ジョムソン街道と二ルギリ峰
のんびりとしたニルギル峰山麓
私は3月19日から4月1日まで14日間のネパールトレッキングに出かけてきました。昨年11月に続いて2回目のネパール訪問で、今回のトレッキングの目的は7つありました。
1、昔、チベットからインドへの塩の道として栄えたジョムソン街道を歩くこと
2、高く聳えるニルギル峰に出会うこと
3、河口慧海記念館を訪ねること
4、8000mを超すダウラギリ峰に出会うこと
5、プーンピルからアンナプルナ山塊とダウラギリ山塊を展望すること
6、満開の真っ赤な石楠花で染まる山道を歩くこと
7、時間と天候が許したらスケッチをすること
14日間のトレッキングの道すがら出会う花や動物、自然や生活している人々、特に子どもたちとの出会いを楽しみにしていました。
ジョムソン街道は中央ネパールをチベットからインドへと5000mのヒマラヤの峠を越えて真っ直ぐに延びる塩の道です。かつてチベット高原で生活する人々はヒマラヤ岩塩を背負ってインドへ向かい、その塩を売り、逆に必要とされる日用品を買い求めてチベットへと戻るために歩いた道ですが、現在では車やバスが行き交う大動脈で、カリ・ガンダキ川(黒い川の意味)沿いの道は下流から吹上げてくる風によって常に砂塵の舞う道でもあり、ヒマラヤ山脈を超える渡り鳥のアネハヅルのルートです。
ポカラ空港からジョムソン空港までの飛行時間は17分ですが、常に風が吹いているために比較的風の弱い午前中に2便しか飛びません。私たちはジョムソン空港に降り立ち、時には砂塵が舞う河原道を歩き、時には川底まで200mの断崖の道をジープに揺られながら下りました。ジョムソン街道は大動脈とはいうものの舗装はされていない凸凹道で、自動車が擦れ違う場合は比較的道路幅のあるところで片方の車が待機して擦れ違わなければならない山岳道路です。かつての生活道路ですから自動車、自転車、牛、人、なんでも通ります。特にジョムソンの奥にヒンドゥー教と仏教の聖地であるムクティナートへインドからの信者が巡礼として歩いている姿に何人も出会ったことは驚きでした。彼らは車に乗ることなく簡単な食器などのを持つのみで、他には何も持たずに布1枚の着たきりすずめで歩いていくのです。普通は草履などを履いていますが中には裸足で歩いていく信者にも出会ったのは全くの驚きでした。
マルファ村で出会った少女
ポカラ空港からの双発ジェット機は有視界飛行で左にダウラギリ山塊を、右にアンナプルナ山塊を望みながらカリ・ガンダキ川沿いにジョムソン空港まで飛びます。ジョムソン空港はカリ・ガンダキ川の河川敷に造られた飛行場で滑走路と簡単な2階建ての建物の他はなにもない殺風景な空港でした。そのジョムソン空港に着陸する直前に右側に聳え立つのがニルギリ峰です。山頂は3つに分かれていて、北峰7061m、中央峰6940m、南峰6839mとあり、サンスクリット語で「ニルは青い、ギリは山」という意味です。北峰はオランダ隊、中央峰は松山商科大学隊、南峰は信州大学隊がそれぞれ初登頂しました。
ジョムソン空港から仰ぎ見られるのは北峰で美しい氷壁が確認できます。7000mを超える峰々がすぐそこに見られる素晴らしさを実感します。ジョムソン街道を下っていくと北峰、中央峰、南峰の順に仰ぎ見ることができますが、私たちが下った時は曇り空だったため山頂は残念ながら雲の中でした。山麓には杏の桃色の花が咲きだし、柳の枝からは軟らかな黄緑色の若葉が萌えだしており、牛や馬や羊が放牧されのんびりした農村風景が眺められました。