コアジサシを探して

 

砂浜に立っている鳥

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1本脚で休むミユビシギたち

 

 9月25日 月曜日 曇り

船橋三番瀬の野鳥観察に4か月ぶりで出かけた。9月から11月にかけては、夏鳥と冬鳥が入れ替わる時期になっており、日本列島を中継地に使っていく野鳥もこの時期に見られる。二俣新町駅に7時20分に着いた。駅前のコンビニでビール500ml缶を2つ買い、30分歩いて三番瀬に向かう。検見川の浜で生まれたコアジサシが南のオーストラリアやニュージーランドに渡るための準備で羽を休め、栄養を蓄積し、体力を付ける姿が見られるだろう。今日の野鳥観察の目的はコアジサシに出会うことである。

 

花が咲いている

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アサガオが清楚で美しい花を咲かせていた

 

天気予報では快晴と出ていたので野鳥観察に出かけたわけだが、二俣新町駅に着いた時は、空の90%が雲に覆われていた。これから雲が飛んで青空が出てくるのだろうか。今日の船橋港の干潮は7時27分、満潮は15時22分となっていた。三番瀬に向かう歩道脇には季節外れと思われるアサガオがたくさん咲いていた。「朝顔につるべ取られてもらひ水」と詠んだのは加賀千代女だが、実はアサガオは俳句の世界では秋の季語だ。咲いている薄青紫の小さな花は清楚で美しいと感じた。

 

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干潟の汀線は沖の方まで後退していた

 

「暑さ寒さも彼岸まで」の諺があるように、9月のお彼岸を過ぎると、朝晩の気温もぐっと下がったように感じられる。今年は東京では3か月間25度以上の夏日が続き、特に7月から9月中旬まで連日30度を超える全くの異常状態で、国連が「地球温暖化」ではなく、「地球沸騰化」であると警鐘を鳴らし、各国に二酸化炭素の排出量を抑え、気温を下げる対策を求めた。そのような異常気温も徐々に秋めく気温へと下がっているようだ。

 

水の中にいる鳥

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獲物を捕らえたトウネン

 

8時に三番瀬の干潟に着いた。汀線は沖の方まで後退していた。バードウォッチャーが中央にひとりいるのが確認できただけで、その他は西側にも東側にもいなかった。ピュッピュッと小さな鋭い鳴き声を出してミヤコドリが右へ左へと舞っていた。その脇ではムナグロやトウネンが必死に獲物を探し、ミユビシギが小さな白い体を見せながら潮干狩り客の掘った水たまりで盛んに獲物を探していた。ハマシギも負けてはいなかった。

 

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干潟に丸いクラゲがたくさん残っていた

 

潮が引いた干潟にはコメツキガニが作った団子や、ミズクラゲがたくさん残っていた。ミズクラゲは水のなかで泳いでいる時は、ビニール傘がプカプカ漂っているように見えるが、今はぺっちゃりと干潟にのびている。体が透き通っているために太陽光線の当たり具合で4つ葉のクローバーのような4つの胃と生殖腺が丸い白い文様として浮かび上がる。海岸には先日の台風13号で運ばれた木々の破片や大きな木が打ち寄せられており、それを三番瀬公園で働く方たちが片づけていたが、大変な量なのでずいぶん時間がかかることだろう。ここの干潟は船橋三番瀬海浜公園という位置づけなので、海岸線は常に整備しておかなければならないのだろう。

 

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海岸を清掃する係員

 

9時過ぎに雲の間から太陽が顔を出したので、暖かくなると思ったのは一瞬のことで、再び雲の中へと消えてしまった。天気ばかりは仕方がないことである。また必ず海辺に行く時は風よけのためのウインドブレーカーを用意するのだが、久しぶりの三番瀬ということで、それをザックに詰め忘れてしまった。海辺は風が常に吹いており、身体から熱を奪われてしまった。おまけに小雨が落ちだしたのでカメラが濡れることを防ぐために、今回は1時間30分と短い時間だったが、9時40分で野鳥観察を終了した。

 

水の中にいる鳥

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獲物を捕らえたハマシギ

 

結局、今回の目的であったコアジサシとは1羽も出会うということはできなかった。今日出会った野鳥は、カワウ、キジバト、セグロカモメ、ムクドリ、スズメ、ミヤコドリ、ムナグロ、トウネン、ミユビシギ、コサギ、チュウサギ、ハマシギ、オナガの13種類であった。

 

砂の上にいる水鳥

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獲物を捕らえたミヤコドリ

 

 9月28日 木曜日 曇りのち晴れ

3日前の船橋三番瀬の野鳥観察は、途中で小雨が落ちてきたために中途半端で中止せざるを得なかったので再度出かけることにした。3日前は旅鳥にも冬鳥にも出会えなかったが、今日は出会えることを願って二俣新町駅に降り立った。天気予報によれば8時以降は17時まで快晴だった。8時に船橋三番瀬に着くと、夏の喧騒が去った浜辺は実に静かだ。今日は風も止んでいるので潮騒も聴こえない。天気予報では暑さがぶり返し、日中は35℃近くになるという。十分な暑さ対策が必要となろう。

 

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干潟が拡がっていた

 

