フェワ湖内のバラヒ寺院を訪ねて

 

バラヒ寺院前の案内看板

 

 プーンヒルトレッキングの最終宿泊地であったオーストラリアンキャンプ場を出発し、バスが通るバグルン自動車道のカーレまで下った。前年の11月に出かけたアンナプルナ内院トレッキングでも同じ道を下ったので5ケ月ぶりの道だった。カーレには30分ほどで到着し、バスに乗車しポカラに戻った。ホテルに入るのには早すぎるので国際山岳博物館に向かった。国際山岳博物館はヒマラヤ山脈の地質は勿論のこと、様々な民族、民俗、宗教、美術、登山、雪男などを一堂に紹介展示した博物館で各展示物に興味は尽きなかった。1時間の短時間見学だったが再訪したいと思った。

 

 昼食にビールを飲みながら代表的なネパール料理のダルバート・タルカリを食べた後、バラヒホテルにチェックインした。バラヒホテルはトレッキングのスタートでも利用したホテルで、中庭にプールが設置され、石造りの客室棟が並んでいるリゾートホテルである。荷物を部屋に置いたあと早速プールに飛び込んでひと泳ぎした。9日間に渡るトレッキングでかいた汗が流されるのを感じた。プールには小学3年生くらいの、まだ泳ぎが巧くない女の子がいたので手を取って泳ぎを教えてやった。女の子は喜び、傍で見守っていた両親も満足そうな笑顔だった。

 

プールでひと汗流したあと、ホテルから500m程の距離にあるフェワ湖に出かけた。ネパールの観光書物を読むと必ず登場してくるのはネパール第2の都市である観光地ポカラであり、そのポカラに隣接してフェワ湖がある。当然のことフェワ湖には大勢の観光客が訪れる。このフェワ湖越しに望むマチャプチャレ尖峰を中央に置き、アンナプルナ・サウスからアンナプルナT峰、V峰、W峰、U峰、と連なるアンナプルナ山群と、さらに右に連なるラムジュン・ヒマールの白き峰々が湖水に逆さに映る姿はネパール観光の景勝地として横長のポスターとなり売られている。私もフェワ湖を訪れた際に100ルピー(日本円換算で100円)で購入した。誠に美しい景色である。

 

フェワ湖の中の島に渡るボート着き場

 

フェワ湖畔に出ると中の島が見える。橋は架かっておらず船着き場から手漕ぎボートで渡る。料金は往復で100ルピー(日本円換算で100円)となり、ライフジャケットを着込んで乗りこむ。ライフジャケットは帰りの切符代わりにもなっていた。湖岸から中の島との距離は200mほどだろうか。島の中央に四角垂の屋根を被せた2階建てのバラヒ寺院が建っていた。寺院の周りを取り囲むように手摺が取り付けられており、手摺には灯明台が設置され鐘が吊り下げられていた。寺院の白壁には赤い線模様が施され、1階も2階も黒屋根の四方の角に黒い鳥形が付けられ、庇には金色のお面が1m間隔に取り付けられていた。お面をよくみるとニコニコ笑っているものや鋭く睨みつけているものがある。人間と同じだ。祀られている神様を拝むためには階段を下りて中央の入り口から入るわけだが、日本の神社にある狛犬のように入り口の左右に兜を被ったような真鍮製の犬?みたいな門番が置かれていた。門番の顔や胸は参拝者に塗られたであろう塗料によって赤く染まっていた。参拝者は靴を脱ぎ素足になって参拝していたので私も靴を脱いで中に入った。奥行きは1mほどで中央に石造りのドーム型のものが置かれてあり、その中に形がはっきりしない赤く染まった6本ほど手のある神様がいた。

 

バラヒ寺院に祀られている神様

 

 私はバラヒ寺院に祀られている神様が何経の神様なのか知らないけれど、ネパールの各地を旅して感じるのは朝晩の習慣などに祈りの場面に出会うことが多い。ネパールの建物は日本の神社仏閣に比べると一見粗末のように思えるが、ネパールの人たちは心の中で神様を大切にしているように感じるのだ。

 

 中の島から戻り、フェワ湖畔をそぞろ歩きに散歩した。チベットから来た人たちが風呂敷を広げた上にお土産を並べていた。ネパールトレッキングで度々見かける風景だった。オープンガーデンでビールを飲んでいる人たちにも出会った。私たちは喉が渇いたので喫茶店?のような所に入った。いろいろなジュースや生菓子のようなものが売られていた。飲み物は全て注文を聞いてから直接果物をジュース絞り器に入れて、私たちの目の前で作る天然100%ジュースである。私たちはマンゴージュースを頼んだ。父親が大きなナイフでマンゴーの皮を剥き、小学校高学年と思われる年かさの息子がジュース絞り器に入れてマンゴージュースを作ってくれた。砂糖などは入れてないが、とっても甘みのある美味しいジュースだった。1100ルピーだった。

 

マンゴージュースを作ってくれた少年とお母さん

 

 空はあいにく晴れてはおらず、フェワ湖にアンナプルナ山群は映ってはいなかったが、私たちは満足して宿泊するバラヒホテルに帰った。