オオタカに出会った

 

木の枝に立っている鷹

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カラスに追われ、逃げるオオタカ

 

 12月28日 快晴

東京の北区赤羽に住む高校時代からの友人である金井君から「都立浮間公園オオタカが現れている」という情報が12月上旬にもたらされた。オオタカは春から夏の繁殖期は標高の高いところに行き、秋になると標高の低いところに移動してくる。浮間公園には11月ころから3月ころまで来ているようだ。オオタカは生態系のトップに君臨する猛禽類である。野鳥が相手なので、出会うか出会えないかは運次第だが、2度3度と出かけていれば、そのうちに出会えるだろうという気持ちで浮間公園に向かったのだった。

 

川の上の橋

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都立浮間公園

 

浮間公園は幕張の自宅からは2時間弱の距離だった。10時に浮間公園に着いた。公園案内では一番奥が野鳥観察ゾーンとなっており、メタセコイアの高い木が10本ほど育っていた。望遠レンズを持っていた年配の方に話しかけてみた。その方によると、「高い木の枝にオオタカはやってくる。いつやってくるか分からないが、以前はハトを捕まえていたところを見た」と話してくれた。既に5人のカメラマンが望遠レンズを持って待機していた。

 

木の枝に止まっている鳥

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休憩中のカワセミの雌

 

浮間公園にやってきて1時間30分が経ったがオオタカは現れなかった。待機してるカメラマンの一人は、「全くやってこないなぁ。暇で暇でしょうがない」などと独りごちた。今週は全国的に寒波がやってきており、日本海側では大雪が報道されていた。今朝は千葉市でもマイナス3℃で、この冬はじめて冬日を記録していた。じっとオオタカが飛来するのを待っているのも楽ではない。風はほとんどないが、気温が上がらず底冷えしていた。湖畔の遊歩道脇のケヤキ林の下で、グランドシートを敷き、その上に座ってオオタカがやってくるのを待っているのだが、冷え込んでいるために1時間に1回程度トイレに向かっていた。

 

木の枝に止まっている鳥

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ジョウビタキの雌

 

12時ころだった。オオタカのような大型の鳥がメタセコイアの高い木の向こうから私の方に飛んできて、そのまま頭上を越えて南の方に飛び去った。木の枝に留ってくれれば写真が撮れたのだが、一瞬の出来事だった。飛んできた鳥の姿を正面から見たのだが、スマートな体型をしており、両翼は流線型、尾が思ったより細く長かった。きっとオオタカだろう。

 

森の中にいるフクロウ

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タカの王者オオタカ

 

13時ころは2、3人と少くなったカメラマンが14時ころになると8人に増えた。私は15時まで待機するつもりだった。14時30分ころ、カラスが騒ぐので双眼鏡で確認すると、オオタカが1羽やってきていた。オオタカは白い眉班と黒い眼帯に黄色く鋭い眼。キリッとした二枚目である。撮影しだすと枝にとまっていたオオタカはすぐに飛び立ち、その後をカラスが追尾し、空中でのバトルとなったが、オオタカ1羽に対してカラスは2羽だったため、オオタカは追いまくられて南の方に飛び去ってしまった。カラスの方が強い感じだった。オオタカとカラスのバトル状態は、残念ながら撮影できなかった。常連のバードウォッチャーによると、14時から15時ころにオオタカが現れる、とのことだった。明日も快晴なので出直すつもりだ。

 

雪が積もっているリス

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カラスに追われるオオタカ

 

 12月29日 快晴

 浮間公園の2日目である。昨日の経験で大体の感じは掴めたので、今日は7時から15時までの8時間待機する予定で出かけた。7時10分に浮間公園に着いたが、バードウォッチャーは誰もおらず、私が最初だった。待機しているうちにオオタカが撮影できたならば、その時点で帰ろうと思った。今日も冷え込みが厳しかったので、ホカロンを2個使っていた。池にはカルガモがゆったり浮いており、バンも葦の中から出てきた。コサギが枝の上から水面を見下ろし、チュウサギもやってきた。メタセコイアの大木に朝日が当たり、赤く輝きだすなかで、ヒヨドリが相変わらずかまびすしい。昨日は本を読んでいたため、オオタカが飛来したのにすぐ対応できずに遅れをとったが、今日は本を読まずに飛んできそうなメタセコイアの方を注視しながら待機していた。

 

上を見上げている鴨

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人なれしたカイツブリ

 