野鳥の食事は夜明けとともに始まる。干潟のあちこちで野鳥の食事姿が見られた。干潟にはバードウォッチャーが中央に1人、貝を掘る人が6人いるだけだった。西側にセグロカモメの大きな群れがいたので、そちらに向かった。今日の船橋港の干潮時刻は10時08分、満潮時刻は16時37分となっていたので、午前中は観察できるだろう。

 

水の中にいる鳥

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獲物を捕らえた1本脚のハマシギ

 

釣り糸が絡まって足を切断したのだろうか、1本脚のハマシギが必死になって獲物を探していた。釣り人は納竿する時に簡単に釣り糸のテグスを海に捨てるが、そのテグスが野鳥の足に絡まって足を切断したり、命を落とすこともたびたびあるのだ。かわいそうだが、片脚となった野鳥は、この試練を乗り越えていかなければ生きる道はないのだ。30羽ほどのハマシギとミユビシギの混成群が干潟で獲物を探していた。

 

砂の上に立っている鳥

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獲物のカニを捕らえたムナグロ

 

中央で写真を撮っていたバードウォッチャーが私のそばにやってきた。60代と思われる男性は「今日はあまりいませんね 」と話しかけてきたので、あまりいないというのがバードウォッチャーの数をさしているのか?それとも野鳥の種類をさしているのか?どちらかは分からないが、とりあえず「そうですね。珍しい鳥は見かけませんね」と挨拶を返した。

 

水の上に立っている鳥

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獲物を丸のみするソリハシシギ

 

10時近くなり気温もずいぶん上がりだしたので、一旦、水分補給をしようと思いザックを置いた場所に戻る途中で、旅鳥のソリハシシギのペアに出会った。私が撮影していると次々にバードウォッチャーが集まりだし、最終的には10人ほどのカメラマンがソリハシシギを中心にしてシャッターを押していた。

 

砂の上にいる水鳥

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獲物を探すシロチドリ

 

野鳥観察を再開すると、冬鳥のシロチドリが3、4羽の群れであちこちに見られるようになった。シロチドリはちょこまかちょこまか動いてしまい、20mほどには近づけるが、それ以内に踏み込むと、チィチィという短い鳴き声を発して飛び去ってしまう。月曜日には見かけなかったので、三番瀬に着いてから日も経っていないのだろう。人間に対する警戒心が、まだ強いように感じられた。

 

白鳥の群れ

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獲物を待ち伏せるダイサギ

 

ダイサギが潮干狩り用のネットの杭に沿って1列になり、潮が引いていく時に沖の方に流れ出る小魚を狙って待ち伏せしていた。これも獲物を捉えるための生活の知恵なのであろう。サギも生き延びるために色々と考えているのだ。

 

野外授業で干潟の底生生物を探す小学生たち

 

今日から満月の日を中心にして大潮の日が4日ほど続くので、白帽子を被った小学生の野外活動で2クラスが干潟の底生生物を探すためにやってきた。自然学習館の女性係員がキンキン声で、「掘って、掘って、また掘って、砂の下にカニがいるかもしれないよ、ほらほら掘って」 とハッパをかけると、子どもたちも係員の声に従って、せっせと穴掘りをしている。しかし、あまり見つからないようだった。

 

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なにが見つかるかな?

 

近くによって子どもたちが捕まえた生き物を覗き込むと、ガザミ、コメツキガニ、ヤドカリなどだった。自然学習館の係員は子どもたちが見つけた生き物の一つひとつを説明していた。エビを見つけた子どももいた。ひと通りの説明のあとに、捕まえた生き物は水の中に戻していた。小さな命であっても決して粗末にしない教え方だった。

 

水の上に立っている鳥

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獲物を探すソリハシシギのペア

 

干潟を歩くと長靴が沈み込み結構疲れてきたので、11時に今回の野鳥観察と撮影を終えた。気温も上がってきており、Tシャツが汗でぐっしょり濡れた状況だった。これからザックを置いた草はらに戻っての宴会だが、炎天下では暑すぎるので黒松の防風林のなかに逃げ込むことにした。太陽を遮るもののない干潟では暑すぎたが、松林のなかで上半身裸となり、涼みながらの4か月ぶりの宴会は気持ちよかった。1時間半ほどで宴会を切り上げ干潟に出てみると、今度は赤帽子を被った小学生の2クラスが野外授業で干潟の底生生物を探していた。

 

砂浜に立っている鳥

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獲物を探すミヤコドリ

 

今日出会った野鳥は、カワウ、アオサギ 、ダイサギ、ドバト、ハシブトガラス、ヒヨドリ、ムクドリ、セグロカモメ、ハマシギ、ミヤコドリ、ムナグロ、ミユビシギ、ソリハシシギ、シロチドリ、コサギ、チュウサギ、モズ、ハクセキレイの18種類だった。今日もコアジサシには出会えなかった。

 

 9月29日 金曜日 晴れ

 コアジサシが子育てをしていた検見川の浜に行ってみた。やはり検見川の浜にもコアジサシはいなかった。コアジサシの渡りは8月から9月といわれており、繁殖が終わり、渡りのための体力が付いたら、大集団を作ってオーストラリアやニュージーランドへ渡っていく。渡りの前で干潟にいたならば、必ず目につくはずである。しかし1羽も出会わないということは、今年は南の地域へ渡ってしまったのかもしれないと思った。

 

砂浜と海

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コアジサシの去った検見川の浜

 

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