道東を撮るー1、タンチョウヅルに出会って
求愛ダンス
2月8日〜13日までの6日間で『冬の道東を撮る』という野生動物の観察・撮影旅行に出かけました。撮影した写真は約8000枚ですが、その中から100枚ほどを選んでレポートを書こうと思います。
レポートの1回目は「タンチョウヅルに出会って」です。
丁度、北海道に気象観測史上最強の寒波が押し寄せてきた時期と重なり、極暖下着、ダウン、手袋、靴下などは2枚か3枚重ねにし、キツネの防寒帽、ネック、レッグ両ウォーマー、ホッカイロなど防寒対策の旅ともなりました。
おまけに釧路空港の天候判断で30分の遅れ、搭乗ゲートは変更となり、釧路空港が強風のため着陸できない場合は、羽田空港に引き返すか、新千歳空港に変更着陸、という条件付き運行でした。運よく釧路空港に着陸できましたが着陸時の飛行機は強く揺れ、無事に着陸した時には乗客から拍手が沸き上がっていました。
旅行会社の添乗員と共にタンチョウヅル観察のために鶴居村に向かいました。私は釧路湿原を訪れたのは2回目で、25年前の1回目はタンチョウヅルには出会えませんでしたが、今回は沢山のタンチョウヅルに出会いました。特別天然記念物で絶滅危惧種にも指定されているタンチョウヅルは1年を通して主に北海道東部に棲息しています。
2000年に81歳で亡くなった伊藤良孝さんを中心に地域の方々が酪農をしながらひとつがいのタンチョウヅルから保護活動を始め、タンチョウヅルを絶滅の危機から救い、伊藤さんが亡くなった後は牧場を譲り受けた日本野鳥の会が、『鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ』のネイチャーセンターを拠点に、普及教育活動・繁殖地の保護・採食地づくり・調査研究・冬の給餌活動などを続けています。
現在、タンチョウヅルは約1500羽までに個体数を回復してきましたが、繁殖地が偏ると鳥インフルエンザ発生時の影響が甚大になるため、繁殖地を分散する取り組みが開始されています。
気高く美しいタンチョウヅル
初めて肉眼で見たタンチョウヅルの姿は本当に気高く美しいものでした。白と黒の2色に色分けられたスラリとした体形と目立つ頭部の赤というシンプルさが、より一層と美しい姿を際立たせ、何時まで見ていても見飽きませんでした。特に編隊を組んで大空を舞う姿は見事なものです。
日の出とともにねぐらから飛び立つタンチョウを見ようと4時にホテルを出て観察する雪裡川に架かる音羽橋まで出かけましたが外気温は−28℃でした。−28℃という気温は、私の70年の人生体験では一番低く、自分の吐く息が睫毛に纏わりつき白く凍りました。
日の出前の6時から日の出後の7時半まで橋の上でタンチョウの飛び立つのを待っていましたが見ることは出来ませんでした。ホテルに戻るときに音羽橋上のカメラマン数を数えたら123人でした。
寒さが厳しいので川沿いの木々の枝には冬の華である霧氷が花を咲かせ、朝日が射すと薄桃色に色付き、あたかも桜の花が満開のような美しい景色となっていました。川からはケアラシ(気嵐)という川の水が蒸気となって霧が発生する現象が見え、幻想的な景色となりました。その中で川の中州に佇んでいるタンチョウヅルの群れが見えましたが、私たちが滞在した時には飛び立つことはありませんでした。
河川敷の雑木林の中にエゾシカがジッと私たちを見ていました。音羽橋からツルたちが眠る場所までは安眠を妨げないため、10月1日〜3月31日まで立入禁止の表示と鎖が張られていました。水辺では1匹のミンクが動いており、近くに巣穴があるようでした。
冬の華が咲く雪裡川の中州で休むタンチョウヅル
翌日朝の気温は−24℃でした。再び音羽橋まで出かけましたが、前日よりも濃いケアラシが発生しており、度々、上空を飛び去るカモ類の姿は見えましたが、タンチョウヅルが飛び立つ姿は中々見えませんでしたので諦めかけていたところ、青空をバックに飛び去る親子3羽の姿を含めて10羽の姿を見ることが出来ました。子どもは首から上が薄茶色で頭の赤もないので直ぐに見分けることが出来ます。
夕方は15時から、ねぐらの森へ帰るタンチョウを菊池牧場で待っていると、2羽から5羽の編隊を組んで次々に飛んできた美しい姿が見られ、満足満足のタンチョウヅルとの出会いでした。