7時45分、椅子に座って待機している私の後頭部にも朝日があたりだし暖かくなってきた。しかし足元は冷え込み、足の指先がジンジンして痺れてくる。ずっと待機しているのも暇なので、水面を泳いでいるカイツブリを撮影した。この池のカイツブリは公園の散歩者が多いので、人間を見慣れているせいか、あまり怖がらずに近くまで泳いでくる。花見川にいるカイツブリは、人を見るとすぐに水に潜ってしまうのとは対照的である。野生の鳥が人間を恐れないというのもおかしなものだ。

 

木の枝に止まっている鳥

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メタセコイアのてっぺんで睨みを利かすハシブトガラス

 

40代ぐらいのカップルのうちの男性が「ハヤブサかオオタカがいると聞いたんですが、どこで見られますか?」と聞いてきた。私は、「あそこに大きな木が生えてるでしょう。あの木に留まるんです。昨日は2度きました」と答えた。男性は私の話した内容を女性に伝えて、しばらく木の方を眺めていたが、オオタカはやって来ないので立ち去った。昨日は2時間半で1回見ただけなので、そう簡単に見るチャンスはやってこないのだ。

 

草の上にいる水鳥

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ゴイサギの若鳥(左)とアオサギ(右)

 

ゴイサギの若鳥が葦の生えている水辺に舞い降りた。小魚を狙っているようだ。そこにアオサギがやってきた。ゴイサギはアオサギに気押されたのか、1mほど反対側に飛びのいて水面を見続けている。チュウサギの2羽が舞い上がり、螺旋階段を上るように徐々に徐々に上昇し、メタセコイアのてっぺんに留まっている。

 

木の枝に止まっている鳥

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木々のなかを巧みに飛ぶオオタカ

 

私よりも1時間遅れて2人目のオオタカ目当てのバードウォッチャーがやってきた。カワセミが一直線に飛び込んできて、棒杭の上に留まってヒクヒクやっている。しゃっくりをするような動きがカワセミの特徴である。9時20分、この公園に着いてから2時間が過ぎたが、まだオオタカの姿は見えない。9時40分、オオタカがなかなか現れないので、隣のカメラマンは帰っていった。残ったのは私ひとりである。足と手の指先がジンジン痺れている。9時55分に昨日もやってきていたカメラマンが顔をだした。

 

森の中にいる鳥

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カラスとオオタカのバトル

 

10時、待ちに待っていたオオタカが1羽やってきた。それに対して3羽のハシブトガラスがちょっかいを出してきた。オオタカに対して執拗にカラスがちょっかいを出して追いかけまわす。オオタカはその度に木から木へと移動するのだが、カラスの追跡が止まない。根負けしたのかオオタカは北のほうへと飛び去ってしまった。カラスとオオタカのバトルは5分間ぐらいだった。オオタカが飛び去った後も、カラスがこの辺りの縄張りを睥睨にするように、声を張り上げて悠々と飛び回っていた。オオタカに対してハシブトガラスのほうが体格は大きいし、カラス3羽に対して1羽のオオタカでは勝てそうもないので、オオタカが逃げ回っていたというのが実態である。昨日も同じ光景が見られたので、タカの王者オオタカもこの公園では肩身が狭いというところだ。

 

草の上にいる鳥

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カラスに追われるオオタカ

 

 カラスの立場から考えてみると、カラスはゴミなどを漁るために「都会の嫌われ者」とされているが、とても学習能力の高い賢い野鳥である。一応の縄張りを持っているが、その縄張り内にスズメやサギ類が入ってきても問題を起こすことなく共存しているが、オオタカが入ってきた時は仲間とともにちょっかいを出し、縄張りの外へと追い出している。この行為はカラスが何処かでオオタカがハトなどの野鳥を捕食しているところを観察し、オオタカを危険な奴と認識し、自分たちの縄張りに入ってくると追い出しにかかるという行為に出ているのだと推察する。

 

木の枝に止まっている鳥

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飛び立つオオタカ

 

 オオタカは、昔は鷹狩りに使われた鳥だが、現在鷹狩りは廃れてしまい、伝統技術として細々と伝えられている状態であり、国内では捕獲・流通・輸出入が禁止されている鳥である。今回、オオタカの眼と反射神経の良さを実感したのは、カラスに追い立てられて枝が生い茂る木々のなかを猛スピードで飛びぬけるのを見たときだった。カラスにはそのような芸当はできない。カラスとオオタカが1対1ならばオオタカの方が強い。実際にオオタカがカラスを捕食している場面が全国で確認されているので、いつの日かオオタカがカラスに仕返しをするのを観たい、と想いながら10時20分に浮間公園を後にしたのである。

 

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