マンサクにシジュウカラがやってきた
マンサクにやってきたシジュウカラ
2月5日 日曜日 快晴
私は新型コロナウイルスに感染・発症し、回復してからも体力が回復するまで外に出るのを控えていた。その体力も回復したので久しぶりに花見川沿いを花島公園までバードウォッチングに出かけた。暦の上では節分も立春も過ぎ、早春の暖かい陽の光を浴びながら、自然のなかでゆったりとした鳥見ができた。
ウメの花が咲きだした
ウメの花が咲き出した。「梅一輪 一輪ほどの 暖かさ」という松尾芭蕉の弟子の服部嵐雪が詠んだ句がある。千葉県山武市に1912年(大正元年)創立の「梅一輪」酒造というのがあるが、社名の「梅一輪」というのは、嵐雪の句に由来するという。私は晩酌で「梅一輪」を飲むことがあるが美味い酒である。ウメの花が咲きだすと、地酒「梅一輪」を思い出す。
旬のキンカンが実っている
畑の脇にキンカンが黄色い実を付けている。キンカンの旬は1月から2月にかけてである。以前このキンカンの持ち主のおじいさんとおばあさんに挨拶をしてキンカンを頂いたことがある。ここに生えているキンカンは誰が採ることもなく、野鳥へのプレゼントとして実をつけている。私は毎回ポケットにキンカンをいっぱい詰めて、それをかじりながらバードウォッチングを続けている。農薬のかかっていない自然のままの実は美味い。
今年も農作放棄地が増えた
ツグミのケッケッと吐きだすような甲高い鳴き声が届く田んぼ道を歩いて行くと、新たに広い2枚の畑が耕作放棄されていた。広くて日当たりもよく、耕しやすい畑だと思うのだが、再び農家の人がこの畑に入ることはないのだろう。時が経つにつれて、徐々に農作放棄地は拡大していく。
チョウゲンボウが餌を探していた
田んぼ道を歩いて行くと、田んぼに水を供給するための弁の上にチョウゲンボウが留まっていた。私から見るとチョウゲンボウは向こう側を見ており、チョウゲンボウの背中が見えた。私からの距離は50mほどだった。畦道で5mおきに立ち止まり、写真を撮りながらチョウゲンボウに近づいて行った。30mほどに近づくとチョウゲンボウは危険を察知したかのように大きく羽ばたき、諏訪神社の方へと飛び去ってしまった。見ていないようでも野生の鳥は後ろのほうにも目を配っているのだ。
田んぼで餌を探すビンズイ
尾羽根を上下に振る特徴からビンズイと判断した野鳥が、田んぼで餌を探して歩き回っていた。野鳥たちはどの野鳥もそうだが、雨の降る日も風の日も、毎日毎日餌を探し回っている。餌を探すことができなければ、やがて体力が落ち、死んでしまう宿命にある。餌を獲得することが生き抜く条件となっている厳しい世界に野鳥たちは棲んでいる。
ジョウビタキのオスが縄張りをまわっていた
1羽のジョウビタキのオスが釣り人の脇の木の枝に留まっていた。冬鳥で渡ってきたばかりのころは縄張りを確定するために、ヒッヒッヒッと鳴き声をあげているが、縄張りが決まったあとは鳴かない。しばらく見ているとせわしない動きをしながら、2mほどの間隔で低い木の枝越しに右へ右へと移っていった。私もジョウビタキの動きに合わせて右に動いていった。いちど移ると30秒ほどはその枝に留まりながら周囲を見渡し、更に移っていくという行動を繰り返していた。移動距離としては30mぐらいの範囲で、再びUターンして釣り人の側まで戻ってきた。それがこのエリアのジョウビタキのテリトリーなのだろう。
サクラの蕾が膨らんできた
2月上旬なのでまだ桜の花には早いだろうと思っていたが、花見川沿いで一番早く咲くサクラの木の下で枝を見上げてみると、蕾が膨らみピンクの色が濃くなっているではないか。このまま暖かい日が続いたならば、来週には花が綻ぶだろう。膨らんだサクラの蕾を見上げていると、赤いジャンバーを着た60代と思われるおじさんの自転車が突然私の前で止まった。なんだろうと見ていると、おじさんはタバコの吸殻を拾うと、自転車の前籠のなかの袋に入れた。おじさんはサイクリングロードを走りながら、地面に落ちているタバコの吸い殻を拾っていたのだった。こういう人がいるからこそ、ゴミは少しずつ片付いていくのだろう。このおじさんは声だかに花見川沿いの美化について言わないだろうけれども、地道ながら自分の実践によって、みんなが気持ちよく過ごしやすいようにしているのだろう。
藪から飛び出したアオジのメス
藪の中で細かく動いていたアオジが突然飛び出してサクラの木の枝に留まった。最初は枝が重なり合い、アオジの姿にカメラの焦点を合わせることができなかった。再度、アオジは5mほど離れた枝に飛び移った。シャッターチャンスだった。
藪からひょっこり出てきたウグイス
同じ藪のなかからジッジッジッというウグイスの地鳴きが聞こえてきていたので、しばらく藪のなかを凝視していたところ、ひょっこりウグイスが姿を現した。ウグイスがさえずるとき以外に姿を現すことは稀なことなので、すかさずシャッターを押した。ウグイスの姿を撮ることができて実にラッキーだった。
餌を探すコゲラ
途中の神場公園に寄ってみた。池に水が入れてあり、水場となっているためにヤマガラがやってきた。次にやってきたのはシジュウカラだった。私は写真を撮ることもなく、ザックの中からアンパン、クリームパン、バナナ、せんべい、干し柿などを取り出して昼ごはんにした。それらを食べていると、林の中から木を叩くトントン・トントンという音が届いた。キツツキの仲間が木を叩いているのだった。すぐさま食事を止めて音のする方に向かった。しばらく静かに木の枝を見上げていると音の主が現れた。私が期待していたアカゲラではなく、その姿はキツツキの仲間では一番小さいコゲラだった。コゲラは必死になって幹を叩き続けていた。幹のなかに潜んでいる虫を獲得するために必死だった。
