君、ひさしぶりだね。

 

久しぶりに出会ったホオジロの雄

 

 4月6日 晴れ

 3月中旬から船橋三番瀬に出かけていたので、花見川沿いのバードウォッチングは久しぶりだった。目的はキジに出会うことだが、果たして会えるだろうか? キジは開けて見通しの良い田んぼや畑にいることが多いので、野鳥観察で目を向ける方向は水辺よりもあぜ道や田んぼや畑が多かった。その道すがら何年ぶりかでホオジロの雄に出会った。ホオジロもキジと同じで開けた明るい場所で目にすることが多い。ホオジロの雄は高い木の梢などで “一筆啓上仕り候”と聞こえる鳴きかたをするのだが、まだ繁殖期に入っていないため、囀りではなくジュジュ・ジュジュという地鳴きだった。

 

上空で歌うヒバリ

 

1ヶ月前にヒバリの歌声を聞いた田んぼにやって来ると、前回と同じように空から明るいヒバリの歌声が降ってきた。ヒバリは大きく螺旋状に回りながら上昇・下降しながら歌い続けた。時にはホバリングをすることもあるが、ヒバリの姿にカメラの焦点を当てるのは実に難しいのである。ヒバリの周りに木々も水も何もない空だけなので、600mm望遠レンズをピンポイントで焦点を当てるのは難しい。更に舞い降りたあとの田植え前の田んぼは、身体の色が保護色になっているため、ヒバリを探し出すのは実に難しい。舞い降りた場所に慎重に歩いて行っても姿が確認できず、飛び立った時にヒバリがいた場所に気づくほどである。

 

サクラの花びらを食べるオオバン

 

花見川の水面に浮かんでいたカモたちが姿を消してしまった。北の国へ帰っていったのだろう。オオバンといつも目にするカルガモだけが浮かんでいた。オオバンが水面に落ちたサクラの花びらを食べていた。オオバンは草を主食としているのだが、サクラのシーズンになると落ちた花びらを食べるのである。バンとオオバンが仲良く餌をついばんでいた。あぜ道は青葉を取り戻し、冬眠から目覚めたカエルたちの大合唱が聞こえてきている。

 

クワの花が咲いていた

 

クワの花が咲いていた。実に地味な花である。白く小さい花をひと房に無数につけるのである。花の数はひと房に100個はあるだろうか。秋になると紫の実をつけるが、クワの種類によっては透き通るピンクの実をつけるものもある。花の一つひとつが実となるため、クワの実はあのような形をしているのである。子どものころ口の周りや舌を紫色に染めてクワの実を食べたことが思い出される。群馬の方ではクワの実をドドメと呼んでいた。果実酒を造り、炭酸割りにすると実に美味いのである。

 

マガモの雄が波に揺られていた

 

 4月中旬から5月中旬ころまでの1ヶ月間は、水辺を賑わしていたカモたち冬鳥が北の国へ帰り、それと入れ替わって南の国からやって来る夏鳥たちとの狭間期のため、出会うことのできる野鳥の種類も少ないのである。カルガモに混じって1羽のマガモの雄が波に揺れていた。花見川沿いでは殆ど見かけないマガモだが悠々と泳いでいた。マガモの雄は首に白い首飾りがあるのが特徴でよく目立つ。まもなくカモたちは北の国へ渡っていってしまうのだ。

 

シュロの花が咲いていた

 

 シュロの花が咲いていた。シュロの花は木の上部からタケノコのような形で伸びだし、それが黄色い花となり、やがて灰色の丸い粒の実となるのである。私が子どものころは田植えの時期になると、苗を等間隔で植えるために田んぼに張る細紐は丈夫なシュロで編んだ紐が使われていた。60年も前の話である。現在の農家は田んぼが整備され、機械化による田植え機で一気に植えてしまうので、農作業も昔に比べれば楽になってきている。今でも山間部の田んぼは手植えの所も僅かに残っているだろうが、農業従事者の高齢化に伴い手植えも無くなり、耕作放棄地は動物たちの生活の場に戻っていくだろう。

 

ウメの実が大きくなっていた

 

 2月にメジロが蜜を吸いにやってきていたウメの木を見上げると、ウメの実が大きく膨らんでいた。これから更に大きくなり、6月になると収穫できるようになる。私は毎年幕張中学校のウメの実をいただいて梅酒を造っているが、昨年生徒の通学用門の新設に際し、大きな実がなる木が切られてしまい残念だった。幕張中学校校庭には10数本のウメの木があるが、私の他は実をもらいに行く人がいないのである。

 

ジューンベリーの白い花が咲いていた

 

 ジューンベリーの白い花が咲いていた。バラ科の5弁の花びらは美しい。6月に赤い実を付けて食べることができるので、ジューンベリーの名前となった。採ったまま生で食べてもいいし、砂糖と一緒に煮てジャムにしても美味しい。

 

タンポポの綿毛と朱色のポピーが風に揺れていた

 

あぜ道にタンポポの綿毛がまんまるに膨らみ、ポピーが朱色の花を開いていた。田起こしの始まった田んぼの上を1羽のツバメが飛び去った。今年初めて見たツバメだった。別の田んぼでもツバメを見かけたが、夏鳥のツバメが早くもやってきたのだ。結局、この日は目的としたキジには出会うことができなかった。まだ山から下りてきていないのだろう。

 

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