初詣とおみくじ

 

今年(2006年)の初詣は、故郷・群馬の妙義町にある中之嶽神社と千葉市稲毛の浅間神社に出かけました。毎年のように出かけている妙義町の中之嶽神社と稲毛の浅間神社がどのような成り立ちなのか正月休みに調べてみました。

 

中之嶽神社は神社由緒によると、元々は『波胡曽神』を山の主として祭られていましたが、日本武尊が勅命に依り関東巡行の際に妙義町に登嶽したと伝えられており祭神は日本武尊ほか十柱とのことです。日本武尊を祭神とする神社は全国各地にありますが、日本武尊は神話の世界に登場する人物であって本来の地元神である『波胡曽神』が元々の祭神です。『波胡曽神』が何を意味するのか分かりませんが、中之嶽神社が本殿を持たず御神体は轟岩という大岩であり、わが国では最も古い原始自然宗教の信仰形態であることは確かなことですから、昔からの地元の人たちから崇められた存在だったことが分かります。

原始自然宗教のことで思い出されるのは25年ほど前に訪れた奈良県の山の辺の道にある三輪神社です。山の辺の道は、奈良盆地の東側の山裾を縫うように南北に三輪から奈良へ通じる古道です。三輪神社、景行陵古墳、崇神陵古墳を経て、石上神宮から更に奈良へと北上する道で延長26kmほどです。その当時、日本各地に残っている古墳や神社や博物館、美術館などを回りながら古代の日本国家の形成がどのような形でなされていったのだろうかと考えていた頃に、原始自然宗教形態の三輪神社や百済王が倭王に下賜された七支刀を見るために石上神宮を訪れました。

 

三輪神社は三輪山を神宿る山として崇められた原始自然信仰に起源をもつ日本最古の神社で、山上には祭祀を行った巨石群、磐座が残っています。それらの巨石群や磐座は三輪山に一般人は入山することが出来ませんから写真でしか見ることが出来ません。本殿は設けず拝殿の奥にある三ツ鳥居を通し三輪山を拝するという、原初の有様が伝えられています。この三輪神社と同じ形態の神社が中之嶽神社です。


 中之嶽神社の境内に大国神社も建てられており、この社は大国主神を祀る出雲大社の分社として関東の出雲として知られています。全国各地の「だいこく様」は木槌を持っているのが一般的ですが、大国神社の「だいこく様」は剣を持っている珍しい姿です。

剣を持った大黒様


 なぜ剣を持っているかについては、不動明王と「だいこく様」を習合した姿と言われる説、中之嶽神社の神宝が剣であることから、「だいこく様」も剣を持っているという説がありますが、この剣が厄や悪霊を祓うといわれており、本来の福徳を授ける御利益と厄を払う御利益を持つ「一粒で二度美味しい」という有り難い「だいこく様」とのことです。ちなみに「七福神」にあげられているのは「恵比寿」「大黒天」「布袋尊」「福禄寿」「弁財天」「毘沙門天」「寿老人」ですが、「大黒天」「弁財天」「毘沙門天」はインドの神様、「布袋尊」「福禄寿」「寿老人」が中国の神様、「恵比寿」が唯一国産の神様といわれています。「大黒天」はインドの戦闘神シヴァの化身といわれ、その神様が中国を経て我国に伝来した後、大国主命と習合し、五穀豊穣・農業の神様として民間信仰の対象となったとされています。わが国は古代より八百万神ほどのたくさんの神様が信仰されていましたが、現在の七福神の形になったのは江戸時代からで、徳川家康が上野寛永寺の住職・天海僧正の進言に従い祭祀したものが、全国に広まり固定化されていったものといわれています。

 

昨年、20mほどの高さの「だいこく様」が立てられました。黄色に塗られた「だいこく様」を見たときはビックリしました。妙義山は日本3大奇勝地に挙げられるほどの奇岩と紅葉に恵まれ、とりわけ中之嶽神社は古武士の趣のある静かな神社です。その神社に黄色の「だいこく様」が忽然と現れたという状況は周りの風景とは全く相容れない似合わない存在でした。「日本一」を宣伝した人集めが主眼でしょうが、よくも恥ずかしくもなくこのようなものを作ったものです。落ち着きのある神社境内が台無しになったと思うのは私だけではないと思います。

昨年末に建立された日本一大きい「だいこく様」


 稲毛の浅間神社は、富士山を神と仰ぎ奉る信仰にはじまり、現在の静岡県富士宮市大宮に鎮座する富士山本宮浅間大社の分霊をお祭りしたのが起源とされています。参道は富士登山道にならい三方に設け、社殿は東京湾を隔てて富士山と向かい合って建立されたとのことです。

 浅間神社は、安産子育ての御利益があることで広く知られており、私たちの家庭でも愛や大の健やかな成長を祈って毎年の初詣や夏の例祭にはお参りしてきました。お参りの作法である「2拝、2拍手、1拝」をして願いごとをお祈りしますが、愛や大が成長した現在でもやはり親の願いごとの1番は子どもたちが心身ともに健康であることに変わりがありません。

おいしい甘酒を飲んでニッコリ


 さて、甘くて美味しい甘酒を頂いたあとは神社には付きものの「おみくじ」です。「おみくじ」に関してですが、おみくじの意義については次のようなことが言われています。まず、おみくじを引く前に自分が何を願うかを心に決め、その願いを込めて引きます。そして、引いたおみくじに書かれている言葉を吟味し、その中から様々な教訓やアドバイスを感じ取り、それを実践することにより願いが叶う、そこにおみくじの意義があるそうです。意味不明なことや曖昧なことが書かれて良くわからない言葉は、自分に都合のいいように楽天的に解釈するのが一番だと思います。

 

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