いつもお母さんといっしょだよ

 

お母さんと5羽の子どもたち

 

朝のバードウォッチングは自宅を5時に出発し、約100m先の田んぼからスタートする。花見川沿いに拡がる畑・田んぼ・耕作放棄地の周りを歩きながら、野鳥の声を聞き、姿を観察・撮影して自宅に戻ると、約2時間である。最近のバードウォッチングは、草木が伸び、葉が茂り、野鳥の姿を隠すことが多い。ヨシなどは私の身長をはるかに越す高さまで伸びている。こうなると野鳥の姿はほとんど見えない。“声はすれども姿は見えず”の状態である。それでも太陽の光を全身に浴び、朝の澄んだ空気のなかで、朝露を分けながら歩く爽快さは、何にも代え難いものである。早朝のバードウォッチングは、実に健康的な散歩だと感じている。

 

朝日に輝くカンナ

 

花見川沿いの土手にカンナの花が咲き出した。朱色から深紅のカンナの花は、太陽の光を受けて一層輝きを増していた。近くの水辺では、カワウが土管の上に留まり、太陽を背に翼を広げ、羽を乾かす姿があった。

 

がんばれー 子ガモたち

 

カルガモの親子が花見川を泳いでいる姿が確認できないだろうか、と思っていたところ、偶然にも子ガモ5羽とお母さんガモが元気に川面を泳いでいる姿に出会った。前を泳ぐお母さんガモを、必死に追いかける元気な子ガモたち。久しぶりの出会いだった。この親子は以前、私が自宅のそばでみた12羽の子ガモとは異なるが、それでも元気な親子の姿は実に微笑ましいものである。時折り堰堤の上から母子を見守っていたお父さんガモが、グゥェ・グゥェという短い警戒音を発していた。

 

お母さんと3羽の子どもたち

 

田んぼのあぜ道で生まれて徐々に大きくなったカルガモの赤ちゃんの第1の試練は、大きな池や川まで無事に移動できるかどうかである。川や池まで移動できれば、生存確率は増えていく。それ以降の第2の試練は、猛禽類の襲撃などに対して、どのように身を守っていくかであるが、カルガモのお母さんと3羽の子どもたちがあぜ道で休んでいた。私が写真を撮りながら近づいていくと、30mほど手前でカルガモたちは稲田の中へと静かに消えていった。子ガモたちはずいぶん大きく育っていたが、まだまだ試練は続いていくのだ。

 

卵を温めるツバメのメス

 

ツバメの巣が再建された場所に行ってみた。ツバメは巣を完成させ、巣の中で卵を温めていた。その巣から3mほど離れた電柱支線に掴まり、卵を温めているメスを見守っていたオスがいた。仲の良いつがいだと思うが、この巣の中で孵化した雛が無事に巣立つまで、巣が壊されないことを願っている。

 

ピンクのウスベニアオイの花が咲き出している

 

 田んぼの脇を歩いて行くと、バッタなどの昆虫、トカゲなどの爬虫類、カエルなどの両生類など、たくさんの生物の姿が確認できる。ピンクのウスベニアオイの花が咲き出していた。花の周りが華やいでいるように感じられる。ウスベニアオイの花はハーブティとして利用されており、お湯を注ぐと青い花に変色するマジシャンなのだ。

 

ハクセキレイの幼鳥

 

 畑で2羽のセキレイが仲良く餌を探していた。セキレイの仲間は2羽のつがいでいることが多い。セキレイの羽の色が全体的に薄かった。キセキレイとも違う。セグロセキレイとも違う。ハクセキレイとも違う。判断がつかなかったので、写真を撮って自宅に帰ってから調べると、ハクセキレイの幼鳥だった。以前の調べ方は野鳥図鑑の掲載写真や解説と比較して対象を特定する方法だったが、現在は撮影した写真にGoogleLensの焦点を当てると、Googleが収集したビッグデータから解析結果を瞬時に知らせてくれる。特定までに1秒とかからないのである。この方法は野鳥に限らず、植物、動物、花、魚、昆虫等々、何でも可能である。便利な世の中になったものである。

 

