海老川の夜桜

 

 3月11日の東日本大震災後、世の中は自粛ムードが拡がり花見も軒並み自粛である。花見の名所である上野公園の人出もまばらであることが藝大に通っている娘からも漏れてくる。『房総桜10選』に挙げられている船橋市の海老川沿いの桜を観に出かけてみた。

 

 桜はほぼ満開だった。金曜日の昼間で曇り空、風が強かったせいか人出は少ないが、それでも桜の下で花を見上げるグループがあちらこちらに散見できた。屋台はいつものように出ていたのが確認できたので翌日の土曜日に家族で夜桜見物に出かけることにした。

 

 東船橋は結婚したあと新婚生活で6年間住んだ思い出のたくさん詰まった土地である。愛も大も東船橋に住んでいた時に生まれた。アパート近くの宮本台公園で子どもたちは遊んでいた。海老川の桜も小さな子どもたちと年ごとに訪れていた場所だった。

 

 当時から約20年を経過した桜の木々は大きく育ち、枝ぶりも見事な桜になっていた。その桜のトンネルの下を、モツ煮込み、タコ焼き、焼きそばを食べ、ビールを飲みながらそぞろ歩いた。小雨が降っていたが傘をさすような雨ではなかった。毎年明るく輝いていた川沿いの雪洞は取りつけられていなかった。指定場所のゴミ収集もなかった。それでも薄暗い中を花見客は歩いていた。

 

 翌日、日中に妻とともに再度、海老川沿いの桜を観に出かけた。私にとっては3日続きの海老川詣である。桜のトンネルの下は暖かな土曜日のためか家族連れでごった返していた。屋台も賑わっている。一升瓶を並べ賑やかに宴会をしているグループもいる。これでいいのだ。大震災で被災した方々は本当に大変だとは思うが、敢えて自粛することなく日常通りに淡々と生活していく冷静さが必要なことなのだと思う。