むかごを食べながら

 

寸庭橋からの多摩川の流れ

 

 紅葉にはまだ早いと思いつつ奥多摩の渓流に触れ温泉に浸かるため奥多摩ハイキングに出かけた。

スタート地点に古里駅を選び、多摩川の渓流沿いに鳩ノ巣渓谷から奥多摩駅まで遡るコースを歩いた。

 古里駅に下車し青梅街道を西に歩き赤く塗られた寸庭橋を渡りきった橋の袂から川沿いの杉林につけられた遊歩道を進む。遊歩道といっても杉の根っこや倒木を跨ぎながら進むわけだが、しばらく歩くうちに寸庭川わきに滝が現れた。小さな滝だが水量たっぷりに流れ落ちている。杉林の中の遊歩道は九十九折りになりやがて松ノ木尾根へとつながっている。北側が切り開かれた松ノ木尾根上から山々に囲まれた鳩の巣方面の家並みを眺めていると、崖下から吹いてくる風がうっすらとかきはじめた額の汗を快く撫でてくれる。やがて遊歩道は鳩ノ巣駅から御岳へ続く登山道と合流する。

 3人の若者が御岳方面への登山道を登っていったのを見送り鳩の巣渓谷に向かう。城山キャンプ場の脇を通り雲仙橋を渡る。眼下に多摩川の渓流が望める。結構高い橋だ。紅葉はまだ始まったばかりだ。双竜の滝を見たあと「鳩の巣渓谷」のいわれが書かれた碑を読んだあと川岸に立つ。吊橋である鳩の巣小橋を見上げると観光客が2人吊橋を渡っていく。私は鳩の巣渓谷を訪れるのは初めてであるが、旅館や民宿、食事処があちらこちらにあるところをみると昔から観光に訪れる人がいたのだろう。

 流れは深く速い。その川岸に沿って遊歩道が続いている。ときたま色づいた山芋の蔓にむかごが付いているのが見える。私は山芋も好きだが、子どものむかごも好きだ。丸いむかごを口の中に放り込みモグモグしながら遊歩道を歩いていく。口の中には山芋の香りとネバネバ感が拡がる。秋のハイキングシーズンはこのような楽しみが増えるのがいい。

 1963年に建設された発電用ダムである白丸ダムに着いた。小さいダムながら高さは30mあるという。ダム上から見ると左側に8年の歳月をかけて作られたという魚道が申し訳のように付いているが、はたして魚が登っていくのだろうか? 疑問符をつけざるをえない。

 氷川キャンプ場の手前に架かる吊橋「もえぎ橋」を渡り奥多摩温泉「もえぎの湯」に浸かる。内風呂はジャグジー付きで泡がボコボコ吹き出している。身体に纏わり付く刺激感が3時間歩いてきた後の疲労感を癒してくれる。外の露天風呂にも入ってみた。身体がすべすべする透き通った温泉だ。とても感じが良い。杉木立ちの向こうに多摩川の流れと氷川キャンプ場が望める。このあたりの紅葉もまだ若い。あと1ヶ月くらい経てば良い紅葉が望めるだろう。そのころまた訪れてみたいと思う。

 風呂上りの後は当然ビールである。瓶ビール2本、盛り蕎麦1枚、岩魚の塩焼き、モツ煮込み、キムチ、をツマミに座敷に上がって昼食にする。窓際の席に座ったので杉間越しに多摩川の流れが見える。ゆったりとした時間が流れていく。

                                         2005年10月22日

 

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