大石芳野写真展を観に行く
『戦火の記憶』
大石芳野さんの『戦禍の記憶』という写真展が、東京都写真美術館で2019年3月23日〜5月12日まで開催されているので、4月29日に妻と娘とともに恵比寿にある美術館に出かけた。当日は10連休中ということもあり、美術館が建っている恵比寿ガーデンプレイスの中央広場では「恵比寿グリーンファーム」という食べて・触って・作って・体験というイベントも開かれており、なかなかの人出だった。
大石芳野さんという女性カメラマンの名前は以前から知っていたが、今まで大石さんの作品を観ることはなかった。先日、NHK-Eテレビで、今回開催されている写真展のことと大石芳野さんの人となりを紹介する1時間番組を偶然録画して妻と見た。妻から“連休中に一緒に観に出かけましょう”と提案があり、娘にも呼びかけて今回の運びとなったのである。
20世紀が「戦争の世紀」と呼ばれ、21世紀になっても相変わらず各地で戦火は止むことはなく続いている。戦争の悲惨な状況に苦しむ声なき人たちに向き合い、写真を撮り続け平和を問い続ける大石さんの姿勢が展示されている写真から伝わってくる。広島、長崎、沖縄、朝鮮、ベトナム、カンボジア、ラオス、アフガニスタン、コソボ、スーダン、ホロコースト・・・・・会場には大石さんが40年に渡って撮影してきた写真の中から約150点が展示されていた。
侵略戦争が、宗教戦争が、民族紛争が解決の糸を見いだせないまま泥沼化し、その犠牲になるのは力なき民衆である。圧倒的な暴力の前に、ただただ涙を流すことしかできない民衆の姿を見るのは耐え難い気持ちにさせられる。しかし、、今もなお、パレスチナ、シリア、クルド、ミャンマーロヒンギャなど各地の戦禍や民族差別に苦しんでいる人たちがいることを忘れてはならない。
コソボ紛争
今回の写真展には沢山の子どもたちの写真が展示されていた。各地で起こる紛争には子どもたちは何の責任もないのだが、その被害を被るのは弱い立場にある子どもたちや老人たち女たちである。弱い立場の人たちにしわ寄せが覆いかぶさっているのが実情なのだ。コソボ紛争に巻き込まれた少女の瞳から流こぼれる涙は、その先に何を捕えているのだろうか。写真展内に掲示されている説明文を読みながら、1点1点ずつ丹念に写真を見ていくと、最後には気持ちが疲れてきてしまった。写真の後ろに抱えている問題があまりにも大きすぎるのだ。