ハクセキレイの幼鳥(右)とスズメの幼鳥(左)

 

野鳥の寿命は3〜4年なので、今回出会ったハクセキレイは、幼鳥といえども既にカップルとなっていた。来年は産卵・子育てを迎えるだろう。2羽のこれからの生活にも様々なことが起こるだろうが、それに負けないように“頑張れ若造!”というエールを送った。ハクセキレイのそばに黄色い嘴のスズメの幼鳥がやってきた。けんかをすることなく餌を探していた。

 

親に甘える子スズメ(左)

 

 巣立ち間もないスズメの幼鳥に親鳥が餌を与えている場面に出会った。30分ほど前に出会ったスズメの親子の場合は、親スズメは子スズメをひとり立ちさせるために、子スズメが近づいてきても一定の距離を保っていたが、今回の親子はまだ子スズメが若いらしく、親が子の世話をやく光景が見られた。数日すれば、親は子と一定の間隔を取って、子に親離れを促すだろう。もうじきに“いつまでも親を頼りにしているんじゃないよ”という叱責の声が聞こえてくるだろう。

 

ガマの穂が見られるようになってきた

 

 耕作放棄地にたくさんのガマの穂が見られるようになってきた。私が小学生のころ学校にガマの穂を持ってきたクラスメートがいた。ガマの穂というのを初めて見た時に、こんな大きい猫じゃらしがあるのか、と思ってビックリしたの思い出す。もう60年も前の話である。その時に見たガマの穂の印象は実に強烈だった。湿った耕作放棄地にはガマの穂やヨシが密生している。

 

キジの「高鳴き」と「ほろうち」

 

キジの「高鳴き」が遠くから聞こえてきたので、キジの棲みかの耕作放棄地に行ってみた。オスが田んぼの畦で胸を張っていた。キジが向こう側を向いていたのと、太陽光線の関係で、東側からあぜ道を回り込んでキジに迫った。私は田んぼの持ち主から、あぜ道を歩くことの許可をもらっていた。しばらくすると「高鳴き」と「ほろうち」が始まった。私はキジの撮影を終えたあと、歩道でキジを撮影していたおじさんと話してみると、家庭菜園を最近借りた人がキジを見つけると、自分の菜園に入ってこないように石を投げているのを見た、と言う。家庭菜園の耕作者は自分の菜園をキジに荒らされると勘違いしているのだろう。農作物を荒らすのはカラスである。

 

キジの「高鳴き」と「ほろうち」

 

カラスによる農作物被害は、私の家庭菜園でも、スイカ、キュウリ、トウモロコシ、トマト、ナスと被害に遭っている。しかし、カラスと違って、キジは農作物に被害を与えたりはしない。キジが棲む耕作放棄地の隣の家庭菜園は10数人がやっているが、新しく来た人だけが石を投げつけているという。とんでもないことである。菜園で野菜を作るにしても、春夏秋冬の自然の移り変わりの仕組みを理解することが収穫量にも影響するし、野鳥への理解を深めることも、人間と自然との共生のひとつとなるだろう。

 

キジの絶叫である「高鳴き」の時、瞬膜が角膜を覆う

 

鳥類には涙腺がないため、角膜の外側に瞬膜というのがあり、瞬膜によって角膜を湿らせている。キジの「高鳴き」は絶叫であり、思いっきり絶叫する時に瞬膜が角膜を覆い、眼球が見えなくなる時がある。このキジの棲む近くの耕作放棄地の藪にノウサギが棲んでいるようだ。散歩中にスマホでノウサギが遊んでいるところを撮ったものを見せられた、とキジを撮影していたおじさんは言った。

 

別の場所でキジのオスに出会った

 

ノウサギが棲んでいる場所を教えてもらったので出かけてみた。するといつもキジが姿を現す耕作放棄地ではない別の場所でキジのオスを見かけた。周りにメスか雛がいるかもしれないと思い、双眼鏡で丁寧に探してみたが、オスが1羽いるのみだった。キジがいつもいる場所からは200mほど離れているが、こちらの場所もキジのテリトリーかもしれないので、今度バードウォッチングを訪れるときは、こちらも注意深く確認しようと思った。

 

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