富士山山麓一周トレッキング・その1

富士山駅→忍野八海→山中湖→篭坂峠→御殿場→桜公園→富士本屋旅館

 

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山中湖南側湖畔・湖山荘キャンプ場(1日目)

 

 富士山が世界文化遺産に登録されたことを契機に富士山を訪れる観光客が増加し、中高年者をターゲットにした富士山山麓一周トレッキングなるものが各旅行会社で企画され大人気を呼んでいる。冨士山麓をぐるっと回ると約150kmあり、それを日帰りで12回〜17回に分けてリレー形式で回ったり、あるいは1泊2日の行程で8回〜9回に分けて回るトレッキングである。私もテント泊で計画してみた。富士急富士山駅(旧富士吉田駅)をスタートし、時計回りに1日平均20kmを歩く7泊8日の日程で歩くことにした。

 

1日目、9月3日:水曜日 曇り

幕張駅→新宿駅→新宿高速バスターミナル→富士急富士山駅→北口本宮浅間神社→忍野八海→山中湖湖山荘キャンプ場

 

新宿発7時10分発の始発山中湖行高速バスに乗るつもりでバスターミナルに行ってみると満席!平日なので予約なしでも大丈夫だろうと思っていたらすっかり思惑が外れてしまった。次発の7時40分もキャンセル待ちの表示だったが発券カウンターの受付嬢に「一人なので空きはないのか」問うと、端末機を操作し一人だけ空席があるとのこと。ラッキー!というわけでバス席を確保。今回のトレッキングはテント泊のため天候見合いで実施するか中止するかぎりぎりの昨日の段階で判断したため予約を取っていなかったのだ。乗車席が確保できてホッとした。バス代金は1750円で安い。バスの発車時刻まで間があるので朝食を食べに近くの松屋に入り、ビビンバ丼と生野菜を食べた600円は安いと思った。

 

 2時間弱の乗車時間で富士急ハイランドに到着すると乗客の大半が下車してしまった。殆どの人が遊園地行きだったのである。富士山駅では2人が下車した。これから徒歩で20km先の山中湖キャンプ場を目指す。週間天気予報では前半3日間が曇り時々晴れ、後半4日間が曇りとのことで時折り薄日が差すまずまずの出だしだった。残念ながら富士山はスッポリ雲に覆われ裾野が少し見える程度である。手元の5万分の1地図を頼りに50分ほど歩くと北口本宮浅間神社に出た。旅の安全の意味を込めてお参りしていくことにした。高く太く聳える杉木立の参道を歩いていくと日本一の真っ赤な木造鳥居が建っていた。立派な鳥居だと思った。本殿は武田信玄が再建したという。境内には学校の揃いの真っ赤なTシャツを着た高校生の集団がお参りしていた。平日にもかかわらず結構な人数の参拝客が目についた。神社境内の右奥に北口登山道口がある。いわゆる吉田口登山道の出発点である。富士スバルラインが開通した以降は殆どの登山者は5合目まで車で登ってしまうが、それ以前は全ての修験者、冨士講者、登山者はここからスタートし富士山山頂3776mまで登ったのである。

 

 国道138号線を南下し忍野村入口から忍野八海を回るコースに入った。私は忍野八海を訪れるのは初めてなので富士急富士山駅の観光案内所で貰って来た見学マップを参考にして歩いた。私よりも年配の方々が沢山訪れていた。お釜池、銚子池、濁池、湧池、鏡池、菖蒲池と6つの池を回ったところで鏡池そばのベンチに座りローソンで買ってきた握り飯と茹で卵、ポカリスエットで昼食にした。池の水は透き通っており金色と黒色の大きな魚が悠々と泳いでいた。鱒の仲間で大きさは40cm〜50cmぐらいあるだろう。

 

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忍野八海の鏡池で泳ぐ大きなトラウト(鱒)

 

