黒い氷河、バルトロ

 

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マッシャ―ブルム峰とバルトロ氷河上のテーブルストーン

 

2011年7月1日から25日の日程で西遊旅行社企画の『K2大展望 バルトロ氷河トレッキング』に参加した。トレッキングコースは、遥かなるカラコルムへ向けてバルトロ氷河を遡り、コンコルディアを取り囲む7000m〜8000mの峰々である、K2、ブロードピーク、ガッシャ―ブルム、バルトロカンリ、スノードーム、チョゴリザ、を拝み、氷河上のテントに寝泊まりする15日の行程である。

 

カラコルム山脈は、パキスタン、インド、中国の国境付近に横たわる山脈であり、ヒマラヤ山脈などと同時に語られることもあるが独立した山脈である。高峰の間を流れる氷河の多くが岩石に覆われており、カラコルムとはトルコ語で「黒い砂利」という意味である。カラコルム山脈には世界第2位の高峰であるK2を筆頭に標高7000m以上の山々が60座存在している。これらは主にパキスタン北部に集中しており山脈の長さは500kmに渡る。南極北極を除けば世界最大の氷河地帯があり、代表的な氷河として、シアチェン氷河、バルトロ氷河、ビアフォ氷河がカラコルム山脈中央部にある。

 

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チョゴリザ(花嫁の峰)とアッパーバルトロ氷河

 

バルトロ氷河は、全長69km、幅は最大3kmである。シアカンリ峰西方の雪原に端を発して西へ流れ、次いで北西へ流れる。標高4650mのコンコルディアでK2の麓を流れて来たゴドウィン・オースティン氷河を合わせた後、北のムスターグ山脈と南のマッシャ―ブルム山脈の間を緩やかな弧を描いて西へ流れ、末端は標高3500mの氷舌である。私たちはこの氷河を遡りコンコルディアに向かった。

 

パイユキャンプ場から1時間ほど歩くとバルトロ氷河の末端に出会う。氷河は白色ではなく黒い氷河である。その氷河の下からグラッシャーミルクと呼ばれている氷河が岩石を削った岩粉が混じった灰色の水が流れ出ている。氷河は常にゆっくり動いており、トレッキング中でも「カラカラ」とか「ズシャーン」とかいった音が聞こえてくる。氷河上の岩石が崩れ落ちる音である。従ってトレッキングルートも毎年変更される。地元のトレッキングガイドが安全を確認してルートを選択してくれている。私たちの隊に付いたトレッキングガイドはアミ―ンとイリアスというガイド歴20年のベテランだった。

 

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バルトロ氷河末端から流れ出るグラッシャーミルク

 

川の場合は、流れが直線ならば遠方まで見渡すことができるが氷河の場合は凹凸が激しく見通しは全く利かない。モレーンと言われている山から崩れて来た岩石が堆積し小山の連続となっているため、ひとつの小山を越すと次の小山が登場するというのが連続し、しかも氷河の裂け目であるクレバスが度々登場する。これらを巧みに避けながら次のキャンプ地を目指すというのが続いていく。従って氷河上を歩くといっても白い氷の上を歩くのではなく、岩上を、石上を、砂利上を歩くというのが実情である。

 

キャンプ地に到着すると氷河上では当然氷河の上に設置されたテントに寝ることになる。キャンプ地は予め決められておりテントを設営する場所もほぼ決まっている。平らな所を選んで小石を取り除き、ビニールシートを引いた上にドーム型テントを設営する。テントのなかに断熱シートを敷き、断熱マットの上に冬用寝袋を拡げる。寝袋の中にインナーを入れ込み、夕食時に湯たんぽを入れる。上下の防寒下着の上に羽毛防寒着の上下を着こんで寝袋にもぐりこむ。朝までぐっすり眠ることができるが、朝起きてみるとテントの脇から体温で溶けた氷河が氷となっているのが見受けられる。私たちは天候に恵まれていたので気温は夜明け前でもー5度が一番低い温度だった。

 

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