過密すぎるよ、白鳥の郷

 

水に浮かんでいる鳥の群れ

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過密状態の白鳥の郷

 

 12月24日 晴れ

東京新聞の12月23日の朝刊に、印西市本埜にある“白鳥の郷“にオオハクチョウ、コハクチョウが600羽ほど渡ってきてにぎわっている、という記事が掲載された。そこで白鳥の郷に渡ってきたハクチョウを見に行くことにした。白鳥の郷の最寄り駅はJR成田線の小林駅である。自宅から京成幕張駅に向かい、京成成田駅でJR成田線に乗り換えた。小林駅で下車すると、空は晴れているが刷毛で掃いたような薄雲が広がっていた。

 

砂漠の中の道路

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白鳥の郷まで田園風景が広がる

 

白鳥の郷に向かって農道を歩いて行くと特別養護老人ホームがあり、その前に「白鳥近道」という小さな標識が立っていた。農道を真っ直ぐ白鳥の郷に向かっていくと、ハクチョウが舞い上がる姿が確認できた。水が張った田んぼに寛いでいる姿も遠くから確認できた。それにしても新聞報道に比べて数が少ないように感じられた。小林駅から40分で白鳥の郷に着いたのだった。

 

草, 屋外, フェンス, ベンチ が含まれている画像

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鳥インフルエンザ感染予防のための石灰による靴裏消毒

 

白鳥の郷の入口には「鳥インフルエンザおよび新型コロナ感染予防のために、道路以外に立ち入らないでください」という「白鳥を守る会」の看板があり、石灰が撒かれて靴裏を消毒しているようだった。また、見物に来るのに犬猫などのペットを連れてくる人がいるようで、連れ込み禁止の看板が立っていた。

 

水の上を飛ぶ鳥の群れ

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飛びたったコハクチョウ

 

私が白鳥の郷に到着する少し前に、コハクチョウの2つのグループが飛びたった。それぞれのグループは8、9羽だった。私が白鳥の郷に着いた時には10羽のコハクチョウが田んぼの奥にいるのみだった。それらもすぐに飛び立ってしまい、あとに残っているのはオナガガモが200羽ほどいるのみになった。ハクチョウを観にやってきた3人の家族連れも、「残念だね」と言いながら帰っていった。

 

水, 屋外, 鳥, 湖 が含まれている画像

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田んぼに水が張られた白鳥の郷

 

白鳥の世話をしていた女性によると、「ハクチョウが多くいるのは朝方と夕方で日中はここにはいません」なぜかと言うと、「今年は周りにも餌が豊富にあり、そちらに飛びたって餌を食べて夕方戻ってきます」とのことだった。また、「ここ2、3年は周りに餌がなかったために昼間もここにいたのが異常な状態で、今年は本来の姿に戻っています」とも言った。私が着いた時にコハクチョウの最後のグループが飛びたつ時であり、それをかろうじて撮影できたというのが実情だった。世話をしている女性の話によると、「午後3時ころに戻ってくるので、時間があったら来てください」とのことだった。

 

水, テーブル, ボート, 座る が含まれている画像

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ハクチョウの渡りルートを説明するパネル

 

コハクチョウが去ったあとは、オナガガモが200羽ほどいるのみだった。ハクチョウのために撒いた餌をカモたちが食べているため、世話人が空砲を鳴らして追い払っていた。情報によると、ひと冬を越すのに約200万円の餌代がかかっているとのことだった。世話人たちは撒いた餌をカモたちが食べているのに耐えられないのだろう。

 

水の上を飛ぶ鳥の群れ

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飛び去るコハクチョウ

 

 「白鳥の郷」と「本埜白鳥を守る会」が出来たきっかけは、今から30年前の1992年(平成4年)に農業用排水路工事のために、一時的に田んぼに水を張っていたところ、6羽のハクチョウが舞い降り、その後、毎年来るようになった。3年目にして初めて餌やりに成功し、年を重ねるたびに飛来数が増えていったとのことだった。「白鳥の郷」は、今では新潟県瓢湖に次ぐ国内屈指の飛来地となっており、印西市の観光名所として土日祝日には大勢の見物客が訪れているとのことだ。

 

水, 座る, 木製, ボート が含まれている画像

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本埜小学校の子供たちのメッセージ

 

農道と田んぼの境目に、白鳥の郷の近くの本埜小学校の子どもたちが割り竹に書いた「ハクチョウに宛てたメッセージ」が立っている。「白鳥さんエサをたくさん食べて元気になってね」「白鳥さんへ 毎年きてくれてありがとう。らいねんもきてね」「白鳥さんへ 元気ですか。今年もきてくれてありがとう。ゆっくりしていってね」などなど・・・ 田んぼを囲うように畔に差し込んだメッセージを一つひとつ読んでいくと、毎年シベリアから3000キロ以上の旅をしてくるハクチョウたちへの思いやりが溢れていることを感じた。

