『第21回オー美会展』を観に行く
展示会場の石間さんと作品
4月7日 金曜日
コンピューターのIBM社のOBやOGのうち、絵画、写真、陶芸などの美術に興味がある人たちが集まって1999年に出発した「オー美会」という展示会が、毎年JR大崎駅近くのO美術館で開かれている。途中コロナ禍のために2回展示会は中止されたが、今年は4月7日〜12日の日程で開かれ、展示会も回を重ねて21回となった。
石間さんの「赤富士」
今年もネパールのアンナプルナトレッキングで一緒になった海外トレッキング仲間の石間さんから『オー美会展』開催の連絡を受けたので、開催初日の4月7日に出かけて行った。石間さんは、いつも山で撮影した写真を展示しており、銀座で開いた個展にも出かけて行ったことがある。
石間さんの「桜花爛漫」
今年の石間さんは富士山をテーマに5作品を展示していた。満開の桜と残雪の富士山を写した「桜花爛漫」、葛飾北斎の富嶽三十六景にもある日の出の赤い光を受けた「赤富士
」、やがて来る雪を待つ紅葉を捉えた「 雪待の秋」、強風のために山頂部の雪が舞い上がっている状況を望遠レンズで切り取った「雪煙舞う」、収獲したアミ(えびせんべいの材料)を釜茹でしたものを乾燥する作業を写した「赤い絨毯」であった。
石間さんの「赤い絨毯」
絵画にせよ、写真にせよ、陶芸にせよ、作者の意図とは関係なく、観た人の主観で“これがいいや”と思うものが、その人にとっては素晴らしいものであると思う。私は石間さんが出された5つの作品のなかでは、明るく暖かい感じを受ける「桜花爛漫」と、同じく春を感じさせる「赤い絨毯」の2枚の写真がいいと感じた。なお、石間さんは「オー美会」展の準備段階から活動し、作品も第1回から展示してきたが、今回を最後の展示とするとのことだった、
石間さんの「雪待の秋」
絵画の部では8人が作品を出されていたが、毎年注目しているのは西中千恵子さんの中国伝来の手法で描く工筆画である。工筆画と墨彩画は似ているが、工筆画は輪郭線を描いた後に色をつけていく手法を取り、墨彩画は墨絵を描いた後に色をのせていくという違いがある。作品としての工筆画は透明感があり淡く透き通っている感じを受け、墨彩画は墨絵の上に色を重ねるので絵が重くなる感じを受ける。
西中さんの「桜葉」
西中さんは私と同じ1948年に生まれた同い年の方である。今年は「桜葉」「古代蓮」「バラ」の3点を展示していた。昨年も話を伺ったのだが、今年も受付に西中さんがいたので作品の説明を受けた。「桜葉」はサクラの落ち葉を拾ってきてプレスして平らにし、それを用紙の上に配置し、上から黒のスプレーをかけて葉の形を浮き出したものに枝を描き、枝に苔を描いた作品である。サクラの葉をどのように配置するのか苦労したとのことだった。私も墨彩画に雪を降らせるのに水彩絵具の白を霧状にして墨絵の上に降らせる手法を使ったことがあるが、考えることは同じだなと思った。
西中さんの「バラ」
「古代蓮」はハスの根元にメダカのような小魚が泳いでいるのだが、気に入らないので消そうと思って青く塗ったと笑っていたが、消さないでそのまま残したほうが良かったと私は思った。伊藤若冲の「池辺群虫図」のなかに描かれている小さな動植物を思い出させる小魚だと思った。「バラ」は青い花びらのバラである。私も青い花びらのボタンを描いたことがあるが、現実に存在しない花の色であっても、絵画の場合は作者のイメージ通りの色を塗ることができるのである。それが写真とは違った絵画の楽しみのひとつでもあると思う。西中さんは書道家としてデザイン文字も書いている。「オー美会」のタイトル文字も西中さんが書いたもので、横浜のほうで教室を開いている。個展は銀座の画廊で毎年開いており、今年は第15回目で4月11日〜16日の日程だった。
植村さんの「古都遊鹿」(興福寺)
他の絵画では植村さんの「古都遊鹿」(興福寺)という鉛筆画が良かった。植村さんは鉛筆での細密画を描く人で、前回も同じような作品を展示していた。金堂や五重塔を描くのはバランスがすごく難しく、細かいので大変だと思う。振り返るシカの位置もいいと思った。私も水墨画を描く時の下絵として、鉛筆画やカーボン画を精密に描く時があるが、絵のバランスに注意して描いている。
居酒屋で盛り上がる4人の仲間
私は16時ころに展示会に伺ったのだが、開催初日なので想ったよりも見学者が多く賑やかだった。初日の展示が終わるころに集まったトレッキング仲間の4人は場所を居酒屋に移し、会費は5000円の懇親会となった。2時間1本勝負の飲み放題のコース料理である。昨年の夏以来、久しぶりに集まった4人なので、話が次々に出てきて尽きることはなかった。弾む話に伴い飲む酒の量も急ピッチで上がっていった。楽しい飲み会だった。