強風吹く神威岬
積丹半島・神威岬
札幌バスセンターから積丹半島・神威岬までの直通バスが4月から開通したのでそのバスに乗るために早朝から動き出した。朝方は曇りがちだが時間とともに青空が広がり午後からは快晴となるでしょうと天気予報は伝える。
バスの出発時刻に間があるのでANAホテルを出たあと大通り公園のテレビ塔に行ってみた。テレビ塔を見た瞬間に突然、20年前の真夏の北海道に新婚旅行にやって来て札幌を訪れた時、麦藁帽子を被った妻のアッコがおどけたポーズをとったのを思い出した。テレビ塔の隣のNHKに表示されている温度計を見ると4度を表示している。4月24日の早朝6時30分の気温である。観光客の姿がちらほら見えるようになってきたが一様に首を縮めている。早めの通勤客の半数はコートを羽織っている。時計台を見たあとに北海道庁にやってきた頃には青空が空一杯に広がり、道庁のレンガの明るい茶色が映えてとても清々しい静かな朝を迎えている。
高速バスは札幌から小樽、余市を経由して積丹半島へと進んでいく。
昨日、雪がチラチラ舞う石畳の小樽を半年振りに歩いてみたが気温は2.5度だった。非常に寒かった。昼食に生ビールとジンギスカンを食べ、両方ともに美味かったが身体は暖まらなかったことを思い出した。4月下旬にもなるが周りの山々には残雪が多く北海道の春の訪れはまだまだ先の感じである。
それでも残雪の山々とは対照的に余市海岸では元気な若者が真っ青な海の中でサーフィンで波と戯れているのが車窓から見られた。若者は元気の方がいい。
バスは残雪の林の中を走り神威岬にやってきた。バスの駐車場から岬の突端までは約20分ほどだ。透き通っている海がとても綺麗だ。海底が見える。風がとても強い。被っている帽子が風に吹き飛ばされそうになるので帽子は脱いで手に持って岬の突端までの遊歩道を歩き出す。風はますます強くなる。幅1m程の遊歩道の両側には柵が作られているが柵がなければ崖下まで吹き飛ばされてしまうだろう。
灯台を過ぎて突端まで来ると眼下には転々と岩礁が続いており、続いている岩礁の中で一際高く「神威岩」が立ち上がっている。この岩を見たくて遥々札幌から3時間のバスの旅を続けてきたわけだ。人々は神威岩を眺め、どのような厳しい条件の中でも毅然と立っている姿と己の姿と対比し感動を覚える。観光客は強風の中で真っ青な海の中に毅然と立っている神威岩にカメラを向け次々にシャッターを押す。携帯電話のカメラでカシャカシャ撮っている音も耳に届く。私も携帯の待ち受け画面用に1枚シャッターを切った。真っ青の海の中央に神威岩が立ち上がっている。遥か沖に真っ白な大型船が静かに航行していくのが見える。どこに向かって行く船なのだろうか、とても静かな時間が流れていく。
岬の突端で気が済むまで神威岩と対面したので駐車場に戻りレストランに入って昼食にした。遊歩道の途中から海岸に降りられる道があったのだが事故防止のためか廃道になっていた。ウニ、イクラ、エビ、イカが散された「積丹丼」に味噌汁と漬物、それにビール1本を飲みながらノンビリと外を眺めながらバスの出発時刻を待ったのだが、ゆっくりと流れていく時を感じる。積丹岳も余市岳もまだ真っ白な冬の姿をしている。