 

壁に貼ってある数種類のポスター

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白鳥を守る会の活動紹介掲示板

 

昨年までは本埜小学校のHPにハクチョウの飛来数を1週間単位で掲載していたが今年は載せていない。白鳥の世話をしている「白鳥を守る会」の人たちが、毎日渡ってきたハクチョウの総数を数えて田んぼ脇の掲示板に表示していた。私が訪れた前日の12月23日の総数は729羽だった。昨年度の最大飛来数は1月19日の1029羽が記録されていた。白鳥を守る会は土日祝日には義援金付きの下敷きや郷親缶バッチを500円で販売しており、そのうちの200円を活動資金に活用しているという。

 

屋外, 草, 水, フィールド が含まれている画像

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空にうろこ雲が拡がっていた

 

私は今回のバードウォッチングにも日帰り登山と同じように、ザックの中には食料を詰めていたので、白鳥の郷から20分ほど離れた田んぼのあぜ道にグランドシートを広げ、日向ぼっこをしながら山岳書を読み、ハクチョウたちが戻ってくるのを待っていた。風もなく日差しが暖かいので、本を読んでいると睡魔が襲ってくる。シートに寝転がって空を見上げると、いわし雲が空一面に拡がっていた。いわし雲は天候が崩れていく前触れなので、明日から天候は崩れていくだろう。

 

水に浮かんでいる水鳥

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戻ってきたハクチョウたち

 

13時23分に最初のグループが編隊を組み、グァンファングァンファン鳴きながら戻ってきた。鳴き声でお互いの意思疎通をし、方向や距離を表しているのだろう。13時37分に2番目のグループ、13時58分に3番目のグループが、遠くから鳴きながら帰ってくる。最初は犬の鳴き声のように感じるが、近づくとコハクチョウである。14時に4番目、14時7分に5番目。このように次々にコハクチョウたちは編隊を組んで白鳥の郷に戻ってきて、水の張った田んぼに舞い降りたのだつた

 

鳥が飛んでいる

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舞い降りるコハクチョウ

 

白鳥の郷で餌やりや周りの整備をしていた女性が、15時ころにはハクチョウが戻ってくる、と言っていた通りの状況になっていったのである。ハクチョウたちは、9時と15時の1日2回の餌まきの時刻を覚えており、その時刻に合わせて行動しているのである。

 

水の上を飛ぶ鳥たち

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帰ってきたコハクチョウの親子(真ん中が親鳥)

 

ハクチョウたちもずいぶん戻ってきたので、14時40分に腰を上げて白鳥の郷に向かった。農道には13台の車が止まっていた。白鳥の郷に着くと、見物をする人と撮影する人が田んぼの前に集まっていた。白鳥を守る会の人が餌を撒いていた。私の持っている望遠レンズではハクチョウたちが近すぎた。スマホでも十分撮影できる近さだった。

 

水に浮かんでいる水鳥

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羽ばたきながら挨拶をするハクチョウ

 

私は白鳥の郷のハクチョウたちを初めて見たが、田んぼの広さに対して何という過密さなのだ、というのが初印象だった。オオハクチョウ、コハクチョウ、オナガガモが入り乱れて餌を食べていた。羽ばたきをしながら自己主張し、お互いに挨拶をしている個体のそばで、泥を跳ね上げながら喧嘩をしているものもいる。翼で殴りあう、くちばしで突きあう、追いかけまわす、など結構派手な喧嘩をやるのだ。コハクチョウといえども身体がとにかくでかい。鳴き声がうるさい。私はいつもは小さな野鳥やカモ類を観察しているので、よけいに大きさと鳴き声が気になったのかもしれない。

 

水に浮かんでいる水鳥

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若鳥は灰色をしている

 

コハクチョウをよく見ると、若い個体は真っ白ではなくて灰色がかっている。嘴の根元も黄色ではなく、薄いピンクなので若鳥だとすぐに分かる。タンチョウヅルも若鳥は灰色をしていたことを思いだした。ハクチョウは移動や菜食などは家族単位で行動し、集まると大群となる。

 

水の中にいる鳥

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泥を跳ね上げての喧嘩

 

オオハクチョウ、コハクチョウ、オナガガモが入り混じって非常に過密だ。グァーグァー、ゲーゲーいつも声を出しているので鳴き声がうるさく、すさまじい。この過密状態で鳥インフルエンザが入ったら全滅するのではないか、という感じを受けた。2年前に「日本縦断てくてく一人旅」の第4ステージで、九州の鹿児島県出水市のツルの飛来地を訪れたことがあるが、彼の地でも鳥インフルエンザ感染に神経を使っていたが、飛来地がもっと広範囲だったことを思い出した。ハクチョウが飛来するのは歓迎するが、本埜白鳥の郷は過密すぎるのではないかと危惧している。

 

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