 ファナック通りを南下し山中湖を目指した。緑の針葉樹林の中に建つ黄色の原色に塗られた建物群が目立つ。社用車も黄色に塗られFANUCという文字が赤く飛び出す。広大な敷地を持つ会社である事は通りを歩いていて分かったが何の会社なのか知らなかったので帰宅してからネットで調べてみたら忍野村に本社を置く工作機械用数値制御では世界1位、産業用多関節ロボットでは世界3位という圧倒的なシェアを持つ世界企業であった。その会社が富士山の裾野の緑の森の中にあったのである。

 

 山中湖湖畔に出たところで休憩し明日の日程のことを考慮し当初予定していた湖の北側にある「みさきキャンプ場」から西側にある「山中湖村村営キャンプ場」に変更した。1時間ほど歩いて村営キャンプ場の受付に行き宿泊手続きを取ろうとすると、キャンプ場は予約制で運の悪いことに私以外には当日の宿泊者がおらず村職員の宿直者が予定されていないため安全管理上の保障が出来ないとの理由により宿泊を拒否されてしまった。まいった!とはこのことで、事情は飲み込めたので村営キャンプ場を諦めて手元の地図により湖の南側にあるキャンプ場を探すことにした。最初に出会ったのは小田急山中湖フォレストコテージオートキャンプ場だったが係員が忙しそうに客対応していたので次のキャンプ地を目指した。次に出会った明るい感じの湖山荘キャンプ場の受付に行って宿泊可能かどうか訊ねると1泊1000円でオーケーと言うので宿泊手続きを取った。ここもオートキャンプ場だったが左隣のサイトに車1台にテント2張りの外国人グループが既に滞在していた。右隣りには若者3人がバンガローで宿泊していた。私は湖水から10m辺りの砂地にテントを張り、売店に行って缶ビールと缶チューハイを買ってきた。鏡のように静かな湖水の上を白鳥が一羽ゆっくり泳いでおり、時たま長い首を水に潜らせ逆立ちのようなことをしている。何か餌でも探しているのだろうか? キジバトの鳴き声が聞こえてくる。この声を聞くと天候が崩れてくる前兆なのだ。どうも明日は雨だと知らせているようだ。夜中にテントの上を叩く雨音を聞いた。1日目の費用は、交通費、食費、酒代、宿泊費を合わせて4750円だった。

 

2日目、9月4日:木曜日 曇りのち小雨

山中湖湖山荘キャンプ場→篭坂峠→天然温泉・天恵の湯→東口本宮浅間神社→桜公園→富士本屋旅館

 

 朝、5時に目が覚めた。昨日は疲れていて17時にシュラフに潜ったので12時間寝たことになった。

 

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138号線を走る陸上自衛隊の車両

 

起床後1時間で荷造りを終えて6時にキャンプ場を出発した。1時間坂道を登っていくと山梨県と静岡県の県境である篭坂峠に着いた。気温掲示板は16℃を表示していた。昨晩のシュラフの中では暑いぐらいだったのでザックを背負って歩くのには丁度いい気温だ。峠で一休みした後は下り坂だ。現在の国道138号線は、昔の甲斐の国(山梨)から駿河の国(静岡)に出る基幹道路だった。それは現在でも変わっておらずひっきりなしに大型車や自家用車が通行している。カーブが多いために道路の右側を歩いていくが交通量の多さに神経を使う。陸上自衛隊の車両も頻繁に出会った。演習をやっているようで腹に響く砲弾の発射音が絶え間なく響いている。冨士山麓には北富士演習場、東富士演習場、富士学校、富士病院などの自衛隊関連施設があり日常生活の中に自衛隊の姿がある。

 

 8時半に富士パノラマラインを降り切り天然温泉・天恵の湯の前のセブンイレブンで朝食のための握り飯と熱湯サービスのマルちゃん赤いきつねうどんを買った。温かいものが腹に入ると元気が出てくる。天恵の湯は夏季の7月8月は9時から営業開始だが9月からは10時からの営業となっており食事を兼ねて大休憩となった。今日も朝から曇り空であり富士山は雲の中で、峠から降りてくる時の風景は霧が下から上がってきて益々天候は下降気味となっている。道路の脇には桃色のカワラナデシコ、斑なホトトギス、真っ白なセンニンソウ等の花が目につく。いずれも可憐な花たちだ。

