ポカラはのんびりしたいいところ
ポカラ・グランデ・ホテル屋上からの朝日に輝くアンナプルナ連峰とマチャプチャレの眺望
アンナプルナ・サンクチュアリ・トレッキングの出発拠点はポカラである。ネパールの首都カトマンズから北西方向に位置し国内線に乗り換え40分の距離にある。バスだと7時間の距離だ。国内線は有視界飛行のため天候不順だと欠航する。飛行機は座席が右側2列、左側1列、縦10列の30人乗りプロペラ機である。カトマンズを飛び立って数分、雲の上に飛び出すと右側に白銀のヒマラヤの壁が圧倒的な存在感を持って登場する。真っ青な空に屹立する白き峰々は神々しという言葉がぴったりだ。私は運良く右側の窓側の席に座ることができ我を忘れて見入りたいところだったが、前の席の通路側に座る20代の女性が窓の外に展開するヒマラヤの峰々を見られずにしょんぼりしているように感じたので、私はトレッキングを終わっての帰路に見られればいいかなと思い、その女性に窓側の席を譲ってやった。彼女はどこの国の方かは分からなかったがとっても喜んだ。ヒマラヤの峰々の展望はポカラ空港に到着するまで見ることができたが、私が席を譲って座った左側は陽の光が窓から差込み、外は見づらく緑の大地が続くだけだった。搭乗員の堤さんは何回となく訪れているネパールだが、今回のように素晴らしく晴れ上がったヒマラヤを見ることは初めてです、と言うほど素晴らしい天候だった。
ポカラ飛行場からのマチャピチャレとアンナプルナ連峰
ポカラ空港に降り立ち、初めて出会ったマチャプチャレは錐のように尖り、まっすぐ天を衝く姿に私は強烈な印象を受けた。マチャプチャレという意味は“魚の尾”という意味で、山頂部の雪型から命名されているが、見る角度によって錐にように鋭く尖った山として存在することを初めて知ったのであった。ポカラは今回の16日間の山旅日程の2日目であったが、このマチュピチャレの勇姿を見ただけで今回のトレッキングの成果の半分は満足できたと思うほどの衝撃度だった。飛行場からポカラ・グランド・ホテルに到着し、添乗員から部屋割りを始めとする諸注意を聞くのももどかしく、一刻も早く屋上に飛び出し夕陽に輝くマチュピチャレとアンナプルナ連峰の勇姿を見たかった。
ホテル屋上で日没までの時間をダウラギリ、アンナプルナ連峰、マチュピチャレの峰々を思う存分に眺めたあとポカラの町にビールを買いに出た。日没後のため辺りはすでに薄暗く、初めて訪れた場所で不慣れなためホテルから2〜3分のおばあさんが店番をしている小さな酒屋に入った。ビールはありますか?と日本語で問いかけた。おばあさんは冷蔵庫の蓋を開けて瓶ビールの大瓶を取り出したので値段を聞くと、電卓を持ち出し「250」と表示した。250ルピーは日本円に換算すると250円である。500ルピーを出して2本買い込みホテルに戻って夕食前のいっぱいとなった。私は“エベレスト”というネパールのビールを選んだのだが、爽やかな味でとても美味かった。ネパールは第2次世界大戦が終了するまでイギリスの影響下にありビール製造もイギリスの影響を受けている、と聞いたことがあった。夕食時にレストランで飲んだビールは大瓶1本で685ルピーだった。なるほどレストランは高い。現地の人はビールの値段は高いので殆んど飲まず、ロキシーという雑穀酒を飲む。日本でいう焼酎である。
路上での“焼きとうもろし”の販売
アンナプルナ・サンクチャリ・トレッキングを終え11日目に再びポカラに戻ってきた。ホテルでトレッキング中に寝食をともにした11人のガイドやポーターのみなさんと別れ、仲間5人とともにポカラの町に買い物に出た。町は祭り中ではないが焼きとうもろこし、果物、ポップコーンなど色々な露天が出ていた。露天で売ることが当たり前なのだろう。町かどで人だかりがしていたので何をしているのか覗いてみたら、約2m四方の平らな板の上でおはじきのようなもので遊ぶゲームをしていた。しばらく見ていたがゲームルールが判らないのでウィンドーショッピングに戻った。私が目指す買い物はTシャツとビールと果物だった。私はトレッキング中に着ていた速乾性のTシャツとヒートテックの長袖シャツをポーターの方たちにお礼としてプレゼントしていたのでポカラでTシャツを買いたかったのである。目指すTシャツは3軒目の店で見つかった。標高900mのポカラは亜熱帯地域とはいえ11月の冬になっているため長袖シャツや防寒着は店頭に展示されているが夏物は閉まってあった。オレンジ色に何やら英文字が書かれているものを460ルピーで買った。売られているものは中国製品が大半で、同伴の鈴木さんも赤いTシャツを500ルピーで買った。
次に目指すはビールである。スーパーらしきものに入ったがビールは売られていなかった。ロータリー交差点まで行って角の店に入ったが、そこでもビールは売っていなかった。道路を横断し反対側の町並みを眺めながらホテルの方向に戻っていくと酒屋らしきものが目にとまった。中に入ると目指すビールがあった。エベレストビールとゴルカビールの大瓶を1本ずつ買った。210ルピーと230ルピーで合わせて440ルピーだった。トレッキング出発前夜に買ったおばあさんの店よりも安かった。レジに2人の若者がいた。驚いたことに「日本の方ですか?」と話しかけてきた日本語がとても上手だった。どこで日本語を学んだのかは聞き漏らしたが日常会話に不自由しないレベルの日本語を話していた。
果物を買う武者夫妻
次は果物である。私はトレッキングの途中に道端で売っていたミカンを1個10ルピーで買い、歩きながら食べたがとても美味かったのを思い出し、ミカンが買いたかったのである。果物は露天でも果物屋でも売っていた。私はミカンを2個買った。武者夫妻はリンゴ2個とミカン5個を買い、看板娘は電卓を使って値段を表示した。しかし、合計金額は間違っていた。武者夫妻は日本語を話しながら看板娘から電卓を受け取り、合計金額を表示し納得させてからお金を支払った。目的の買い物を済ませたので私たち5人はホテルに戻った。ポカラは首都カトマンズに続きネパールでは第2の都市であるが、道路に中央線は引かれておらず交差点に信号はなく実にのんびりした町だった。