コアジサシを探して
昨年(2020年)6月、過去最多の営巣状況を伝える千葉市広報
コアジサシは初夏の5月〜6月に日本に渡ってきて、産卵・子育てを終えると、初秋の8月〜9月に南の国に帰っていく夏鳥である。コアジサシは千葉市の鳥に指定されており、毎年、検見川の浜で産卵・子育てをしているので行ってみた。検見川の浜の東はずれにある「コアジサシ保護区域」に近づいた時に違和感を持った。毎年400羽近くのコアジサシが来ているならば、保護区域の近くでコアジサシの飛んでいる姿が目に入るはずだが、飛ぶ姿が全くなかった。どうしたことだろうと思って保護区域に近づいた。
千葉市のコアジサシ保護区域
昨年の千葉市の広報には、6月中旬には約400羽のコアジサシが訪れ、産卵・子育てをしている旨の掲載があった。しかし、なんということか。コアジサシ保護用のトラロープは営巣場所に張られていたのだが、肝心のコアジサシの姿はゼロだった。野鳥たちはこちらが準備しても来ない場合はあるが、ゼロというのには驚いた。今年はこの検見川の浜でコアジサシが子育てをするのは時期的にいって、もう無理だろう。
「一緒に見守る」はずのコアジサシはいなかった
保護区域には、千葉県千葉港湾事務所と千葉市環境保全部環境保全課の連名で、「千葉市の鳥コアジサシが繁殖しています。立ち入ったりせず静かに見守りましょう。」という看板が立っていた。看板の詳細を読むと、「千葉市はここに生息しているコアジサシを保護しています。中に入ったり卵や雛を取ったりすることはできません。鳥獣保護法に違反して野生の鳥獣や卵等を取った場合は、1年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処されます。違法捕獲は絶対にやめましょう。」という文言が日本語、英語、中国語、韓国語で記載されていた。しかしトラロープが張ってあるコアジサシ保護区域内には、1羽のコアジサシも確認できない。明日、船橋三番瀬に出かけて行き、アジサシやコアジサシの状態を確認してみることにした。
船橋三番瀬に広がる干潟
翌日、妻を職場に送り出したあと船橋三番瀬に向かった。三番瀬ではアジサシやコアジサシは産卵・子育てをしないが、渡りの中継地として、毎年数千羽が訪れる場所である。到着したのは8時40分だった。久しぶりの船橋三番瀬だった。潮干狩り場の柵と網はまだ撤去されずに残っていた。明日は大潮にあたるため、今日も干満差が大きかった。ここ数日は晴れの日が続いており、昨日は30℃超えの真夏日だった。今日も30℃を超えるだろう。朝から照りつける太陽が眩しく暑かった。
潮干狩りを楽しむ人は119人を数えた
まず双眼鏡で干潟の西から東まで見渡してみたが、鳥の姿はどこにもなかった。わずかにコサギが1羽いるのみだった。この干潟にもアジサシやコアジサシは来ていないようだった。それでも諦めきれずに砂礫が混じる場所に行ってみたが、やはり姿はなかった。仕方がないので貝堀りに方針を変更した。今日は非常に暖かく、風もなく穏やかなので潮干狩りに来ている人が多かった。
本日の収獲はシオフキガイ210個、アサリ40個、
三番瀬海浜公園の潮干狩り場は5月いっぱいで終了したが、第1会場から第4会場までの柵と網はそのまま残っていた。私は今年の潮干狩り日程は、土日が雨にたたられたため、柵内には殆ど人が入っていないだろうと想像した。更に柵外は無料のため荒れているので、柵内で貝掘りをしてみることにした。私の想像は当たった。シオフキガイが熊手ひとかきで、4個も5個も獲れるのだった。30分ほどで貝ネットはパンパンになってしまった。アサリも小さいながらも取れた。私は貝掘りを終わりにして、草はらで飲みだした。私が飲んでいる場所の10mほど前に水たまりがある。そこに獲ってきた貝を入れてあるのだが、砂浜を歩いてきた人たちがその貝を見て、オーなどという感歎な言葉を出しながらスマホで写真を撮っていく人もいる。帰宅後に数えてみると、シオフキガイが210個、アサリが40個だった。夕ご飯にシオフキガイの炊き込みご飯と潮汁を作り、アサリは砂出しをして翌朝の味噌汁にした。とても美味かった。
潮干狩り場が終了した後に掲げられた「密漁禁止」の横断幕
貝類は干潮時に汀線が後退すると、干潟に残る塩だまりに集まっているのだ。干上がって太陽にギラギラ照らされる場所よりも、潮が引いても海水が残っている潮だまりに貝は集まる習性があるのだ。そのことを知っていれば、干潟を見ればどこに貝がいるのか見当がつくのである。私はそのようにして貝掘りをしている。私が草はらで飲み始めた時に貝掘りをしている人は119人だった。干潟の貝掘りの人たちを眺めていると、柵外で貝掘りを終えて帰って行く人たちは、私の数倍もの時間をかけながらも手持ちネットの中は、わずかばかりの貝が入っているだけだった。
潮干狩り場の看板を撤去する業者
やがて潮干狩り場の看板を撤去する作業員の方が軽トラでやってきた。足場に乗ってプライヤーで次々に看板を解体し始めた。私の目の前の4番看板を下ろすと、それを軽トラの荷台に積み込み、順次番号の若い方に移っていった。ひとつの看板を下ろすのに5分とかからなかった。さすがプロである。やがて柵とネットが外され、元の静かな三番瀬に戻るのであろう。
真夏の花「ノウゼンカズラ」が咲き出した
昨日の千葉市の検見川の浜に続き、今日の船橋の三番瀬干潟でもアジサシやコアジサシの姿を確認することができなかった。アジサシやコアジサシが渡ってきていない原因は分からないが、何かが自然のなかで起きているのかもしれない。来月に再度、検見川の浜や三番瀬に出かけて、アジサシやコアジサシが来ているのかどうか確認してみよう。