郷土千葉を知り、歩こうー第1回

 

旧神谷伝兵衛稲毛別荘

 

9月17日に千葉市市制100周年・幕張公民館主催事業として『郷土千葉を知り、歩こう』という3回講座の第1回目として「稲毛〜稲毛海岸散策」が開かれました。内容は毎月1回午後の3時間半で市内各所を訪ねて歩くものでした。私は妻とともに申し込みました。幕張公民館に集合しオリエンテーションの後に24人の参加者を3班に分け、京成幕張から稲毛まで電車で移動し、そこから黒松が生い茂る稲毛公園、旧神谷伝兵衛稲毛別荘、千葉市ゆかりの家、千葉トヨペット本社、民間航空発祥の地、稲毛浅間神社などを回るものでした。私は今回訪れる場所は過去に全て訪ねていますが、講師の話を聴きながらのんびり歩きました。

 

最初に訪れたのは黒松が茂っている稲毛公園でした。黒松が生えている丘はかつての防砂林の名残です。太い幹が見事です。この場所から南は遠浅の海が拡がり潮干狩りや海水浴で賑わった場所ですが、今は埋め立てられ海岸線は遥か彼方に退いています。昔の海の家が今でも残っています。ここで講師からすぐそばの浅間神社の成り立ちや3本の登山道や富士五湖に見立てた5つの池などの説明があり、なるほどなぁと思いました。浅間神社の1の鳥居はかつて海の中に立っていましたが、現在は海岸が埋め立てられましたので、国道14号の脇に立っています。

 

神谷伝兵衛稲毛別荘1階の洋間にある大理石の暖炉

 

2番目に訪れたのは日本のワイン王と言われ、ワインと電気ブランで財を成した「神谷伝右衛門の稲毛別荘」です。別荘は大正7年(1918年)に建てられたもので日本館は壊されましたが洋館が現在でも残っています。前庭で講師の説明を聞いた後に洋館に入りました。1階は洋風 、2階は和風です。地下室もありますが、公開されておらず今回も入ることはできませんでした。 地下室はワインの貯蔵庫になっていたようで、玄関ホールの奥から地下に入っていく階段がありました。1階の洋室に大理石製の暖炉がありました。絵タイルが両サイドに貼ってあり上下に七宝焼きのような美しいタイルも貼ってありました。

 

若かりし頃の神谷伝兵衛(向かって右側)

 

伝右衛門さんは明治13年に浅草に「神谷バー」の前身の「みかはや(三河屋)」を開業した人でした。蜂印香葡萄酒と電気ブランで成功した人ですが、輸入ワインの混成酒である蜂印香葡萄酒の甘さに満足せず、本格的なワインを作るために茨城の原野を開拓しフランスからブドウの苗を輸入して葡萄畑を作り、明治36年にワイン醸造所「神谷シャトー」を完成させました。現在は「牛久シャトー」として国指定重要文化財として公開されています。

 

2階の書院造の天井は燻された煤竹で縁取られた格天井

 

2階へ登っていく階段はけやきづくりだそうです。2階和室の欄間のブドウの房の透かし彫りや袋戸に書かれた金泥の絵も細密画で美しいものです。床柱のブドウの木は太くて立派なものでした。書院造の天井は燻された煤竹で縁取られた格天井になっていました。この客室に座った人は雪見障子の窓から松林の向こう側に拡がる海が見えたであろうことを想像しました。

 

愛新覚羅溥傑と浩の結婚式

 

番目に訪れたのは「千葉市ゆかりの家いなげ」で、中国清朝のラストエンペラーとなった愛新覚羅溥儀の実弟である溥傑が新婚の時に半年ほど住んでいた家です。平屋の日本家屋ですが、中に入っていると落ち着ける雰囲気です。結婚式の写真が掲げられていました。仲のいい夫婦だったようです。年老いた溥傑がこの地を訪れた時、今は亡き妻と新婚当時を想って読んだ文が掲げられていました。心の優しい愛妻家だったようです。

 

元日本勧業銀行本店の建物

 

4番目に訪れたのは明治32年(1899年)日比谷公園前に建てられた日本勧業銀行本店です。建物が売り出されたの京成電気軌道が買い受け、谷津遊園に移築してレストラン等で使っていましたが、その後、千葉市が買い受けて千葉市役所として20年使っていました。新市役所が落成したのに伴い千葉トヨペット本社に外見を残すことを条件に無償で受け渡したそうです。千葉トヨペットは4億円をかけて現在の14号線脇に移築し本社として使っています。建築形式は桃山時代風の和風二階建てだそうです。立派な建物です。

 

民間航空発祥の碑

 

5番目に訪れたのは「民間航空発祥の碑」が建っている稲岸公園でした。潮が引いた砂浜はよく引き締まり、飛行機を飛ばすのに最適と判断し、明治45年に飛行場を作ったとのことでした。その場所に飛行機の翼のようなものが立っています。ここで民間パイロットが養成され、大正5年(1919年)1月に東京まで遊覧飛行をしました。しかし台風によって飛行場は壊滅し5年間の短命でした。記念碑のそばに設置されていた機関車に子どもたちが大勢乗って遊んでいました。広い公園では子どもたちがサッカーボールを蹴り、鬼ごっこをしているグループもいました。子どもたちの歓声は何度聞いてもいいものです。

 

浅間神社

 

最後に訪れたのは稲毛浅間神社です。私は毎年年が明けると前年の破魔矢をもってお参りする神社です。ふたりの子どもが小さかったころは子育て神社として夏の例大祭にもお参りしたものです。初詣の時は大賑わいですが、今回私たちが訪れた時は誰もお参りしている人はいませんでした。この場所で主催者の公民館担当者から挨拶があり散会となりました。帰りに稲毛商店街で私は『蜂印香葡萄酒』を、妻は『電気ブランケーキ』をお土産に買いました。蜂印香葡萄酒25種類の薬草と蜂蜜を混成したワインなので、味は養命酒のように感じました。電気ブランケーキは生姜と電気ブランを組み合わせたピリッとするケーキで、食べた妻はとても美味しかったと言っておりました。

 

戻る