ゴーキョ・ピーク5360m登頂へ

 

ゴーキョ・ピーク山頂5360m

 

1、大地震後のネパールへ

 

 114日〜27日までの24日間で『ゴーキョ・ピーク&カラパタール エベレスト二大展望ピーク登頂』トレッキングに参加し、ネパールヒマラヤの素晴らしさを体験してきました。そのレポートを数回にわたって書きます。

 

 今回のネパールへの山旅も西遊旅行社のツアーで出かけましたが、いつもと違うのは西遊旅行社の通常ツアーではなく、5年前のキリマンジャロ登山で出会った山仲間で西遊旅行社に依頼したオリジナルの手配旅行だった点です。

 

 世界最高峰のエベレスト8848m(ネパール名はサガルマータ)の代表的な展望地とされるのは、ゴーキョ・ピーク5360mとカラパタール5545mの2地点です。この2地点にそれぞれ登ってエベレストを展望する単独ツアーは存在しますが、一度のツアーで2地点に登るツアーはありませんでした。そこで、ゴーキョ・ピークとカラパタールに登頂し、ゆったりタンボチェ僧院を廻るオリジナルなツアーを2年前に依頼したわけです。それが今回のツアーとなって実現しました。

 

 ネパールはモンスーンの関係で雨期(6月〜8月)と乾期(10月〜4月)に分かれます。今回の旅行は乾期が安定する11月に計画され、トレッキング中は雨具を一回も持ちだすことのない好天に恵まれました。日焼け防止クリームなど塗らない私は真っ黒に日焼けし現地の人と間違うほどの風貌になりました。

 

 今年の4月25日にネパール中央部を発生源とする大地震が襲いました。エベレストベースキャンプでも雪崩による多数の死傷者が発生しましたが、エベレスト街道と宿泊ロッジにも多大な被害が発生し、果たしてトレッキングは大丈夫なのかを地震発生当初は心配しましたが、西遊旅行社による地震直後の現地レポートや現地調査によってトレッキングが安全に実施できることを確信しての参加でした。実際、歩いてみると復興状態は目を見張るものがあり、まだ復旧中のロッジや道路補修中の場所もありましたが全く不都合は感じませんでした。

 

コンデリ6187mを背景に

 

 ネパールは自然豊かな国で農業と観光業とによって成り立っていますから、観光で訪れる外国人が減少することは観光業を収入源としているロッジ、ガイド、シェルパ、ポーター、土産物店、等にとっては死活問題となっています。東日本大震災後の東北地方もそうですが、時間を調整して旅行に出かけ自分の目で実態を観て、宿泊し、食事を摂り、話を聞き、土産物を買って帰る、ことによる支援という方法もあるということを改めて感じさせる山旅ともなりました。

 

2、大パノラマのシャンボチェの丘へ

  

 ネパールの首都カトマンズからエベレスト街道の出発点であるルクラ2827mまでプロペラ機で飛び、ここからトレッキングがスタートしました。私たちをサポートする現地スタッフは、ガイド、コック、シェルパ、ポーター、ゾッキョ・ドライバーを合わせて8名でした。この8名のサポートなくして私たちのトレッキングは成り立ちませんでした。とっても感謝しています。

 

 今回のトレッキングは5000mを越えるピークに2つ登頂するため、最初は低いほうのゴーキョ・ピーク5360mに登り、その後に一旦標高を落として体調を整え、再度カラパタール5545mに登り返す、というスケジュールでした。勿論、ゴーキョ・ピーク5360mが低いといってもヒマラヤでは低いのであって、日本の富士山よりも1600mも高い標高です。いくら日本で高度順応のためのトレーニングを個人で積んできたとはいえ現地での高度順応は必須です。

 

 トレッキングは、1日目:3時間で2652m、2日目:6時間で3450m、3日目:5時間で3800mというふうに徐々に標高を上げて高度に身体を順応させていきます。登山道はナムチェに登る650mの急坂を除いては比較的になだらかな道が続いて行きます。途中でヒマラヤン・タールというカモシカの仲間が顔を出したり、上昇気流を翼で捉えたワシ・タカ類が雄大に舞っています。足元にはリンドウの仲間が青と白の可憐な花で微笑みをくれます。それにもまして氷雪の冠を被ったヒマラヤの峰々が太陽の光を受けて雄大に聳え立っているなかをゆったりした気持ちで歩いて行くのですから山好きの私たちにとっては至福のひとときです。

 

クーンブ・ヒマラヤをバックにテンジン・シェルパと

 

 トレッキング3日目に日本人の宮原巍さんがシャンボチェの丘に建設したエベレストビューホテルまでの高度順応ハイキングがありました。宮原さんがホテル建設まで大変な労力を払った経過を自伝で読みましたが、凄いバイタリティのある方だと思いました。そのテラスでお茶を飲みながらアマダブラム、ローツェ、ヌプツェ、エベレストの大展望を見るだけでネパールまでやってきた甲斐があったと喜ぶ人も多いと思われます。私もその一人でした。

 

3、ゴーキョ・ピーク5360m登頂へ

 

 トレッキング4日目:4時間で3973m、5日目:4時間で4040m、6日目:4時間で4410m、7日目:4時間で4750mとゆっくりと高度を上げて行きました。天候は朝から夕方まで晴天続きです。

 

 トレッキング中は高度順応度合いを客観的な数字で判断するために朝晩パルスオキシメーターという測定器で脈拍数と血中酸素飽和度を測定し、毎日の健康管理をしています。私の夕食前の血中酸素飽和度と脈拍数をメモで確認すると4日目:83/65、5日目:85/56、6日目:80/60、7日目:76/100となっています。血中酸素飽和度が60台になると要注意となりますが、私は一度も60台まで落ちたことはありませんでした。

 

 5日目で同行していた友達が食事を全く受けつけないため体調を崩してしまい、チームから離れてスタッフ1名とともに日本語の解るオーナーが経営するロッジで高度順応することになりました。結果的にこの判断は正しく、4日後に再会した時は高度順応もうまくいき2つ目のピークであるカラパタールも登頂出来ました。

 

 7日目は天候が良かったならば最初のピークであるゴーキョ・ピーク5360mへ登頂するスケジュールとなっていましたが、天候も安定しているので前日夕食時の確認で全員一致で登頂決行を確認していました。行動時間はトレッキング4時間にピーク往復5時間を加えて9時間行動となりました。

 

 第1氷河湖、第2氷河湖、第3氷河湖を越えてゴーキョに到着し、昼食後、湖畔の道をたどり山頂を目指して登りだしました。高度を増すほどにミルクの湖と呼ばれエメラルドグリーンに輝く第3氷河湖が眼下に拡がっていきます。本当に美しい光景だと感じました。

 

夕陽に染まるエベレスト(サガルマータ)山頂8848m

 

 1345分に登山を開始し山頂に到着したのは1630分でした。5360mの山頂からは360度の大展望でした。白く輝くチョーオユーの山頂からは強風を示す雪煙があがっていました。特異な山容の怪峰ギャチュンカンの大岩壁も手に取る近さで眺められます。堂々とした三角形のエベレストや右に連なるローツェも雄大です。山頂で集合写真を撮り、各自で自由に写真を撮ったあと夕焼けに輝くエベレストを待ちました。

 

 夕日に照らされ急峻が故に氷雪を纏わないエベレストの南西壁が赤く輝きます。本当に広く大きな岩壁だと実感します。ゆっくりじっくり赤く輝いたエベレストを確認し足元に注意しながら湖畔に建つロッジまで降ったのだった。