今森光彦展を観に行く
「カワセミとヤマザクラ」と「アレキサンドラトリバネアゲハとハイビスカス」
今森光彦展が高崎市美術館で開催されているというチラシを手にしたのは五反田の美術館を訪ねたときだった。すぐに観たいと思った。今森さんは昆虫写真家として有名な方で、木村伊兵衛写真賞、土門拳賞、毎日出版文化賞、産経児童出版文化賞大賞、小学館児童出版文化賞などの名だたる賞を受賞している方で「里山文化」の提唱者でもある。
私は以前から今森さんの写真集を手に取って眺めていた。昆虫写真と里山写真が主だったもので、輝くばかりの写真と同時に情景をゆったりした文章で書いたものも好きだった。今回の展覧会は写真展示もされているが主となるのは切り絵だった。私は今森さんの切り絵を見るのは初めてだった。
切り絵で有名なのはファンタスチックな藤城清治さんの影絵だが、今回初めて観た今森さんの切り絵は、何百種もある色紙の中からコンテに描かれた原図に使用する色を書き込み、その設計図に沿って何枚も何枚もの色紙を重ねて現物の色に近づけていくという方法をとっていた。それは対象とする動物に実際に会った経験が作品の色彩に生きており、繊細な作業は凄く集中力を必要とする作業だと思った。
切り絵の作成方法がビデオで放映されていたが、驚いたのはカッターを使わずに裁ちばさみで切っている点だった。見る間に立体的なヘラクレスオオカブトムシが切り出されていった。今森さんは子どものころ母親のそばで裁ちばさみを使って切り絵に熱中していたが、成長するに伴い切り絵の世界から遠ざかっていたが10年ほど前から再開したのだという。今では1mほどの大きな切り絵を1ヶ月に1枚のペースで作成しているようだ。これからも美しい自然を切り取っていってほしいと思う。