モンブランの初登頂者
モンブラン初登頂者バルマとスポンサーのソシュール
シャモニーの街の中心広場にふたりの銅像が立っている。一人は右手でモンブランの山頂を指さし左手に杖を持つ水晶採掘者であり猟師であったバルマである。勿論、モンブランの初登頂者である。他の一人は短眼鏡を右手に持ち、モンブランの初登頂者には莫大な賞金を出すと約束したスポンサーの博物学者ソシュールである。
そのふたりの銅像から少し離れて岩に腰掛け左手に杖を持ちながらモンブランを眺めている医師パカールの銅像が置かれている。パカールもバルマとともに1786年のモンブラン初登頂者である。
パカール
私は当初、広場に立っているふたりが初登頂者とばかり思っていた。銅像の立て方が少々煩わしい感じがするのには訳があった。バルマとソシュールのふたりの銅像は初登頂の翌年1787年に立てられたが、パカールの銅像が立てられたのは登頂200年祭の1986年だった。
なぜそのようになったのかは初登頂に失敗した旅行者がパカールの初登頂を妬み、事実とは異なる内容のデマ出版物を出し、それが事実化されたため初登頂者はバルマの単独となり、長い間パカールは汚名をきせられてしまったのだ。デマ出版物が出た時にバルマが初登頂はパカールとともに行った、と明確に発言していたならば広場に立っている銅像は3人となっていたに違いない。
しかし、ふたりの初登頂の一部始終を望遠鏡で観ていたドイツ人の日記が発見されたことにより、初登頂から200年後にパカールの名誉回復がなされ銅像が立ったという後日談が残っているのである。
モンブラン山頂に向けられている望遠鏡
なにはともあれ、モンブランの初登頂からスポーツとしての近代登山が始まったと言われており、シャモニーの街は近代登山発祥の地と言われ、夏は登山基地となっている。
銅像の近くのインフォメーションセンターに行って日本語パンフレットをもらった。モンブラン山群の位置関係やロープウェイや登山鉄道も描かれておりシャモニ―谷やモンブラン山群の概要を理解するのにとても役立った。