コアジサシに会えた

 

コアジサシのいない検見川浜の保護区域

 

 77 小雨のち晴れ

午前中に地面を湿らす程度の小雨が降ったが、午後からは久しぶりに雲間に太陽が顔をのぞかせた。梅雨の合間の晴れ間なので、気になっていた検見川浜にコアジサシがやって来ているかどうか、確認に出かけることにした。撮影用のカメラや望遠レンズは持たず、双眼鏡のみを持って花見川沿いのサイクリングロードを下って検見川浜を目指した。

 

コーチとウインドサーファー

 

30分ほどで検見川浜に着いた。コアジサシの姿は無かった。1ヶ月前に予想した通り、今年はコアジサシは検見川浜にやってこなかったのだ。検見川浜ではウィンドサーフィンの講習会が行われていた。コーチがメガフォンを口に当て、14〜15人のウインドサーファーを指導していた。それに混じってスタンディングサーファー2人の姿があった。海はベタ凪で、風は止んでいた。無風状態のため、帆に風を受け颯爽と海上を疾走するサーファーの姿は見られなかった。

 

砂浜にハマユウの白い花が咲きだした

 

砂浜にはハマユウの白い花が咲きだしていた。梅雨の合間の貴重な晴れ間なので、日光浴をする人もあちこちに見られた。久しぶりに青空が拡がり、気温は30度まで上昇していた。私の額から玉の汗が吹き出し、汗は首筋からTシャツへ沁み込んだ。昼間に飲んだ缶ビールよりも多い汗が出た。検見川浜のコアジサシの状況を考えると、船橋三番瀬に行ってもコアジサシの姿は確認できないだろう。

 

三番瀬で飛ぶコアジサシ

 

 7月14日 くもり

 天候が安定せずぐずついた日々が続いていた。妻を職場に送り出したあと、ダメもとで船橋三番瀬に向かった。最大干潮時刻は13時46分だった。昨日まで幕張は3日連続の凄まじい雷雨だった。「雷3日で梅雨明け」と言われるので、そろそろ今週末あたりで梅雨は明けるようだ。9時に三番瀬に着いた。干潮と満潮の中間あたりの潮位と思われた。双眼鏡を取り出し干潟を見回した。干潟は西防波堤側から東防波堤側までの1kmの範囲に広がる。突然、キンキンするような金属性の鳴き声を発しながら、目の前に3羽のコアジサシが飛んできた。びっくりした。まだカメラの用意はしていない。しばらく見ていたが間違いなくコアジサシだった。黒い頭と黄色の嘴に流線型の身体と翼をしている。見ていると沖の方に飛び去ってしまった。

 

三番瀬を飛ぶコアジサシ

 

流線型の体系と翼を持ったコアジサシが飛ぶ姿をカメラに撮ることは難しい。鳴き声が聞こえてくると遥か上空を飛んでいる。コアジサシの狩りを見ていると、ゆっくり飛んできて空中でホバリング態勢をとると、狙いを定めて一気に水中に突っ込んでいく。その嘴の先には小魚が咥えられているのである。中には2度3度水中に突っ込み、やっと小魚を咥える場合もある。写真を撮る場合は一旦空中でホバリングするので、おおよその勘で突っ込む水面に焦点を当てて、その瞬間を撮影するのだが、「言うは易く行うは難し」である。

 

獲物を狙って着水したコアジサシ(ピントが合わず失敗)

 

コアジサシは遠くで狩りをしていて、なかなか近くに寄ってこない。それでもチャンスは一度だけ訪れた。しかしピントが手前に会い失敗した。仕方がない。何回もチャレンジすることだ。1時間ほどコアジサシが来るのを待っていたが、なかなか姿を現さないので、カメラを潮干狩り場の柵に吊るして貝掘りを始めた。約1時間で収獲ネットは掘り出した貝でパンパンになった。12時近くになったので私は貝掘りをやめ、いつも休憩する草はらに戻ってビールで乾杯である。

 

干潟での小学生の野外授業

 

空は時折り青空が見えだし、日が差すこともあり、気温が上昇してきた。小学生の2クラスの子どもたちが10時頃にやってきて、海浜公園管理センターからレクチャーを受けたあと、2時間ほど砂浜をほじくって、干潟の生き物を勉強しているようだった。子どもたちにとって珍しい生き物を見つけることができただろうか。こういう野外授業を実体験することは、干潟にどういう生き物が棲んでいるのかを知ることができ、自然環境を考える上で非常に役立つだろう。

