薫風爽やかな袋田の滝
新緑に映える袋田の滝
「5月の朝の新緑と薫風は私の生活を貴族にする」とは萩原朔太郎の言葉だが、それを実体験するために奥久慈の袋田の滝に妻とともに出かけた。
袋田の滝は「日光・華厳の滝」「熊野・那智の滝」とともに日本3大瀑布に数えられている有名な滝である。私にとって袋田の滝は以前から出かけてみようと思っていたのだが、なかなか訪れる機会がなく今回初めて訪れてみた。300円の観瀑施設利用料を払い300m程のトンネルを歩いていくと突然新緑に囲まれ水量豊かに流れ落ちる滝が現れた。アッと驚きの声をあげる。周りの景色を遮断されたトンネルの先に突然滝が登場するので驚きの声は誰からも上がってくる。上手い演出だと感じながらも滝のスケールは予想していたよりもはるかに大きく見事な滝だった。友達同士であったり恋人同士であったり家族連れであったりしているその一人ひとりが滝の姿に感動しているのだ。
観瀑台から望める滝は4段ある滝の1番うえの滝は角度の関係で見えない。下の3段が新緑に映える。滝の正面から十分に滝を堪能したあと、1番うえの滝を見るために吊橋をわたり月居山ハイキングコースになっている約200m程の急階段を登った。上りきると最上段の滝が望めたが思ったより低い滝である。新緑の中を吹き渡ってくる薫風が快い。萩原朔太郎ではないが新緑の自然の中に身を置き、爽やかな風を体感することは貴族云々を別にしても確かに人生を豊かにすると思う。
5月の連休でおまけに快晴ときているので観光客は非常に多い。滝川の流れの両岸に食事処やお土産屋が連なっている。ぶらぶらと遊歩道を歩きながら覗いてみると、鮎の塩焼き、蒟蒻と芋の団子、湯葉上げ、蕎麦、などが目につく。
旅の楽しみは土地の食べ物と温泉でもある。透き通って癖のない単純重曹温泉が袋田温泉である。滝近くの「豊年満作」ホテルの露天風呂に入ることにする。日帰り入浴は休憩も含めて1000円である。早速フロントで料金を払い屋上にある露天風呂に入った。赤やピンクのつつじが咲き、熊蜂が蜜を求めて飛び交うのを見ながら透き通る湯にゆったりと身体を浸す。空は雲ひとつない快晴で周りの新緑が本当に眩しく美しい。若葉というのは最初は白っぽい柔らかな色をしているがたちまち黄緑色から緑色の度合いが増して新緑となる。山を見るとさまざまな柔らかい緑が入り混じっている。それが美しい5月の山だ。
風呂上りは勿論ビールだ。ツマミに鮎の塩焼きを頼み、地ビールを飲んでみた。喉元を通る時に軽い感じがした。2時間ほど休んだあと袋田駅に向かって滝川沿いの道を歩いた。つつじがいたるところで花を咲かせ、淡いピンクに縁取られた白いリンゴの花も沢山咲いていた。5月は新緑以外に花の季節でもある。