ガイド犬のジョン
チチ村で出会ったチベット犬ジョン
トレッキングをしているとどこからともなく犬が出てきて私たちの列の先頭に立ってあたかもガイドのように歩いていく場面に度々出会う。犬の種類はチベット犬で体の色は黒、眉毛の部分に茶色の斑点があり、顔の下半分も茶色、足も半分は同じ茶色をし、尾はくるりと巻き、気性は極めて穏やかで人なつっこい。
私たちはトレッキング3日目から5日目までダウラギリ峰山麓のナウリコット村タサンビレッジに2泊滞在し、2日目にティティガオンの高台まで往復6時間のハイキングに出かけた。その時もタサンビレッジに住み着いたチベット犬が私たちが準備体操を終える頃にやってきてトレッキングの隊列の先頭を歩きだした。チベット犬に私たちがどこにハイキングに行くのか誰も伝えてはいないが不思議なもので私たちの先導をしていくのである。山道が分岐している分かれ道にくると私たちの到着を待って正しい方向に歩きだすのである。私たちのガイドが間違った方に歩き出した時もチベット犬は正しい道で待っていたことがあった。ティティガオンの高台でお昼の弁当を食べた時はトレッキング仲間から食べ残しをもらって食べていたが、タサンビレッジに帰る時も隊列の先頭を歩きロッジに帰り着くや私たちとは静かに離れてどこかへ去っていったのである。
同じような体験は10日目のオーストラリアンキャンプに向かう途中でもあった。チェックポイントのあるポタナ村で休憩した時にもチベット犬が現れた。その犬も私たちの隊列の先頭を歩きオーストラリアンキャンプまで私たちを先導したのである。私たちがキャンプ地のロッジで1泊した翌日もキャンプにいついていた。日本の犬のようにどこかの家で飼っているというのではなく、村全体の中でなんとなく生活しているという形で犬がいるようである。サーダーのパトナさんに犬に名前は付いているのか聞いたところ、特につけていないとのことだった。個人の家で飼っていないので名前はつけないのであろう。私はトレッキングで出会うチベット犬にいつも「ジョン」と呼びかけている。
オーストラリアンキャンプのジョン
今回のトレッキングでも通過する村々でたくさんのジョンに出会った。彼や彼女達は「ジョン」と呼びかけると人なつっこく寄ってきた。トレッキングの仲間には犬にかまれて変な病原菌をもらったら大変だからと敬遠し犬に決して近づかない人もいたが私は平気だった。