 

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センニンソウの花

 

 天恵の湯の玄関先で営業開始を待っていると9時55分に開けてくれた。券売機で入湯料金の900円チケットを買い受付でロッカーキーを受取り1階の風呂場に向かった。風呂は内風呂と露天風呂が2つあり、熱い方の露天風呂に入った。温度は36,9度との表示だったが気持ちよかった。湯上りにビールを飲もうと3階のレストランに向かったが営業開始は11時からなので自動販売機を探したが清涼飲料水やジュース類はあるが缶ビールはなかった。売店でも日本酒は販売していたがビールは売っていなかった。残念!しかたないので次の目的地に向かう。

 

 「道の駅すばしり」が目にとまったので立ち寄ってみた。地ビールがあった。470円で瓶ビールを買い、栓を抜いてもらってラッパ飲みで飲んだ。渋みの効いた美味いビールだった。上下の繋ぎを着た埼玉自動車学校の生徒たちが20人ほどドライブの途中で立ち寄ったらしく集団でたむろしていた。富士の自然がもたらす恵みの湧水を利用した「富士山のおいしい水」の給水場がベンチの横にありペットボトルで汲んでいく人も見受けられたので一口飲んでみたが冷たいビールを飲んだ後だったので生ぬるくあまり美味いとは思わなかった。

 

富士須走登山口の看板の横に東口本宮浅間神社が鎮座していた。富士吉田の浅間神社よりも規模は小さかった。杉木立の中を通り表鳥居に回ってからお参りすることにした。この鳥居には「不二山」という文字が掲げられていた。境内には10人ほどの参拝客が訪れていた。本殿の欄間に獅子と象の2体ずつの彫り物が左右に掲げられているが、よくみるとその口元は阿吽の形をしていた。狛犬や仁王像では阿吽の形は一般的だがそれ以外にもこういう形があったとは初めての発見だった。

 

 2日目の宿泊場所はコース上にテント場がないため富士本屋旅館に素泊まりとした。14時30分に旅館に到着したが玄関は開いていたが留守だった。近くのセブンイレブンで夕食と翌日の朝食とワンカップを3本、缶ビールを1本買って旅館に戻ったがまだ留守だった。ネット予約時間は16時となっていたので近くの桜公園に出かけた。桜公園は2か所に分かれておりアスレチックや子どもの遊具が設置されている場所と道路を挟んで花壇や見晴休憩所や電子基準点が設置されている場所とに分かれていた。私は電子基準点というものの存在を初めて知った。平均20km間隔に設置され日本全国では約1200個所あるという。GPSを利用し地震や火山活動に伴う地殻変動の監視を行うものだという。1時間ほどして旅館に戻り玄関横の応接間に入り明日のコース確認をしていると旅館の女将さんが戻って来た。

 

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桜公園内の電子基準点

 

 今回のルートは山の中のルートではなく車が通る道路沿いに歩いているため食料は事前に準備せずコンビニで買うことにしている。今回のルートで最もハードなのは明日、明後日の5合目まで登り、水平に歩いていく20km〜25kmのコースである。それにテント泊のため最大の敵が雨である。スタート前日の週間天気予報から計画実行を判断したが残念ながら天候は下降気味と判断せざるを得ない。寒冷前線が日本列島を通過するが太平洋の高気圧の影響で動きが遅く不安定な気圧配置となり西日本東日本ともに大雨注意報が発令されているのだ。2日目の費用は、温泉入浴、食費、宅急便、酒代、宿泊費を合わせて9070円だった。

 

3日目、9月5日:金曜日 小雨

富士本屋旅館→桜公園→御殿場駅→国府津駅→東京駅→幕張駅

 

 昨夜から降り出した雨は朝になっても止むことはなかった。天候不順のため今回の計画を打ち切ることにした。次回は再びこの場所からのスタートとなる。桜公園6時40分のバスで御殿場駅に出て幕張の自宅に帰宅したのは10時30分だった。3日目の費用は、交通費の2970円だった。

 

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NHKドラマ『芙蓉の人』の主人公:野中到・千代子顕彰祭のポスター

 

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