 

汀に佇むコアジサシ

 

潮干狩りの季節が終わり、夏休み前の海は実に静かである。ビールからウイスキーへと変え、のんびり飲んで1時間ほど経ったとき、さあ神輿を上げるかと思いながら、もう一度、汀線にコアジサシがいるかどうか、確認に出かけた。双眼鏡でカモメの向こうに6、7羽のコアジサシがいることを確認した。貝掘りをしている女性のすぐそばにコアジサシは降りていたのである。

 

汀に佇むコアジサシの若鳥

 

 汀線で佇んでいた群れの中で、他の鳥とは明らかに異なる羽の色をしている個体がいた。なんだろうと考えていたが、その個体はコアジサシの若鳥だろうと思った。大きさは成鳥に比べて少し小さいが、翼の反り返りにコアジサシの片鱗を観ることが出来た。この若鳥も、やがてスピード豊かに大空を飛ぶ姿が観られるだろう。

 

飛び立つコアジサシの若鳥

 

私は腰を沈めながら静かに近寄って行った。コアジサシが舞い降りる時は、自分たちに危害を加えないと判断した人の側には安心して降りるが、舞い降りた後に近寄っていく人間に対しては敏感に警戒の態度を示す。今回の場合は30mが限界距離だった。それ以内に踏み込んだとたんに、金属性の甲高い鳴き声を発して一斉に飛び立ったのである。船橋三番瀬にコアジサシがいることが分かった。都合がついたら観察と写真撮影に出かけようと思うが、今日の体験から考えると、コアジサシの撮影は非常に難しいと思った。

 

獲物を捉えたコアジサシ

 

7月16日 晴れ

船橋三番瀬でコアジサシが羽を休めていることが分かったので、再び三番瀬に行くことにした。前回はコアジサシの生き生きとした姿を撮影することができず、満足しなかった。今回は、前回の経験を振り返って、撮影場所を三番瀬干潟の中央から西側に絞ってみようと思った。東側は防波堤までの干潟が狭く、西側のほうがコアジサシが集まりやすいと判断したのだった。

 

砂洲から飛び去るコアジサシ

 

三番瀬には12時40分に着いた。長靴に履き替え、双眼鏡で干潟と確認すると、潮干狩り場内の砂洲に30羽ほどのコアジサシの群れがいるのを確認した。その砂洲までは3つの潮留りを歩いて行くのだが、左から潮干狩りに来たカップルがコアジサシの休んでいる砂洲に向かっていた。私が砂洲に着いた時には、すでにコアジサシは舞い上がり、西側へと飛び去ってしまった。

 

干潟に佇むコアジサシ

 

残念だが仕方がない。私も一旦潮干狩り場から出て、西側の砂洲を双眼鏡で確認してみると、アジサシの群れは50羽ほどに増えていた。徐々に近づきながら10mまでに迫った。太陽光線の関係で左側に回り込むと、群れは2つに分かれた。

 

舞うコアジサシの群れ

 

右側の群れを撮りだすと、やがて危険を察知した群れは東へと飛び去った。私は左側の群れに向かって撮影を続けた。汀で佇み、舞うコアジサシを撮影できた。ここまで三番瀬に着いてから1時間だった。十分にコアジサシの撮影ができたので、貝掘りに移った。

 

汀のコアジサシ

 

潮干狩り場の外は穴ぼこだらけで荒らされていたので、貝堀りは場内で行った。30分も掘るとシオフキガイで収獲ネットはパンパンになった。そこで貝掘りは終了し、あとは草はらに戻ってビールで乾杯である。草はらで飲んでいると、妻からLINEの連絡が入った。

 

松林に爽やかな潮風が吹きぬけていた

 

LINE内容は「木陰で飲んだ方がいいよ!」というアドバイスだった。確かにカンカン照りの炎天下の草はらは遮るものがなく、強烈な日差しだった。海坊主が茹でダコになるのではないか、と思われるほどの強烈さだった。私は飲む場所に無頓着だったが、さすがに暑いので近くの黒松の防砂林の中に場所を移した。防砂林の中は渡ってくる潮風が心地よかった。ビールも殊の外うまかった。これだから野外活動は楽しくてやめられない。

 

梅雨が明け、真夏の空が広がった

 

 1時間ほど松林の中で涼みながら飲んで腰を上げると、南に広がる空は真夏の青空だった。自宅に帰る途中で関東地方の梅雨が明けたことを知った。真夏の暑さがやってきたのだ。

 

戻る