藝大デザインプロジェクト
作品成果発表展に展示紹介された「toei drops」
3年前の2009年から東京都交通局と東京藝術大学大学院デザイン科修士課程1年生が連携協力し、『藝大デザインプロジェクト』という形で藝大生が東京都交通局に対し新しい都市交通のあり方について総合的デザイン提案を行なっており今年が最終年度になります。
東京都交通局側では大学講義への職員の派遣、学生の職場見学会を実施し、学生側ではデザイン科内のグラフィック、プロダクト、映像、空間などの専門領域を研究中のメンバー30人が横断的に相互編成され、1チーム6名で5グループを構成し次の5つの提案を行いました。
・38年目のお色直し 都電荒川線----A班
荒川線でしか体験することの出来ない特別なお花見
・アラカワバラトレイン----B班
沿線に咲くバラを主役に捉え、花と人が支える荒川線をプロデュース
・日暮里・舎人ライナー----C班
「そらかぜ」という愛称を付け、全面的にリデザイン
・toei drops----D班
自分の知らない東京を開拓。人と街が繋がるきっかけに“toei drops”
・地下借景----E班
地上と地下を時間で繋ぐ新しい街の玄関としてのホームをデザイン
プロジェクトは与えられた問題を解決するものではなく、学生たちが地下鉄、バス、路面電車、新交通システムなどの交通局の現場をリサーチし、気付いた点や問題点を抽出整理したうえで問題解決を提案するもので、こんな形があったらいいなぁという気持ちを込めたデザイン提案です。私が所属したのはD班で「toei drops」の提案を行いました。
10月14日に発表会が行われ、10月18日〜20日で作品成果発表展が行われました。発表会でのD班のプレゼンターは私が行いました。交通局局長を始めとした幹部のみなさんが出席した発表会では最初少し緊張しましたが自分たち6人が考え手作りした作品提案でしたから、その内容を知っていただきたいという思いで発表しました。
「toei drops」のコンセプトは、“無料のアメといっしょに、駅近辺のオススメスポットを紹介する都営の新サービス”です。お客様はいつも利用する駅の周辺情報はよく知っていますが、隣駅の情報は知らないことが多いものです。そこで最寄りのよく使う駅からちょっと立ち寄れる両隣のお薦めスポットを6種類に色分けして情報提供し、お客様のその日の気分によって色を選択すると、選択された色により駅付近のお薦めスポットが小さな案内パンフレットとして飴玉ドロップと一緒に手元に紹介されるというものです。“便利”なサービスもよいのですが、人と街と都営が繋がるきっかけをつくる都営ならではの新サービスになればと考えています。このサービスを通して自分の知らない東京を開拓していってもらいたいという想いが込められています。「toei drops」は自動販売機形式に納められており、お客様は1日1回無料で利用でき、駅近くのお店が宣伝広告に利用する場合は宣伝広告料金を払うことで新しい宣伝媒体となります。
なぜ飴なの?
作品成果発表展は、東京青山の「クレアーレ青山アートフォーラム」で開催されました。会場には14日の発表会に提示した実物が展示され、発表会当日のプレゼンテーション模様がビデオ紹介されました。私のお父さんとお母さんは18日・火曜日の午後に見に来てくれました。私は午前中会場にいたのですが午後から授業がありましたので学校に出かけたため両親には会えませんでした。両親は一つひとつの発表作品と1時間ほどのプレゼンテーションビデオも見たとのことでした。会場の出入口に設置されている「あなたが選ぶ一番印象に残った作品」の投票箱には二人揃って「D」を投票したとのことでした。
作品を作っているときに苦労したのは作品対象とした都営地下鉄大江戸線沿線の名所旧跡や新しいスポットを探しだし色分け分別したことと、実際に食べられる6色ドロップの飴を作成したことです。飴のデザインを考えお菓子屋さんに交渉に行きイメージ通りの飴を作ってもらいました。全てが手作りなので発表会までのスケジュール管理も大変でした。東京都交通局との「藝大デザインプロジェクト」は今年度で終わりますが、私にとってこのようなプロジェクトに参加でき、その中でお互い相談し合いながらひとつの作品を仕上げて発表できた経験は良かったと思っています。