キジ君、やっと会えたね
やっと会えたキジの雄
4月24日 晴れ
野鳥観察と撮影をしながら花見川右岸の堤防を歩いていると、折りたたみ式自転車に乗った年配の方が私の横に止まり、「野鳥、撮れますか?」と訊いてきた。「キジを探していますが、なかなか出会えないですね」と答えた。すると、「今、この辺りにキジはいないよ。キジは汐留橋辺りの休耕田にいるよ。送電線の鉄塔の近くね。昔はキジもいっぱいいたけど、最近はタヌキやハクビシンが増えて、巣の中の卵を食べちゃうんだよ。だからキジの数が減っちゃってね。キジに会うんだったら、もっと早い5時とか6時じゃないと会えないよ。日中は休耕田の藪の中で過ごしているから、まず出会うことはないよ」という地元の人の有力情報がもたらされた。以前は日中に田んぼや畑で会えていたのだが、今年は鳴き声も聞いていなかったし、1回も会っていなかった。おじさんが話していた場所は、いつも野鳥観察と撮影で歩くところなので、朝早く出かけてみることにした。
朝露の中にいたキジの雄
前日に有力な情報を得たので、1週間を目途に早朝のキジ観察と撮影のために家を出たのは5時20分だった。汐留橋辺りの耕作放棄地は沢山あり、一つひとつを丁寧に見て回った。耕作放棄地を一通り見たので、Uターンして帰ろうかなと思った矢先、畔道にキジがいることに気がついた。逆光のため姿は黒かったが、大きさとシルエットからはキジに違いないと思った。中腰になり慎重に近づいた。近づきながらシャッターを押した。
目視で確認できる距離まで近づくと、それは雄のキジだった。ついにキジに巡り会えたのである。昨日のおじさんのアドバイスがドンピシャリだったのである。私は長靴を履いておらず、靴と靴下は朝露に濡れてぐしょぐしょだったが、心の中はまん丸のガッツポーズだった。
朝日を浴びながら畦道を歩くキジの雄
おじさんのアドバイスは、場所と時間帯が具体的だったので信憑性があると判断したのだった。以前は日中でも度々キジに出会えていたが、最近はなぜ出会えないのだろうか?という疑問も、タヌキやハクビシンの影響を受けて、キジの棲息数が減っていることにあるのだろうと思った。キジがここら辺りの耕作放棄地の藪の中に棲んでいることが確認できたので、これからもキジが出没する時間帯を狙って観察に行きたいと思う。それにしても、アドバイスを受けた翌日にキジに出会うことができ、実にラッキーだと思った。おじさん、的確なアドバイスを、ありがとう。
クワの木の梢で囀るホオジロの雄
キジを探して耕作放棄地を確認している途中で、クワの木の梢で囀るホオジロの雄に出会った。ホオジロの雄の春の囀りはウグイスと同じで、自分の縄張りの宣言と同時に雌の獲得のためである。今回のホオジロの囀りは「一筆啓上仕り候(イッピツ
ケイジョウ ツカマツリ ソウロウ)」というものよりも短かかったが、一生懸命に歌っているように感じられた。
水を張りだした田んぼにカルガモの姿が
あちこちの田んぼで田植えの準備が始まり、田には水が張られだした。水が張られると、昨年の稲刈り時に落ちた穂が、水面に浮かんでくることがあり、それを狙ってカルガモ、スズメ、ムクドリ、ツグミたちが集まってくる。彼らにとっては餌の確保が毎日の最重要課題となっているのである。
田んぼの中にタヒバリのつがいがいた
キジを探している途中でタヒバリのつがいに出会った。タヒバリはヒバリという名前が付いているが、空高く舞い上がり、春の歌を高らかに歌っているヒバリ科のヒバリとは全く違い、セキレイ科である。ヒバリと色や形が似ているタヒバリは、ヒバリのように美しい歌声で囀ることはなく、「ピピッ」という短い声を出すだけである。
田んぼで餌を探していたコチドリ
鳥を観察していると感じるのだが、出会った鳥はすぐには逃げない。ジッとこちらの動きを観察していて、その人物が自分に危害を加える危険なものなのか?それとも安全なものなのか?ジッと見つめて判断している。そして危険だと感じた時はすぐに飛び去ってしまう。コチドリの2羽が田んぼに舞い降りた。私をジッと見つめたあと、安全な距離だと判断して餌を探し出した。
キジの雄は美しい
キジに久しぶりに出会ってから、日を変えてキジが棲んでいる耕作放棄地に2度出かけてみた。1度目に訪れた時は、雄の鳴き声は聞こえてくるのだが、藪の中から姿を現さなかった。2度目に訪れた時は、前回出会った畦道の同じ場所で、キジのつがいに出会うことができた。時刻は前回とほぼ同じで午前7時前後だった。雄は自分の縄張りを示す「ケーンケーン」という甲高い雄叫びを発し、両翼を震わせて「ほろうち」と呼ばれているドラミングを行った。雄が「ほろうち」を行ったのが、出会って間もなくだったので、写真に撮ることが間に合わなかった。
雄は甲高いケーンケーンという雄叫びをあげる
キジの場合も人間と出会うと、ジッと動かないで見つめている。こちらが動かないでキジを見ていると、安心したかのように周りに目を移すのだが、身体はほとんど動かさない。この時の撮影ではキジに5mほどまで近づいた時に、足元からキジの雌が出てきて、私の前を横切って藪の中に姿を消した。キジの雌は黄土色の地味な色をしている。雄の方も私との距離が近くなったので、そろそろと動き出し藪の中へと入っていった。
1羽のヒバリが舞い上がったが・・・
双眼鏡で野鳥を探していると、田んぼの中で1羽の鳥が確認できた。慎重に近づいていくと、目指した鳥の近くからヒバリが囀りながら舞い上がった。私は1羽だと思っていたが、2羽いたのだった。残った1羽は飛び立たずに、私の動きを凝視していた。頭の毛が立っているヒバリの姿だった。私は撮影を終えたので、その場所を静かに離れたが、ヒバリは飛び立つことはなかった。
田んぼでビンズイが餌を探していた
田植えに向けて田んぼの準備が始まると、様々な野鳥がやって来る。その中にセキレイの仲間のビンズイがいた。磯でも度々見かけたビンズイだが、5羽の群れで田んぼにもやって来て、掘り返された土の中から餌を探していた。
昨年使った巣を修理中のツバメ
南から渡ってきたツバメが軒下に巣をかけていた。昨年使った巣を雄雌のつがいで協力し合いながら、近くの田んぼから泥を咥えてせっせと修理中だった。巣は戸建ての軒下の通気口に被せてある雨除けの上に造られていた。毎年この家には南の国からツバメが帰ってきて子育てをしている。今年もツバメが戻ってきたのだ。6月頃には雛が生まれるだろう。