冷静と情熱のあいだで
フィレンツェのドゥオモのクーポラ
「芸術の都」あるいは「花の都」といわれているフィレンツェは曇り空の下でもやっているように感じられました。
「ミケランジェロ広場」と命名された広場の中央にブロンズ像の羊飼いの青年・ダヴィデはフィレンツェ市街を見下ろす丘の上に立っていました。天才ミケランジェロが26歳の時に2年の歳月をかけて大理石から掘り出した4mを越す大きな大理石像の実物像はアカデミア美術館に展示されていますがブロンズ像を見ただけでも素晴らしさは実感できます。
丘では冬の季節が過ぎ去り若葉が芽吹き始め、中国桜が咲き出し始めています。眼下には静かにアルノ川が流れ、ダヴィデの視線の先にドゥオモのクーポラが建っています。
「彼女の30歳の誕生日にフィレンツェのドゥオモのクーポラで待ち合わせる」という10年前の約束に何不自由なくアメリカ人の富豪と生活しているかつての恋人は果たして来てくれるのだろうか? 竹之内豊とケリー・チャンが共演した映画『冷静と情熱のあいだで』のクライマックスはフィレンツェのオレンジ色の丸屋根・クーポラでの主人公と恋人との再会でした。現実にはありえないおとぎ話ですが、そこが映画のタイトルとなっている所以でしょうか。
古いながらも整然とした街並みと主人公が自転車で走った石畳の路地裏。映画のシーンの数々が鮮やかに蘇ってきますが、今、私はそこに立っています。ルネッサンス発祥の地・フィレンツェにやってきたのです。
シニョリーア広場に立つダヴィデ像
それにしても、白、緑、赤の3色の大理石を使って建設された圧倒的な存在として迫ってくるドゥオモは圧巻です。このような素晴らしい宗教建築を見るにつけ宗教が人間の精神に与える影響力を改めて考えさせられます。ドゥオモの中に入ってみました。とても高い天井でした。ロウソクには火が燈され宗教画が描かれています。時間があればクーポラまで登ってフィレンツェ市街を一望の下に見下ろしたかったのですが残念ながらその時間はありませんでした。