船橋・三番瀬の野鳥を見に行く(4)
飛び去るミヤコドリと餌を探すダイシャクシギ
3月30日 晴れ
8時35分に二俣新町駅に着き、駅前のコンビニで缶ビールを買った。今日の最大干潮時刻は12時10分だった。三番瀬に来るたびに、右手にトング、左手にビニール袋を持ち、青いジャンバーを着込んで海岸のゴミを拾っている人を見かける。おそらく三番瀬の干潟を守る人たちのグループと思われるが、このような人たちがいて三番瀬の美観が保たれているのだと思う。今度、話をしてみよう。
餌を探しながら接近しすぎて衝突を避けたミヤコドリ
三番瀬に到着した時、思ったよりも潮が引き干潟が拡がっていた。私は西側防波堤に上って観察を始めたが、ミヤコドリは約100羽が餌を探していた。ミヤコドリが足早に浅瀬の方に向かっている時は、獲物を捕らえたときである。集団で餌をとっているなかで、獲物を咥えて浅瀬に向かう個体はよく目立つのだ。獲物を捕らえたミヤコドリはウキウキ気分なのだろう。
今回も出会ったダイシャクシギ
ミヤコドリの集団の中に2羽のダイシャクシギが見えた。今回もダイシャクシギに出会った。稀にしか出会えないというのは、三番瀬に限っては訂正が必要だろう。度々出会える鳥である。ハマシギの群れは200羽ぐらいいるだろうか。汀線は徐々に沖のほうに後退していった。
一度見れば忘れられないほど冠羽が特徴的なカンムリカイツブリ
10時には大型の鳥は干潟から消えてしまったので、私は撮影を終えた。休憩場所にしている草はらに向かう途中で、防波堤の西側にカンムリカイツブリが波間に浮かんでいるのが眼に入った。カンムリカイツブリに出会うのは久しぶりである。この鳥の頭も個性的であり、一度見れば忘れられないほど冠羽が特徴的である。
30分で119個のシオフキガイが獲れた
今回は貝掘り道具を持ってきたので30分ほど貝を掘ってみることにした。獲れる貝は学名シオフキガイである。通称はバカガイと呼ばれている。いわゆる寿司ネタのアオヤギである。干潟の水が残っているところで堀った結果は119個だった。まだ潮干狩りシーズン前で、干潟が荒れておらず簡単に獲れるのだ。今晩の酒のつまみにしよう。堀ったシオフキガイはお昼ご飯が終わって神輿を上げるまで、近くの海水にほとばしておいた。
大量に収獲した貝を運ぶお年寄り
10時40分に草はらに座り、これから一杯である。ビールのプルトップを開けた。この時、野鳥観察や撮影者は15人。貝掘りは気温が暖かくなり、水は温んできたので一気に増えて58人。子どもづれの家族が目立ち賑やかだ。潮干狩り場もまだオープンしていないので、柵の中に入って自由に掘っている。今の時期はアサリが小さく、もっと沖の方に行かないと大きなアサリは獲れないだろう。中にはスコップで貝を掘り出している人もいる。貝を大量に収獲して帰っていく人たちも見受けられた。
三番瀬に野鳥観察と撮影者はいなくなった
11時30分になると野鳥観察と撮影者はいなくなった。干潟に残っているのは貝掘りの人たちである。随分人が増えた。天候も徐々に回復し暑くなってきた。これから気候が暖かくなるのに伴い干潟には人が増え、野鳥たちは沖に去っていくだろう。干潟に人が現れる前に、野鳥の観察と撮影をしなければならないと思う。
8日目
空は徐々に青空が広がってきていた。三番瀬に向かう歩道に垂れてくるヤナギの葉が、1週間前に比べて一段と緑が濃くなってきていた。植物の成長が早いことを実感する。三番瀬に着いたのは8時50分だった。その時の野鳥観察・撮影者はひとりだけだった。まだ潮が引いていなかった、潮は急速に引くはずである。双眼鏡で確認すると沖の方にスズガモやウミアイサなどがいるが、いつも干潟を賑わしているミヤコドリやイソシギなどは見ることはできなかった。
ユリカモメやミヤコドリの向こうを漁船が通る
撮影を開始する前に、毎回見かける青いジャンバーを着て海岸清掃をしている人と話をした。その人は左胸に“ふなばし海浜公園”のネーム入りジャンパーを着ていた。ボランティアではなく、公益財団法人船橋市公園協会の臨時職員だった。仕事内容は1年のうち10月〜3月までは公園内の植栽で木の枝や葉などを切っているが、4月からは潮干狩りに備えて海岸全体の整備をしていて、潮干狩りシーズンが終わると秋まで草刈りが続く、とのことだった。もちろん海岸清掃は1年を通して行なっているとのことで、その方は10年前の東日本大震災後から臨時職員として働いているとのことだった。
ユリカモメの群れに混じって餌を探しているミヤコドリ
