清流に翔ぶ碧い宝石:カワセミ
土管の上で休憩するカワセミのオス
10月9日 くもり
カワセミ(翡翠)は、平地、低山地の川沿いで見受けられる野鳥で、土手のコンクリートの縁や杭などに留まり、川面に浮かび上がってくる小魚を狙う。「チーッ」という小さな声で鳴きながら水面すれすれに直線的に飛ぶスズメほどの大きさの鳥である。体型は体に比べて嘴が長く尾が短いので頭でっかちに見える。胸が黄褐色で体全体が青緑色をしており白い斑点のある可愛い野鳥である。オスの嘴は上下ともに黒だがメスは下嘴が赤い。
昨年、花見川沿いで「渓流の宝石」に例えられるカワセミに初めて出会い写真を撮ることができたが、太陽光線は逆方向で距離が遠かったため影絵のような写真になってしまい、青緑色が鮮やかな綺麗な姿とは程遠いものだった。
10月初旬、再度出会えないものだろうかと思いながら花見川沿いでバードウォッチングをしていると、偶然にもコンクリートの土管上に留まっているカワセミの姿が眼に飛び込んできた。距離は10m。太陽光線も純方向にあり距離も十分だと思い連続してシャッターを切った。連射後にカワセミは飛び去ってしまったが、影像を確認すると小さいながらも特徴ある姿が確認できた。カワセミをやっとイメージ通りの写真に残すことができ心の底から喜びが湧いてきた。
高鳴きをするモズ
自宅から5kmの距離に花島公園がある。往復10kmなので散歩にちょうどよい。バードウォッチングをしながら歩くと半日コースで4時間から5時間かかる。花見川は印旛沼の水を東京湾に流すための水路となっており川には生活用水が流れ込み、とてもではないが清流とは呼べない。その川にもカワセミが住み着いているのだ。逞しいかぎりだ。花島公園には木々が生い茂り、沼が掘られ親水公園にもなっており常時せせらぎの音が聞こえる。公園の掲示板に「公園で観られる野鳥」としてカワセミの写真が貼られていた。私は過去何回か花島公園を訪れているが、まだ一度もカワセミに出会ったことはなかった。
10月13日 晴れ
10月13日の午後、散歩がてらに花島公園まで出かけていった。途中、花見川沿いには度々見かけるアオサギ、チュウサギ、コサギなどの鷺の仲間、カルガモ、マガモなどの鴨の仲間、シジュウカラやコゲラなどの小さな野鳥が目に飛び込んでくる。モズは梢でけたたましく高鳴き、自分のテリトリーを主張する。出発して2時間後に花島公園に到着した。二つの沼の辺りを注意深く見たがカワセミの姿は確認できなかった。親水公園に向かう途中で水平に飛び去るカワセミの姿が突然視界に入ってきた。思わず「居た!」と心の中で叫んだ。一度、飛び去ったカワセミはUターンして逆方向に消えた。私は必ず戻ってくるに違いないと思い、水場近くの東屋のベンチに座りカメラを準備し待機した。
花島公園で撮影したカワセミのメス
2時間待っても3時間待っても目的とする野鳥に出会えないこともあるが、その時はなぜか会える気がしていた。待つこと5分。私の予想通り再びカワセミが登場し、私が座っているベンチから7m先の岩の上に留まった。ラッキー!!シャッターチャンスだ。ファインダーを覗き込み連続シャッターを切った。もう少し近づこうと思い柱の影に立ち上がると、カワセミは危険を察知したのだろう少し高い岩の上に移動した。そこでも連写した。そして再びカワセミは飛び去り私の視界から消えた。時間にして1分ほどの出来事だった。
休憩するカワセミ
花島公園からの帰宅中にコジュケイを撮そうと狙っているカメラマンとそのバードウォッチング仲間と話をした。カメラマンは朝から待機しているがコジュケイにはまだ会えず今日は無理かな、と話していた。通常、カメラマンは対象とする野鳥の習性を考慮して撮影場所を選定するのだが、なにせ相手は気ままに動く野鳥でありカメラマンの目前に登場することはあくまでも偶然なのである。