スケッチするにはスケールが大きすぎるヒマラヤの山々

 

アンナプルナ・サンクチュアリでマチュピチャレをスケッチ

 

 今年の山旅にもスケッチブックと鉛筆型水彩パステルを持参した。ポカラのホテル屋上から望んだダウラギリ、マチュピチャレ、アンナプルナ連峰のパノラマは素晴らしいもので、この景色は事前に読んだガイドブックで知ってはいたが、これから私たちがトレッキングするアンナプルナ・サンクチュアリへのルート上でどのような景色が眼前に現れるのか全く未知数であった。なによりも宿泊するロッジでスケッチ出来る景色は展望できるのか、また時間は取れるのか。幸いにも天候は私たちの見方をしているようなので希望を胸にナヤプールからトレッキングを開始した。当然のことトレッキング中は団体行動上の時間的な制約でスケッチは出来ない。スケッチができるのは宿泊所に到着してからの自由時間に限られている。

 

スケッチできる時間と対象となる景色が幸運にもトレッキングを開始した1日目の宿泊地であるガンドルンのブッダ・ホテルで早くもやってきた。私たちはホテルの南側から坂道を登ってきたので尾根に登るまで山の景色は見ることができなかったのだが、尾根上に位置するホテル2階の屋上から眼前にアンナプルナ・サウス、ヒュウンチュリ、ガンガプルナ、アンナプルナV峰、マチュピチャレがパノラマとなって広がっていたのだ。その景色を見た衝撃は大きかった。ポーターたちが運んでくれた個人荷物を部屋に運び込んだあと写真を数枚写し、早速スケッチブックを取り出し白銀に輝く稜線を描いていった。スケッチは30分ほどで出来上がった。余白に「ナマステの挨拶。蝉が鳴き、桜が咲く。日本の春と夏と秋の季節の中でのどかな田園風景の石畳の道を歩きガンドルンへ登ってきた。素晴らしい光景が眼前に拡がる。マチャプチャレの双耳峰が白く輝き、アンナプルナ・サウスが眼前に迫る」と記入した。スケッチ山旅は幸先のいいスタートを切ったわけだ。

 

マチュピチャレ・ベースキャンプからのスケッチ

 

 しかし、その後のトレッキングコースはアップダウンの繰り返しとロッジでの展望は望めなかった。2枚目のスケッチができたのはトレッキングの5日目の宿泊地のマチャプチャレ・ベースキャンプまで待たなくてはならなかった。ようやく展望が開けたマチャプチャレ・ベースキャンプで2枚のスケッチを行った。その一枚が上に掲げたものであり、もう一枚はヒュウンチュリ〜アンナプルナ・サウス〜ヴァラハシカールのパノラマを描いた。写真は瞬間のため形の細部を見ることは少ないが、スケッチの場合は線として描くため形の細部を見つめることになる。この作業を通してスケッチを描くほうが景色が記憶に残るのだと思う。次のスケッチはアンナプルナ・サンクチュアリで2枚描いた。やはりスケッチの対象は見事な先鋒を天に突き上げるマチャピチャレであった。4枚目を描いた段階で8091mのアンナプルナT峰は未だ描いていなかった。山全体が横に拡がり捉えどころがなく漠然としているため描きづらいのだ。しかし、折角今回のトレッキングで出会う最高峰である山を描かずに帰ったのでは申し訳ないと思い最後の一枚としてアンナプルナT峰を描いた。やはり思ったとおり難しかった。

 

アンナプルナT峰のスケッチ

 

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