大空に羽ばたく

 

巣立ちに向けての羽ばたきが始まった(7月29日)

 

汐留橋までのバードウォッチングに家を出たのは5時30分だった。相変わらず三代王神社の森からミンミンゼミの大合唱が聞こえていた。空は中央から東側半分が雲に覆われ、西側半分には青空が拡がり、残っていた半月が白かった。ツバメの巣を覗くと、雛が羽ばたきの練習をしていた。この練習を始めると、巣立ちの日は近い。慌て者は羽ばたきの練習中に巣から落ちてしまうものもいる。

 

田んぼの畔に張られたスズメ対策の網

 

スズメが稲穂の実を吸うために田んぼに集まりだした。今の時季のスズメは、稲穂の柔らかい実をくちばしで噛み、その汁を吸うのである。スズメの襲来を防ぐために、畔に網が張られているところもあるが、スズメはその網を飛び越え、ホバリング体勢から田んぼに舞い降りて行く。数10羽のスズメに稲穂の実を断続的に吸われると、収穫を前にした農家は打撃を被る。農薬撒布は稲のイモチ病などの伝染病やウンカなどの害虫を駆除するためだが、スズメのように稲穂の汁を吸うことに対する対策は網を張るぐらいしかない。網以外にはカーバイトで発生させたアセチレンガスに点火させ、爆発音によってスズメを遠ざける方法もあるが、幕張地区では民家が近いために、爆発音を採用している農家はなく、網で防いでいるのみである。

 

電線の上で鳴くキジバト

 

デデッポッポーという鳴き声のキジバトが電線に留まって、喉から胸のあたりを思いっきり膨らませて鳴いていた。人間の音声源は喉仏あたりにあるが、鳥の場合はもっと下の気管から気管支に分かれるあたりにあるので、鳴くときは胸の上あたりを思いっきり膨らませて鳴くのである。キジバトは一般的には山鳩と呼ばれている野生の鳩で、この鳥が鳴くと天気が崩れる、という昔からの言い伝えがある。最近は天候が不安定で、昨日も茨城・栃木・群馬の山際では大雨洪水警報と避難勧告が出され、幕張でも雷鳴が轟いていた。野生動物は自然の変化に実に敏感である。キジバトも独特の感覚から天候が崩れることを予知するのだろう。明日は雨だろう。

 

ミンミンゼミが鳴くと、夏は真っ盛りだ

 

 キジの雛を探していると、自転車に乗った小学2年生くらいの男の子が話しかけてきた。話し相手をしていると、お母さんと一緒に魚とりにきたという。私はお母さんに挨拶をして別れたが、キジの雛には出会わず、帰宅途中に魚とりの母子に再会したので、魚は獲れましたか?と聞いてみると、獲れないと言う。子どもの網を借りて水路を見降ろし、魚が棲んでいそうな木陰と土管の下流に網を置き、長靴で騒がして魚を驚かすと、魚は下流に逃げるという習性があるので、網のなかに5cmほどの魚が5匹入った。1発的中である。バケツに移してやると、母子ともに大喜びだった。魚の習性を知っていれば簡単に獲れるのである。

 

ずいぶん大きくなったツバメの雛たち(8月1日)

 

 ツバメの雛がずいぶん大きくなり、3羽の雛には巣が小さく感じられるようになってきた。雛の喉元は赤みを増し、頭の黒、首の黒、胸の白の色もはっきりとしてきて、親ツバメと同じ色に近づいてきた。巣立ちの日は近い。このまま元気に巣立つことを願っている。

 

朝日を浴びて

 

 水面にはいたるところでボラがジャンプをくりかえしていた。朝日を浴びて上半身裸になった青年が錨針による引っ掛け釣りをしていた。夥しい数のボラがジャンプしているのだが、青年の釣ろうとしているのはボラではないようだった。しばらく見ていたが何も釣れなかった。

 

キジのメスが畔に佇んでいた

 

 キジの雛を探していると、畔で佇んでいるキジのメスに出会った。しかし、メスのそばに雛の姿はなかった。雛が生まれているとすれば必ずメスのそばにいるのだが、メスは単体だった。このメスには雛がうまれなかったようだ。雛が生まれているならばメスと雛が鳴き声でコミュニケーションを取りながら餌を啄んでいるはずなのだ。30分ほどメスを観察していると、メスは静かに草の葉を食べながら畔を歩きだしたが、やはり雛の姿は現れなかった。

 

田んぼに案山子が登場した

 

 稲穂が出ている田んぼには網や綱が張られ、スズメからの食害を防ごうとしているが、田んぼの中に案山子も現れている。案山子がどのくらいの効果があるかは不明だが、案山子は全国的に設置されているので、効果はあるのだろう。タオルで頬かむりした顔は、マネキンの頭部を使っているために、実にリアルである。

 

稲穂を食べるカルガモ

 

 カルガモの家族が畔に佇んでいた。しばらく眺めていると、なんと、首を伸ばして稲穂を食べだしたのである。初めて観た光景だった。普段、カルガモは水草を食べているので、穀物類は食べないと思っていたが、稲穂を食べていたのにはビックリである。新しい発見だった。

 

キジのオスが稲穂を食べていた

 

 キジのオスが畔に佇んでいた。朝日を浴びて顔は赤さを増し、首の緑色は美しく輝いていた。しばらく動かないでいたが、少しずつ稲穂に近づくと稲穂を咥えて、引っ張りながらこそげ落とすように食べだしたのである。ビックリ!初めて観た光景だった。キジは草の葉や実、昆虫や蜘蛛などを食べているので、稲穂を食べても不思議ではないのだが、収穫後の落ち穂を拾うことはあっても、収穫前の稲穂を食べるとは思ってもいなかった。早朝バードウォッチングに出ると、思いがけない光景に出会える。

 

雛は元気に巣立ったようだった(8月5日)

 

 5日ぶりにツバメの巣を確認すると、3羽の雛は元気に巣立ったようだった。巣立ったあとは親鳥から餌の捉え方を教えてもらい、ひとりで生き抜いていかなければならない。体力を充分に蓄えたあと、秋になれば東南アジアの台湾・フィリピン・インドネシア・マレー半島などの国へと長い渡りの季節を迎えるのだ。渡りの途中で体力が持たなければ、海上に落ちて死んでしまう、という厳しい現実が待っているのだ。

 

元気に翔び回るツバメの若鳥

 

巣だった雛は、巣が掛かっていた家のそばで元気に翔び回っていた。親鳥を含めて6〜7羽が大空で交差するように舞っていた。大空を自由に飛べることが、楽しくてしかたないように、元気に力強く羽ばたいていた。これからの試練に向かって、がんばれ3きょうだい!!

 

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