世界最大のモスク

 

 

シャー・ファイサル・モスク(パキスタン:イスラマバード)

 

 パキスタンの首都イスラマバードを訪れるのは昨年に続いて2度目である。今回も山旅の終わりに首都の市内観光のひとつとしてマルガラ丘陵の麓にあるシャー・ファイサル・モスクを訪れた。シャーは偉大な、ファイサルはモスク建設資金を提供したサウジアラビアのファイサル王の名前、モスクは礼拝堂、というものだ。モスクのデザインは公募採用され、イスラム教が発生した砂漠のべドウィンのテントと未来を象徴するロケットの尖塔、屋根の中央にイスラムの象徴である金色の月を掲げている超近代的なデザインが目を引く。建物の周りは全て大理石が敷き詰められていて、モスクに入るためには入口で靴を脱がなければならない。靴を脱いだあとは素足でも靴下を履いたままでもいいのだが、私たちが訪れた7月18日は真夏の17時頃だったが、気温は40度前後であったため外の大理石の上は太陽に熱せられた暑さで素足ではとても歩けない状態だった。

 

 昨年はモスク外観の観光だけであったが、今年は現地ガイドのマリックさんの努力によって内部にも入ることができた。マリックさんは警備員に日本から来た観光客なので内部を見学させて欲しいと頼むのだが、最初はけんもほろろで、全く相手にされず、早く帰れ、というような警備員の対応であった。しかし。マリックさんは2度、3度、粘り強く交渉し、ついにお祈りの時間が終わったあとで裏口から内部に入っていいことになり、私たちは関係者通用門からモスク内部に入ることができた。マリックさんの一通りの説明のあとは1分間だけだったが内部の照明を点灯してくれて、カメラ撮影も許可してくれた。

 

 天井中央から太陽アラーを意味していると思われる大きな黄色のシャンデリアが吊り下げられており、正面にはブルーの宝石でステンドグラスのように輝いている文様が鮮やかだった。月光でもお祈りできるように採光には十分配慮され、照明を点けなくても内部は十分な明るさであった。床には青色の絨毯が敷き詰められており、このモスクの礼拝堂に入ることのできる人数は15000人で、周りの大理石の部分には85000人、合計100000人が一度に礼拝できるという。礼拝堂内の後部に一段と高い部分があり、そこは女性が礼拝する場所であり、絨毯が敷かれている部分からは女性たちの姿を見ることができないような設計になっている。

 

 礼拝堂の窓際には所々にイスラム教に関する書籍が本棚の中に整理され、本棚の前には机や椅子も置かれていた。また、コーランが大きな本となってガラス標本のような棚に展示されていた。中に書かれている文はコーランそのものだという。イスラム教徒は10年前の21世紀初頭に人類の5分の1を締め、その後ますます増大し2025年には世界人口の3分の1になるだろうと推測されており、現代社会において最も活力ある宗教であることは否定できない事実だと言われている。無宗教の多い日本人にはピンとこない話なのだが全世界を取り巻く宗教を考えたときは現実的事実なのだろうと思う。

 

 それでもイスラム教内部の勢力争いによって4月にパキスタン・イスラム共和国内でもシーア派とスンニ派とが衝突し、山旅への発着空港となったギルギット空港は封鎖され、カラコルムハイウェイも封鎖されてしまった。当然、7月の山旅も心配されたが治安はほぼ回復したという情報に基づいて、今回参加したが移動するバスに小銃を肩にかけた警官が護衛のために乗り込んでくるなどは常態化していた。

宗教内部の対立に留まらず、新しいものが進出していく時、旧態との衝突は少なからず発生するものだから他宗教との間でも勢力拡大に伴う軋轢と衝突は今後頻発するのではないだろうか。そうなるのが必然だと思う。

 

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