キュッパに会いに都美術館へ

 

「キュッパのびじゅつかん」ポスター

 

 キュッパに会いに上野にある東京都美術館に出かけた。キュッパとはノルウェーの作家オ―シル・カンスタ・ヨンセンが描いた絵本『キュッパのはくぶつかん』に登場する主人公の名前で、物集めが大好きな丸太の男の子である。その男の子が子どもたちの夏休み期間に合わせた形で7月18日〜10月4日までの期間に「キュッパのびじゅつかん」の名前でノルウェーから上野の森にやってきたわけである。高校生以下は観覧料が無料というのも子どもたちを対象としている展示だということが分かる。

 

サブタイトルに「みつめて、あつめて、しらべて、ならべて」とあるように、自分達の前にあるものをじっくり観察し、収集し、調査し、系統的に標示する、という博物学の基本が示されている。私は子どものころから昆虫採集、岩石採集、植物採集、等が好きだった。自然の中で遊びながら色々なものを集め、集めたものを図鑑で調べることを通して自然の仕組みを少しずつ理解して行った。そのことは同時に好きな絵を描く時も対象物をしっかりと観察したあとにスケッチを行うという形につながっていったと思う。

 

私が東京都美術館に出かけたのは平日の水曜日であったが、夏休みとあって親子連れの家族や引率者に連れられた子ども会のような団体で賑やかだった。入場してすぐの所に絵本の内容を5分ほどの動画にしたものが『キュッパのはくぶつかん』の紹介として壁に映し出されていた。そのアニメを観たあと展示案内に沿って観て行った。

 

まず目に留まったのは、墨壺コレクションだった。現在では家を新築する場合は、どこかで加工して建築材を現場で組み立てるという工法が大半であるが、私が子どもの頃は家の新築は建てる場所で大工が墨糸で直線を引き、ノコギリで材木を切り、カンナで削り、ノミで穴をあける作業を行った後に組み立てて行った。その作業に使われていた墨壺が各国の墨壺を含めて展示されていたのだ。懐かしいなぁという気持ちが湧いてきた。東海地方の海岸砂だけを集めて透明な瓶に詰め、砂の色合いの違いをグラデーションに並べた標本もあった。1個所だけでは色の違いは分からないが複数の個所から集めて一堂に展示することによって違いが分かる典型的な表示方法だと思った。

 

みつめて、あつめて、しらべて、ならべて

 

海岸に流れ着いたものだけを拾い集めたのを分類し標示したものや、さまざまなものが置かれているフロアーで見学者が自分で収集し、分類し、名前を付ける体験コーナーもあり、大人を含めて楽しんでいる姿も見受けられた。また、天井から吊り下げられた物体が何に見えるか想像しながらスケッチをし、スケッチ終了後に想像した内容を絵の脇に書き込むという体験コーナーもあり、たくさんの人たちのスケッチと何に見えるかの感想が書きこまれていた。