君たちはどう生きるか
映画『君たちはどう生きるか』のポスターになったアオサギ
9月5日 木曜日 晴れのち曇り
9月になると真夏の極暑が翳りを見せ、ずいぶん気温も低くなってきたので、4カ月ぶりに花見川沿いを神場公園までのバードウォッチングに出かけた。昨年まで田んぼでイネを作っていたところが、今年は耕作放棄したために草ボーボーであり、ガマの穂が出ているところもあった。虫だけが草の中でリーリーリーチリチリチリと元気に鳴いていた。
川べりで佇むアオサギ
今年3月にアメリカの第96回アカデミー賞の長編アニメーション映画賞を受賞した宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』のポスターとなったアオサギが飛んできた。アオサギは花見川沿いで見られるサギの仲間では最大である。鋭い目つきと長い首、黄色い嘴が特徴であり、ジッと佇んでいると哲学者の趣きが感じられる。ず〜と昔、幕張東小学校のPTA会長をしていた時に、卒業生への祝辞のなかに吉野源三郎の『君たちはどう生きるか』を入れながら話したことがある。映画でも吉野源三郎の本はキーワードで、主人公の少年の生き方を問うシーンがあった。少年は花園のような楽な生きやすい生活と、敗戦後の困難が待ち受けている生活のどちらを選ぶか、というところで困難な生活を仲間とともに歩いていきたいという道を選んだことがラストシーンにあった。宮崎駿監督の思いが入った場面だとスクリーンを観ていて感じた。
湿った土に長い口を差し込むキアゲハの吸水行動
2頭のキアゲハが行ったり来たりしながら水たまりの周りの湿った土に長い口を差し込んでいた。キアゲハの片方の体が大きいので、2頭はオス・メスのつがいだろう。アゲハは湿った土のなかに長い口を差し込んで水を吸っているのである。水を吸うことによって体温調整をしているか、ミネラルなどの栄養素を取り込んでいると想われる。そこにシオカラトンボがやってきて、それぞれが行き交っていた。
真夏の花カンナが盛りだった
花見川の土手には真っ赤や黄色のカンナの花が咲き誇っている。カンナは真夏の花だが、9月になってもその勢いが衰えることなく咲いている。コムクドリのような色をした鳥が電線に止まっていた。写真を撮って家のパソコンで確認することにし、帰宅後に写真を確認すると、ムクドリの特徴である黄色の嘴、顔の白さ、胸の黒みをおびた灰色、とは異なるのでコムクドリと判断した。幕張では初めて出会ったことになった。
刈り取られる稲田
数少ない耕作田んぼでイネは黄金色に輝き、刈り取りの時を迎えて頭を重く垂れている。あぜ道には鳥からの食害を防ぐために粗めのネットが張り巡らされている。スズメたちも今のシーズンになると集団で生活するようになり、スズメは田んぼにやってきてイナ穂の汁を吸うのである。スズメは雛を育てる時は害虫を食べる益鳥であるが、今の時期のスズメは農家にとっては害鳥と言えるだろう。田んぼでは風によって倒されて湿った穂は、手刈りで柵に干されて乾かし、乾いた穂はトラクターによって刈り取られ、籾を取った藁は10束ほどずつのボッチで立てかけてあった。現代の住宅は畳の部屋が少なくなったので、藁の用途も少なくなっているだろう。
色づき始めたギンナンの実
今年もギンナンがたくさん実り、色づき始めている。今年の春に花見川沿いを千葉県土木事務所が整理して堤防の立ち木を伐採したのだが、この太いイチョウの木は伐られずに、今年もたくさんの実をつけている。1カ月もすれば葉は黄色に色づき、強風が吹けば実が落ちてくるだろう。その実を拾って酒のつまみにするのが楽しみである。
夏の終わりを告げるツクツクボウシ
遠くの方から夏の終わりを告げるようにツクツクボウシの声が届いていた。坊辺田の桜並木に来ると、あちこちで頭上からツクツクボウシの声がシャワーのように降ってくるのだが、その姿を確認することはなかなかむづかしい。ツクツクボウシは小さくて羽が透き通っているために、余計に見つけるのは困難なのだ。まして鳴いている時はほとんど移動しないために、最初は見つけることができなかった。しかし、辛抱強く声のする方向を探していると、ついに見つけたのだ。ツクツクボウシは30秒ほど体を震わせながらカメラの被写体となってくれた。
悠々と泳ぐオオバン
夏は涼しい高原で過ごしていたアキアカネが田んぼの周りに見られるようになった。里は涼しくなっただろう、と高原から降りてきたのだろうが、ところがどっこい!今日は31℃を超える。里はまだまだ暑いのである。春から夏にかけてあれほど騒がしかったヒヨドリが今日は1羽も姿を見せない。渡りで南に去ってしまったのだろうか。1羽のオオバンが悠々と水面を切って進んでいる。ほとんどのオオバンは姿を消したが、まだ1羽残っていたのだ。
虫を捕まえたエナガ
麦わら帽子をかぶり、望遠レンズを持ったバードウォッチャーに出会った。初めて出会った男性で、おそらく年齢は60歳を超えているだろう。話をしてみると「ここ2.3年は鳥の数が極端に減っていて、全くこの辺でもその状況は変わらない。船橋の三番瀬などは特に少なくなってしまった」と嘆いていた。「私も春は三番瀬に行ったが、秋はまだ行ってないので、これから出かけて確認しようと思う」と答えた。「すぐ先でエナガが20羽ほどいる」と伝えると、嬉しそうな顔をして「行ってみます」とのことだった。
合体していたコガネムシ
サクラの木は毛虫で大賑わいである。その毛虫が歩道にひっきりなしに落ちてくるのだ。毛虫たちはサナギとなって冬を越すのであろう。今の鳥たちは子育て時期ではないので、毛虫たちが食われることもなく、のびのびとしているように見える。サルスベリのピンクの花を見ていると、その花のなかにコガネムシが潜り込んでいるのを見つけた。コガネムシは花の蜜の吸うのだろうか。別の花の下ではオス・メスが合体していた。
小魚を捕まえたコサギ
最初の計画では神場公園までの予定だったが、気温が上昇してきたので途中の亥鼻橋で折り返すことにした。コサギが対岸の浅瀬で競い合うように獲物を探していた。2匹でいるところを見るとペアなのだろうと想われたが、大きめなほうが小さいほうをせき立てているようだった。ペアではないのかもしれない。
巴投げのようなシオカラトンボの合体
シオカラトンボが大雨を降らせた台風10号で出来た道路の水たまりに卵を産んでいた。この水たまりに卵を産んでも、すぐに乾燥して水は無くなってしまうのだ、ということを伝えたかったが、そのすべはなかった。トンボを見ているとオスの数が圧倒的に多く、オス・メスが合体して卵を産んでいるのは1組だけだった。トンボは水たまりを見れば、本能として卵を産み、その水たまりが干からびようと関係ないのだろう。
飛び立つスズメ
今日の3時間のバードウォッチングで出会った野鳥は、ハクセキレイ、スズメ、ドバト、ハシブトガラス、キジバト、ツバメ、ムクドリ、カルガモ、ダイサギ、コムクドリ、シジュウカラ、アオサギ、ハシボソガラス、オオバン、エナガ、カワウ、カワセミ、ハマシギ、コサギの19種類だった。