冬鳥がやってきた
バンが悠々と泳いでいた
10月20日 快晴
久しぶりに花島公園までの往復10kmのバードウォッチングに出かけた。朝方まで雨が降っていたが、9時に家を出た時は快晴だった。途中、郵便局と銀行に立ち寄り、瑞穂橋から花見川の右岸に沿って上流に歩いていった。バンが水面を泳いでいた。中央アジアや極東ロシアで繁殖したものが、数千キロの距離を渡り終えて花見川にやってきたのだ。今年の秋に初めて見た冬鳥だった。たった1羽だったが首を高く上げ胸を張り凛とした姿で泳いでいた。
柿を食べる人は少なくなった
柿が橙色に色づき、なかには真っ赤に熟したものもある。“柿食えば
鐘が鳴るなり 法隆寺”と詠んだのは正岡子規だが、現在ではこれらの柿を食べる人は少なくなった。この柿も食べられることなく、野鳥が食べることとなるだろう。
イモカタバミの鮮やかなピンクの花が広がっていた
イモカタバミの鮮やかなピンクの花が土手に広がっていた。一週間前には咲いていなかった花だが、季節の移ろいは一週間でガラッと変わり、ピンクの花が秋の土手を鮮やかに飾ってくれていた。
チュウサギが獲物を探していた
セイタカアワダチソウの黄色い花の向こうでアオサギとコサギが獲物を狙っていた。2羽の距離は3mほどだが、アオサギの狩り場にコサギが近づくと、アオサギが追い払う。30分ほど2羽の動きを見ていたが、何も獲物を得ることができなかった。
カラスウリは苦い味がする
カラスウリが朱色に色づいている。カラスウリの形にはボールのような丸い形をしたものと、卵のような細長い形をしたものがある。皮を割ってみると中身はちょうど納豆のようだ。どんな味がするのか口に含んでみると苦い。食えたものではないが、中国では薬用とされており、日本でも地域によっては民間療法に使われているようだ。
アオスジアゲハがセイタカアワダチソウの蜜を吸っていた
アオスジアゲハがセイタカアワダチソウの花の蜜を吸っていた。風が強かったため、花は常に揺れていた。アオスジアゲハは揺れる花に必死に掴まりながら、花の蜜を吸っては、次の花へと移っていった。
花島観音の鐘楼
花島観音に寄ってみた。山門をくぐると境内に人影はなく静寂が支配していた。時折り甲高いヒヨドリの声と、木々の梢を渡ってくる風の音だけが聞こえた。南斜面に燃えるような色のツツジが咲いていたのには驚いた。ツツジは5月に咲く花である。鐘楼に行ってみると、鐘がつけないように打ち棒が縄で縛ってあった。むやみやたらに鐘をつく人がいるのだろうか。近所迷惑となりかねないマナーの問題だが寂しい気がした。
通路に三脚を立てないでください
境内から降りてくると、「通路に三脚を立てないでください」という表示があった。公園が混雑する日や時間帯には三脚のご利用やご滞在が他の公園利用者の迷惑になります。足を引っ掛けたり自転車とぶつかったりしますので、ご理解ご協力をお願いします、というもので、花見川公園緑地事務所が出した看板だった。野鳥や花の撮影に夢中になり、周りの人達に気を配る気持ちを持てない人が増えたのだろう。
また、耕作放棄地が増えた
田植えはしたものの収穫期になっても稲穂を刈ることなく、うち捨てられた田んぼがあった。昨年も苗を植えただけで刈ることのなかった田んぼだが、今年も耕作放棄地が1枚増えた。
10月21日 晴れ
船橋三番瀬に久しぶりにやってきた。6月以来だから4ヶ月ぶりとなる。天気予報は午前中が晴れで、午後から曇りだすとのことだった。今日の干潮時刻は11時18分だった。昨日が満月だったので大潮にあたる。三番瀬に着いたのは9時10分だった。干潟にはすでに5、6人のバードウォッチャーがいた。それから約2時間ほど干潟での野鳥観察と撮影を行った。
ミヤコドリが渡ってきていた
まず西側の防波堤の方に歩いて行くと、最初に目についたのがミヤコドリだった。ミヤコドリは冬鳥である。腹が白く、翼は黒、長い嘴が朱色で、とてもよく目立つ大型の鳥だ。干潟の正面から西側の防波堤の間に約50羽ほどのミヤコドリが餌を探していた。ミヤコドリの周りには、餌を探すたくさんのハマシギが確認できた。砂浜にいるのでハマシギという名前がついているが、磯にいるためにイソシギという名前がついたシギもいる。ふたつのシギの大きさはほぼ同じである。
小学生の野外授業
小学生の干潟体験授業で子どもたちがやってきた。賑やかな子どもたちの声と、先生の声が耳に届く。春にも子どもたちが干潟に来て、砂浜を掘り返しながら、そこにいる生物を学習していたが、秋でも同じことが行われているようだった。自然を体験する学習として非常に良いことだと思う。
乱舞するハマシギ
子どもたちが砂浜を掘り返して見つけた生物について、海浜公園の自然観察員が一つひとつ説明していく。図鑑で見たものを目の前で見て、手で触って確認できることが重要なのだと思う。実際に自分が体験することによって、海や干潟や自然のことを考えていくきっかけになるのだ。重要なのは実践である。今日はふたつのグループがやってきて、野外授業を受けていた。私は群馬の田舎で子どものときをすごしたが、私の周りは今から思えば、すごく自然に恵まれていたと思う。その子どものころの体験が、今になっても自然に対する物の見方や考え方の基礎になっているのだと実感している。
餌を探すハマシギ
ミヤコドリの次に撮影したのはハマシギだった。ときたまピュィというような甲高く短い鳴き声を発しながら、餌を探している。ハマシギはたくさんいるので、どの個体に焦点を当てるか迷うこともあるが、カメラは連続シャッターに設定してあるので、個体を適当に絞ってシャッターを押した。
凹地で休むシロチドリ
3番目に撮ったのはシロチドリだった。ハマシギやミヤコドリは汀の浅瀬にいるが、シロチドリは海水が干上がったところにいる。太陽が砂浜にあたり温度を高めるため、シロチドリは潮干狩りで掘られた凹地のところに、まったりと休憩しているのが目立った。
左脚に怪我をしていたミユビシギ
次々にやってくるハマシギを眺めていると、白い足環をつけたミユビシギが目についた。渡り鳥の調査のためにつけられた足環だが、体の動きが上下しており変だった。正常に歩くのではなく、ケンケンをしているような歩き方をしていた。よく観察すると、足環をつけた左脚は怪我をしているようだった。野生生物にとって、怪我をするということは命に係ることだ。かわいそうだが怪我をしたミユビシギは長くは生きられないであろう。
大きく広がる空と沖の方まで広がる三番瀬干潟
私は11時に撮影をやめた。今回の三番瀬干潟での野鳥観察と撮影できた鳥の種類は6種類だった。冬鳥の種類や数は少なかったけれども、まだ渡り始めの時期である。これから寒くなるのに従い、種類も数も増していくのが楽しみである。大きく広がる空と沖の方まで広がる干潟を前にして、野鳥観察の後に草はらで飲む酒は、実に心を満たしてくれたのである。