ぼくらは元気だよ
私は早いよ。たったった。
7月6日 雨のち晴れ
夜中の1時ころから落ちていた雨が10時に止み、薄日が差し出したので気になっていた検見川浜のコアジサシの営巣場所に出かけた。10日前に雛と親鳥を観察した場所にいくと、巣はすでにもぬけのからで、2羽の雛たちはどこかへいってしまった。雛はたくさん孵化していたので、今回改めて雛と親鳥を観察してみると、雛が卵を破って出てきたばかりだと、羽毛も少なく自分だけでは体温保持ができないために、親の翼の中で温めてもらうのだが、雛がある程度の大きさに成長し、自分で体温保持ができるようになると、巣から飛び出して歩き出してしまうのだった。
親鳥の帰りを待つ4羽の雛たち
雛たちを見ていると、小さな子どもたちを広い草はらなどに連れていくと、自由に歩き出してしまうイメージに近いと思った。雛が自由気ままに歩きだしてしまうと、親は雛のために餌の小魚などを浅瀬に出かけて獲って帰ってきた時に、飛び立つ前に雛がいた場所には雛はとどまってはおらず、移動してしまっているのが大半だった。したがって親は小魚をくわえながら、雛を探すのにあちこち鳴きながら歩き回るのである。
雛に小魚を与える親鳥
コアジサシたちは砂浜にコロニーを作って営巣しているために、巣と巣の距離が近く、おまけに卵から雛が孵化する時期もほぼ同じなため、雛の大きさもほぼ同じなのである。親鳥は鳴き声を頼りに雛を探すのだが、自分の雛なのか他の雛なのかを見分けることが難しいようだ。
ごはんを持ってきたよ
親は小魚を獲ってくると、ピーピー鳴いている雛を探しだして小魚を与えるのだが、くちばしからくちばしへと受け渡す場合に、必ず頭から丸のみ出来るように渡している。それは尾から受け渡すと、喉元を過ぎるときにヒレや鱗が逆立って引っかかるのを防ぐためである。餌となる小魚はほとんどがイワシだった。
わたしもお母さんのようにカッコよくなれるかなぁ
パートナーでない親鳥が餌をくわえて雛に近づくと、雛を見守っていた親鳥がウィウィキュルルという鋭い鳴き声を発しながら相手を追い出す。警戒の鳴き声を発して飛び立った親鳥は、一騎打ちからしつこく追跡をして追い払うのである。この光景が頻繁に見受けられた。最初はずいぶん親鳥の追いかけっこが頻繁に起こっていると思っていたのだが、追いかけっこは単なる遊びではなく、必死に雛を護るために戦う親の姿であり、親から子への愛情の発露なのだろう。
4羽の雛が育つ巣の上を飛ぶ親鳥
コアジサシの巣は砂の上の小さな窪みだけなので、木の上に作られている巣などと違い、その巣の中に雛がじっとしておらずに、雛が歩けるようになると動いてしまうので、親の方も雛を探すのに大変だ。小魚を獲ってくる親も、小魚を待っている雛も両方が大変だと思わざるを得ない。
美味しい小魚を獲ってきたよ
波打ち際のコアジサシを撮影に行ったが、干潮時刻と重なり汀線が引いているために、50mほど沖に砂洲ができていた。親鳥はそちらの砂洲のほうに行ってしまい、波打ち際には数羽しかいなかった。砂洲のほうの親鳥の数を確認すると、約100羽の親鳥たちが佇んでいた。
左が親で、右の子どもに小魚を与えているのを草の陰から
「もしもし、わたしもいるんですけど・・」
14時ころになると10人いたカメラマンは半分の5人に減った。大きな三脚を設置して撮影をしていたカメラマンたちは、帰る時に打ち合わせをしていたので明日また来るのだろう。空では相変わらずに白い翼を輝かせながらキュイキュイピッピッという鋭い鳴き声を発しながらコアジサシが飛び交っていた。コアジサシが舞う姿はスマートで美しい姿だと惚れ惚れする。
待たせてごめんね
太陽が差すと砂浜は熱せられて高温となる。夏の砂浜を素足で歩けば、その暑さが尋常ではないことを実感するのだが、雛たちは日陰のないところで、あちこちに移動しながら、親鳥が獲ってくる小魚を待ちながらうずくまっている。暑さのために大変なことだろうと想像する。一方、草はらのなかにいる雛は砂浜よりも涼しいだろうと想像するが、強烈な陽射しのもとでの雛たちが大変なのは変わらない。撮影している私は、時おり水分補給をして熱中症にかかるのを防いでいるのだが、雛たちは水を飲むことも出来ずに小魚で水分補給をしているようだ。
お母さんと4羽の雛たち
雛たちが暑くなった砂浜でも平気でいられるのは何か秘密があるのだろうか? 今回、4羽の雛を育てているカップルがいたが、雛の数が多いと親が雛に与える小魚を獲る回数も多くなり、雨の日も風の日も日照りの日も親鳥は毎日が忙しくなり大変だと想う。私は14時30分で撮影を終えて砂浜を後にしたのだが、他の鳥が雛に近づきすぎたため、親鳥は雛を護るためにウィウィキュルルという鳴き声を発しながら、相手を追い出すまでしつこく追跡を続けているのだった。