東西約1kmにわたる三番瀬干潟は船橋海浜公園の名前で管理しているが、実際は干潟の中央が船橋市と市川市の境界になっており、遭難者が出た時は半分から西側は市川市へ通報し、半分から東側は船橋市に通報するとのことだった。私が干潟で遭難者が出るんですか?と質問すると、今までの経験では1年に1件くらいの発生率で、干潟でも胸長靴を履いている人が転ぶと長靴の中に海水が入り、泳げない人はそのまま遭難してしまう、とのことだった。考えてみれば、川でも胸長靴を履いて転がってそのまま水死するという事故は発生している。胸長靴ではなく、ウエットスーツを着ていれば問題ないんですがね、という見解だった。臨時職員は一応生涯雇用という形で、70歳までは無条件で働けるし、会社で上司にペコペコ頭を下げているよりはずっと自由であり、この仕事に満足している。しかし、野外の仕事なので体が丈夫で、野外作業に耐えられることが必要だし、植栽で木に登って落ちたら、その段階で仕事が終了するだろう、との見解も述べていた。明るく面白い人だった。
ダイシャクシギとミヤコドリ
西側防波堤の方に30羽のミヤコドリが舞い降りた。貝掘りに来た人たちも潮が引くのを待っている。ピューという甲高いミヤコドリの鳴き声が聞こえてくる。ハマシギやユリカモメも潮干狩り場に張ってあるネットに留まり、干潟が拡がるのを待っている。今回も2羽のダイシャクシギに出会った。2羽はミヤコドリの群れの中にいた。今回は干満差が大きいので10時30分には鳥たちは遥か沖の方に去っていった。
多くの人たちが貝掘りに来ている
貝掘りの人たちが続々とやってきていた。砂浜にテントを張っているグループもいた。バケツを持って次々に貝掘りにくる人がいるが、言葉は外国語の人が多かった。中国語を話していると発音でなんとなくわかるのだが、全くわからない発音をしている人もいた。ま、今の時期は無料なので、貝掘りにやってくるのだろう。撮影途中で貝掘りに来ていた子どもづれの人と話すと、掘った貝の砂の出し方について質問されたので、その方法を教えた。
食事中のハマシギの群れに舞い降りるハマシギ
質問に答えた内容は、貝掘りで獲った貝を砂出しせずに食べると、砂が口に残り食べられたものではない。一般的には海水と同じ塩分濃度の水に一晩浸しておけばいいのだが、獲った日に食べる場合は、貝を蒸して口が開いた状態の殻から身を外し、水でよく洗えば砂出しは終わりである。貝を蒸した時に貝が含んでいた海水が身のエキスと一緒に出るので、コーヒーフィルターかキッチンペーパーで濾し、温めなおして貝の身を入れてミツバの葉を散らせば美味い潮汁になる。
40分間で191個のシオフキガイが獲れた
私は10時30分に撮影を終えた。昨日は干潟の手前の方で貝掘りをしたが、今回はもっと沖の方に出てみた。掘ってみたけれども、やはり出てくる貝はシオフキガイだった。地元の年配の方にホンビノスガイが獲れる位置を聞いてみると、もっと沖の方に行かないとホンビノスはいないとのことだった。私が獲っていたところよりも50mほど沖で胸長靴を履いて貝を獲ってる人がいた。その人を指さして、あそこあたりからホンビノスが取れるんだ、と言っていた。私は昨日よりも多く獲れたので40分で終了した。前回と同じでシオフキガイのみだったが、今晩の酒のつまみにしよう。帰宅して数を数えたら191個あった。貝から身を取り出しネギを刻んで一緒に煮立て、割卵を回し入れて卵とじと潮汁にして食べたが、とても美味かった。
マテガイを捕まえたミヤコドリ
干潟で移植ゴテを使いながらマテガイを獲っている人がいた。マテガイは縦長の2枚貝で酒蒸しにすると抜群に美味い。以前、幕張の浜でマテガイを獲っていた人を見たことがあるが、やり方が分からなかった。今回獲り方を見ていると、干潟を上から見ただけではカニの穴もマテガイの穴も判断がつかない。それで移植ゴテで砂を2〜3cmの深さでさらうと、そこに出てきた穴の形によって、カニの穴なのか、マテガイの穴なのかを判別するのである。マテガイの場合は細長い六角形のような形をしている。その穴に食塩を振りかけるのである。食塩を振りかけることによって、穴の中の塩分濃度が一気に濃くなり、穴の中に住んでいるマテガイがびっくりして飛び出してくるのを、待ってましたとばかり捕まえ、徐々に徐々に引き上げるのである。その時に焦って力任せに引っ張ると、マテガイの下部が穴の中で膨らんでおり途中で切れてしまう。引き抜くときは徐々に徐々に騙しながら引き上げるのがコツだと教えてくれた。今回見ているとマテガイの大きさは、酒のつまみにするのには小さかった。もう少し大きいマテガイだったら美味いつまみになるだろう。今度自分でもやってみよう。