子育て中のコアジサシ
2羽の雛を見つめるコアジサシの親鳥
6月26日 月曜日 晴れ
今回はコアジサシの子育てレポートである。コアジサシはオーストラリアなどから渡ってくる夏鳥で、種の保存法で国際希少野生動植物種に指定され、環境省のレッドリストの絶滅危惧2類に位置付けられている希少種である。コアジサシは千葉市が政令指定都市に移行するのを記念して、市の新しいシンボルとして千葉市の鳥に制定されたもので、今年は制定後30周年を迎える。毎年「検見川浜コアジサシ保護区」で子育てをしているのだが、残念ながら昨年も一昨年も巣立った鳥はいなかった。今年の状況をネットで検索すると、NPO法人の5月28日付ブログで、成鳥60羽、16巣で抱卵を確認した、となっていた。今年は子育てに希望が持てたので、梅雨の合間に検見川浜に出かけた。
抱卵中のコアジサシ
私が検見川浜の営巣場所に着いた時、営巣場所の隣に設置してあったビーチバレーコートは撤去されていた。4月に営巣場所の整備作業が行われ、大型トラクターで芝生の根切りをしたときに、ビーチバレーコートも撤去されたのだろう。営巣場所の隣で騒がれてはコアジサシも安心して子育てができないだろうから、子育て期間中の撤去は当然だと思う。コアジサシ保護区の営巣場所は中に入れないようにトラロープで囲まれているのだが、すでに10名ほどのアマチュアカメラマンが望遠レンズ付きカメラに三脚を立てて撮影をしていた。
雛を暖めている親(右)に小魚を運んできたパートナー
コアジサシが空に舞い、いたるところで抱卵中の姿があり、想ったよりも多い姿だった。私はトラロープを東側に回り込んで、撮影していた若い男性が一段落した時に「どこかに雛はいますか?」と尋ねると、私が立っていた場所から20m先で2羽の雛を子育て中であることを教えてもらった。実にラッキーだった。私の持っている600mmの望遠レンズでも、20mくらいの距離が撮影限界である。今回の撮影はここに決めて、子育ての状況を撮影したいと思った。それから1時間ほど撮影に集中した。
小魚を運んできた親鳥と2羽の雛
雛が生まれて間もないために体が小さく、常に親鳥が羽の下に入れて暖めているので、なかなか雛の写真を撮ることができなかった。また雛の色が親鳥のスタイリッシュの色あいとは異なり、見栄えのしない砂と同じ斑の保護色なので撮影しづらかった。親鳥は20分くらいの間隔で交代しながら雛を暖めており、雛を暖めていない時は餌となる小魚を獲っているのだった。両方の親鳥が巣から離れる場面もあった。私たちカメラマンや観察者はトラロープの外側から双眼鏡での観察や、望遠レンズで撮影しているのだが、コアジサシが警告メッセージとして鋭い鳴き声とともに急降下して観察者の頭をすれすれに飛び去る場面もあり、子育ての時期は親鳥も神経質になっているようだった。
波打ち際で小魚を捕らえたコアジサシ
私が撮影していると、私より高齢と思われる方がやってきて、「どこかで子育てしている巣はありませんか?」と尋ねてきたので、目の前の20mほど先で子育て中の巣の場所を教え、親鳥は20分間隔くらいで小魚を獲ってきて、雛を温める役目を交代するので、その時が撮影のチャンスです、という旨も伝えた、早速、そのおじさんは三脚を設置し、撮影体制に入った。それを見て私は波打ち際でたたずむコアジサシを撮影したかったので、その場所を離れた。
波打ち際でたたずむコアジサシたち
波打ち際でのコアジサシの撮影を終えて休憩していると、30人ほどのカメラマンがいるのを見て、「何がいるんですか?」と散歩の男性が尋ねてきた。私は千葉市の鳥であるコアジサシについて、ひと通りの説明をし、トラロープから20mほどの場所で子育てをしているペアがいる旨を伝えた。質問をしてきた男性は、お礼の言葉とともに「カラスにやられないといいですね」と言って去って行った。
雛の待つ巣に舞い戻る親鳥
今回撮影した子育て中の雛は生まれてから数日の雛で、砂と同じような色合いをしており、写真を撮っても分かりづらいものだった。1週間後に再び出かけた時に、猛禽類やカラスなどの捕食者に襲われることなく育っていれば、もっとわかりやすい写真が撮れるだろうと思った。成長した若鳥と親鳥は8月ごろに船橋三番瀬などに集まり、集団となってオーストラリアなどの南の国へと旅立っていくのである。そのためにも雛が元気に育ってくれることを願っている。