寄せ餌のワームをマンサクに付ける
私が花島公園に着いたのは13時半だった。一番奥のクロジがやってくる場所ではなく、その手前のマンサクの黄色い花が咲いているところに3人のバードウォッチャーが三脚・望遠カメラを構えていた。近寄って「何が現れるのですか?」と訊いてみると、「シジュウカラとルリビタキのメスが現れる」という。私もそこに入れてもらい、しばらく待機することにした。するとテーブルの上にプラスチック箱に入ったワームが置かれているのに気がついた。しばらく見ているとシジュウカラがやってきた。マンサクの枝に這わせたワームを食べると、シジュウカラは後ろの藪に消えていった。3人のバードウォッチャーはワームを枝に這わせて、野鳥が来るのを待っていた人たちだった。昨年、ウグイスを呼び寄せるためにワームを使っていた人たちがいたが、その人たちとは別の人たちだった。ワームは飼い鳥に与える虫で、ペットショップでは100匹200円で売っているとのことだった。
ワームが入ったプラスチック箱
『日本野鳥の会・千葉支部』の会員という人がやってきた。その人が持っている情報はたくさんあり、千葉県内のあちこちの野鳥観察場所と、現在現れている野鳥の種類を挙げながら話が進んでいった。私も長らく『日本野鳥の会』に入っているが、本部会員なので千葉県内のどこの探鳥場所に何が出ているのか、ということは知らない。随分いろんな鳥が各地で観察されていることが分かった。
マンサクにシジュウカラがやってきた
私が花島公園に着いてから1時間半ほど待っていたが、やってきたのはシジュウカラだけで、ルリビタキは現れていなかった。午前中はルリビタキが頻繁に現れていたとのことだった。「静かになれば、また現れるんじゃないかな?」という言葉を残して15時に4人が帰っていった。ひとり残った私は16時までルリビタキが現れるのを待ってみようと思った。
マンサクの黄色の花が満開だった
15時20分に右側の茂みで何か動くものがあった。双眼鏡で確認してみると、確かにルリビタキがやってきたのだった。ルリビタキのメスは薄茶色をしているので、枯葉などに混じると身体の色が保護色となって全く目立たないのだ。私との距離は15mほどだった。「シジュウカラは木の枝のワームを食べるが、ルリビタキは木の下に落ちたワームを食べる」と先ほど帰った人たちは言っていたので、もっと前に出てこないかなと思っていると、ルリビタキは明るい所に出てくることなく、30秒ほどで再び右の藪の中へと帰っていった。次に出てきた時は距離が遠いけれどもシャッターを押してみようと思ったが、16時までにルリビタキが再び姿を現すことはなかった。
2月6日 月曜日 快晴
昨日は2時間半ほど待ったが、ルリビタキの写真を撮ることができなかった。再挑戦のために8時50分に自転車で自宅を出発した。本日のミッションは2つあった。ひとつ目はルリビタキを撮影することであり、ふたつ目はウメの花にくるメジロを撮影することだった。花島公園の撮影ポイントに着いたのは9時10分だった。すでに三脚を構えたバードウォッチャーが2人いた。挨拶をして仲間に入れてもらうと、10分と経たずしてルリビタキが水飲み場に現れた。運良く撮影することができた。
水飲み場に現れたルリビタキ
しばらく待機してると30分後に先程とは5mほど離れている場所にルリビタキが現れた。この場所でもルリビタキを撮影できた。昨日とは違って1時間も経たないうちにシャッターチャンスが2度も訪れ、いずれも撮影できた。これで今日の第1のミッションは早々と終了だった。
頻繫に現れたルリビタキ
しばらく待機してるとまた30分後ぐらいにルリビタキが現れた。今度は最初に現れた水飲み場所の奥の暗いところの枝に留まり、しばらく周りを観察しているようだった。暗いのでISOを2000に上げて撮影をしてみたところ、十分に見られる写真が5カット撮れた。これでルリビタキの撮影は終わったが、集まっていたバードウォッチャーは私を含めると8人に増えていた。ルリビタキが頻繫に現れるので、メスが1羽いるだけではなく、若いオスもいるように感じた。若いオスは成長したオスのような綺麗な瑠璃色ではなく、メスと同じような茶系統の色をしているからである。同時に2羽が出てくれば問題は解決するのだが、暗がりで撮影した個体は若いオスのように感じた。
暗がりから様子をうかがうのはルリビタキの若いオスか?
私はルリビタキの撮影を終えたので周りの人に挨拶し、少し離れた場所に1本だけ咲いているウメに移って、メジロの撮影にすることにした。ウメが咲いているところにやってくると、ウメの木から10mほど離れたところにベンチがあった。そのベンチからはウメの花は順光となっているので、そこを撮影ポイントとした。
ウメにメジロがやってきた
ベンチに座りカメラの設定確認をしていると、早くも2羽のメジロがやってきた。撮影開始である。1分ほどの間にあちこちの枝に移りながら動いていたメジロは、すぐさま隣のウメの木に移動した。こちらの木には花がついていなかったが、さらに2羽のメジロが合流し、4羽のメジロが枝から枝へと、あちこちに移動していた。それも2分ほどで終わり、4羽のメジロは何処かへと飛び去ってしまった。しかしウメの木に留まって動きまわっていたメジロを充分に撮影することができたので、第2のミッションは終了したのだった。