現代イラストレーター4人版画展
カントク作品(ROSA)
GoogleでWebサーフィンしていると、現代を代表するイラストレーター4人の版画展が、2月21日(金)〜24日(月)まで千葉市文化センターで開催される、と載っていた。4人は、藤真拓哉、カントク、Hiten、士郎正宗たちだった。
版画展入り口のポスター
日本で版画といえば、現在、NHK大河ドラマで『べらぼう・蔦屋重三郎』が放映されている江戸時代の歌麿や北斎の浮世絵を想像する。また日本画の大家である東山魁夷の静かな湖畔で白馬が散歩する作品が多色刷りされているのを美術館で観たことがあるが、現代の最先端版画がどのような技法によって作成されているのか興味が湧いたので出かけてみることにした。
Hiten作品(Hazy Light)
2月21日 金曜日 晴れ
開催初日の13時過ぎに千葉市文化センター5Fの会場に入った。事前受付をWebで済ませていたので、予約番号を受付係に表示して入場証をもらった。作品展示コーナーに入ると4人のイラストレーターの作品が作家別に展示されていた。展示されている作品をひと通り観てから版画の技法について会場内にいた担当者に4つの質問をした。
藤真拓哉作品
1点目は、ここに展示されている作品群はパソコンで描いたイラストではないのか?この細い線を出すためにどのような版画技術を使うのか?と、展示されている作品を指さしながら技法を尋ねると、答えは、画家はパソコンのコンピューターグラフィック機能で絵を描くために、紙の原画というものがなくてデジタルデータしかないのです。そのデータを印刷工房で多色摺り印刷して作品として表現する時に初めて原画が登場するのですが、世界の版画コンテストで金賞を受けた工房と契約しているので、世界のトップ技術がこの作品には反映されているのです、という説明を受けた。
カントク作品(花の時)
2点目は、鏡のように映る作品があるが、どのようになっているのか?と、その技法を尋ねると、答えは、透明な5ミリほどのアクリル版の片面に版画印刷し、鏡のように反射する板の前に置くことにより、アクリル板の厚さによって2重に映るのです、という説明を受けた。
攻殻機動隊・草薙素子
3点目は、作品の中には七宝焼きのように表面が盛り上がっているものがあるが、どのように作られているのか?と、その技法を尋ねると、答えは、版画印刷をする時に何枚もの版を重ねていく過程で、塗料によっては厚みがでる場合があり、それが重なり合って、あのような盛りあがりができます、という説明を受けた。帰宅してから作品内容を再確認すると、私が質問した作品には漆塗りの技法が使われていたので、作品が盛りあがっていたことに納得した。
カントク作品(SHIZUKI)
4点目は、ミクストメディアというのはどのような技法か?と、尋ねると、答えは、複数の素材を重ね合わせて1つの作品を作る方法で、例えばこの作品の中に作者自身がラメ素材を使う方法などです、という説明しながら展示されている作品を斜めに傾けると、ラメ色を着けた部分がキラキラ光って見えた。確かに翔んでいるアゲハチョウや鳥の部分だけにラメを塗って部分的に光らせている作品があった。部分的に強調するところに煌びやかなラメを入れるという手法は、墨水画でも花鳥風月を描く時にこのラメ技法を取り入れてもいいのではないかと考えた。
Hiten作品(On The
Stage)
説明担当者は、今回の版画展示販売会を企画しているのはアールビバンという会社で、以前ハワイの画家で海やイルカなどを主テーマに描いて一世を風靡したラッセンを日本に紹介した会社で、創立40年の歴史があるとのことで、この展示会は作品即売会を兼ねているが、作品の購入注文を受けてから納品までの期間は約3カ月となる受注製作とのことだった。一連の展示作品は1点が45万円から100万円の値段で販売されており、版画印刷枚数は作品によって異なり、50枚から150枚という範囲だった。
藤真拓哉作品(クリスタルグラフィー・AQUA
PRISM)
今回、現在の最先端の版画展を観たことにより、作品の単なる印刷ではなく、複数の素材を重ね合わせていくところに現代の版画印刷技術があることを知った。ちなみにWeb予約特典として藤真拓哉のシンデレラ城の前に少女がいるA4版サイズの「クリスタルグラフィー・AQUA PRISM」クリアポスターをいただいたので、額に入れて部屋に飾った。