨らませ、尾羽を震わせて絶叫していた

 

3番目の雄は、姿は見えるのだが前の木の枝が邪魔をして写真を撮ることができなかった。

4番目の雄はヤナギの梢に留まり、こちらも10分間ほど囀っていた。喉や胸を膨らませ尾羽根を震わせ、身体全体で声を搾り出すように囀る姿には必死感が漂っていた。全力で雌を獲得しようとする意思が滲み出ていた。頑張れ〜と心から声援を送った。

5番目のウグイスも姿は確認できたが、前の木の枝が邪魔をして写真は撮れなかった。

 

私を見おろすウグイスの雄

 

 ウグイスの撮影が一段落したところで、おばあさんが話しかけてきた。「すごいカメラですね。鳥を撮っているんですか?」という質問から始まった。私は「野鳥観察は60年ほどしており、写真を本格的に撮りだして10年くらいになる」という旨を伝えた。昭和12年生まれで現在83歳のおばあさんは「すぐそこでウグイスが鳴いていたので、私は口笛で呼びかけて5分くらい遊んでいました。」の話から、中学生の時に青森県で開かれたテニスの全国大会に出場したこと、父親のライカカメラの話になり、更に料理の話から包丁の話に発展し、日本刀へと次々に枝葉が伸びていった。私も先を急ぐ必要はなかったので、話し相手で相槌を打っていると、おばあさんとの話は20分間くらい続いただろうか。楽しいおばあさんだった。

 

クロジの雄

 

花島公園のベンチに座っていると聞こえてくるのは、風の通り過ぎる音と野鳥の囀りだけである。特にウグイスの囀りは四方八方から耳に届く。周りの木々は柔らかい芽を吹き出し全身が輝いている。足元の草花もそうだが、春の季節は生命力が溢れるのを感じる。ベンチに1時間ほど座って、以前ルリビタキが現れた方向を見ていたが、その姿を確認することはできなかった。きっと山に帰って行ったのだろう。

 

クロ塗り作業中のトラクター

 

 5月の連休明けの田植えに向けて準備が始まった。畔に作るクロ塗りも昔はテンガと呼ばれていた鍬を使って人力で塗っていたものだが、今では機械化が進みトラクターで一気にやってしまう。実にスピーディーだ。クロ塗り作業の後ろをムクドリが掘り返された土の中から出てくる虫を探していた。

 

3羽のツバメが田んぼの上を飛び交っていた

 

3羽のツバメが田んぼの上を飛び交っていた。昔の国鉄時代に「つばめ」という特急列車があったようにツバメは速い。ツバメの飛ぶ姿をカメラで追っても追いきれないので、しばらく観察していると、なんとなく飛ぶコースが推測できるようになった。そのコース上に焦点を合わせ、ツバメの飛んでくるのを予想してシャッターを押した。

 

トカゲを捕らえたコサギ

 

ツバメをなんとか撮影しようと思って粘っているとコサギがやってきた。コサギが首を伸ばして必殺の一刺しで何やら獲物を捉えたようだった。私とコサギとの距離は40mほどあり、何を捉えたのかわからなかった。獲物はしばらく暴れていたが、やがて頭から丸のみにされてしまった。帰宅後にPCで確認するとトカゲだった。

 

アオギリの芽生え

 

 暖かな気候となり花見川の水辺には釣り糸をたれる人たちが見られるようになった。サイクリングをする人、ジョギングをする人、散歩をする人の姿も増えだした。それに反して野鳥の姿が徐々に少なくなってきている。季節は春へと移行したのだ。今回のバードウォッチングの目的はウグイスの雄が囀っている姿の撮影だったので、その目的が達成できて満足だった。!(^^)!

 

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