釜ゆで落花生は美味かった

佐倉・でんぱた舎の「千葉名産!らっかせいの収穫&食体験」に参加して

 

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落花生の収穫作業

 

 9月25日の日曜日、佐倉・でんぱた舎の「落花生収穫イベント」に参加した。妻の友だちの本江さんの夫が農業関係の仕事についており、その関係からイベント参加への誘いが届いたとのこと。一緒に行ったのは妻と妻の友だちの香代ちゃん。参加するにあたって佐倉・でんぱた舎BLOGを覗いてみると、コンセプトは「農ある暮らしをもっと身近に。千葉県佐倉市から発信するアグリコミュニケーション。田んぼや畑での農&食の体験、自然観察を通し、農業者と一般生活者を縁(むす)びます!」と書いてある。

 

佐倉・でんぱた舎の発足概要について、現在の代表者である新保さんは次のように述べていた。

「4年前の2007年、寒河江さんというかたが農業従事者と一般生活者(消費者)を縁(むす)びたいという思いから「でんぱた舎」を立ち上げ3年間に渡り活動を進めました。その中で参加者は、その活動を楽しみながら、たくさんの方々と出会い、さまざまな発見と農家の方々の思いや農業の奥深さ、田んぼや畑を維持するための自然環境の大切さなど、数多くのことを学びましたが、寒河江さんは結婚を機に佐倉を離れ「でんぱた舎」の活動は一旦休止しました。そこで、一緒に活動していた人の中から、この活動を継続させたいという思いで新たに2010年「佐倉・でんぱた舎」が発足致しました。

 「佐倉・でんぱた舎」の活動内容として、今までご協力いただいてきた農家の石田さんの田んぼや畑、竹林での「いきいき畑サークル」の活動の継承。これまでどおり、植え付けから収穫までの農業体験と収穫物の食体験を通して、農業を身近に感じていただけるようなイベントの開催。また、たけのこ堀りを楽しみつつ竹林整備の必要性を学んだり、ホタルが生息する里やまを観察したいと考えています。これまで「でんぱた舎」の活動に参加された皆さまからご提案やご助言をいただき、より楽しく、より充実させたいと考えております。ぜひ、多くの方にご参加いただきますようお願い申し上げます。と述べている。

今回私たちが参加した「千葉名産!らっかせいの収穫&食体験のご案内」イベントでは「作物たちは、猛暑晴れにも、アライグマや野ウサギの野生動物、マメコガネ(害虫)の襲来にもめげず、豊かな実りに向かって頑張っていますグッド(上向き矢印)その作物のトップを切って、5月15日に植え付けた落花生の「郷の香」「おおまさり」が収穫時期を迎えます。いきいき畑が育てた落花生を、この手で掘り、釜茹でにして豪快に食べましょう。参加費は、大人1200円、子供(3歳〜小学生)500円、3歳未満無料、とある。

 

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落花生の釜茹で

 

午前9時45分頃に農家の石田さん宅に集合。主催者側からイベント開催挨拶のあと参加者全員で畑に向かい、午前中に(1)落花生収穫、(2)お昼を頂きながら交流会。午後は石田さん宅に戻って(3)落花生の選別と釜茹で作業、(4)茹でた2種類の落花生を食べたあと午後3時頃より後片付け解散、というスケジュールだった。受付で参加費の1200円を支払いながら参加者数を聞いてみると、今回は参加者、スタッフを合計して33名とのことだった。

 

谷地田の畦道を通り杉林のなかの坂道を登ると目的地の落花生畑があった。石田さんのお宅から200mほどの距離だが、そこまで歩いていく間に、トンボ、コオロギ、クモ、カマキリたちが次々に現れると、子どもたちはそれらを大喜びで捕まえながら遊んでいる。私はトンボの持ち方やコオロギがどのように鳴くのかを子どもたちに話してやるとたちまち虫おじさんとなってしまった。

 

畑にはヤマトイモ、サツマイモ、コンニャク、エダマメ、落花生、マリーゴールドが植えられていた。今回収穫の落花生は、おおまさり3畝、さとのか1畝が植えてあるなかで、おおまさり2畝、さとのか1畝を参加者が2班に分かれ両端から収穫していくというものだった。収穫中にスタッフが写真パネルを持ってきて落花生の実が出来る過程を説明してくれた。私にとってその内容は初めて聞くもので文字通り落花生という名称に納得がいく次のようなものだった。

 

5月中旬頃に種をまくと6月下旬から8月下旬頃まで次々に黄色の花が咲く。花は朝開いてお昼には閉じる。咲いた時は細長い首は立って花を支えているが受粉すると次第に下向きになり、花の首が子房柄となり、そのうちに地面に着く。子房柄が伸び出し地中の中で落花生の実となる、というものだった。子房柄が空中にあったままならば決して実になることはなく地中でのみ実がなる、というところが落花生と名付けた所以である。なるほどなぁと思った。私の家庭菜園でも落花生10株が育っているが、種を蒔いたのが6月3日だったので今回の収穫期と比較すれば掘り出すのは10月15日前後だろうと思う。

 

私は落花生を掘るのは初めての体験だったが掘り出すのには農具はいらなかった。軍手をはめた両手で十分だった。片手で茎を束ねて引き上げながら、もう一方の片手をショベルカーのように土中に入れ込み両手で引き揚げる形をとると簡単にごっそり引き抜ける。土を振るい落とし実が入ったさやを取っていく。今回小学校入学前の子どもたちも参加していたが、みんなで楽しみながらできる簡単な作業であった。

 

午前中の収穫作業が終了すると畑の横で昼食だった。テーブルを組み立て田んぼでとれたコシヒカリを釜で炊き上げ、横の釜で煮込んだけんちん汁。タマネギとキュウリのサラダ、コマツナとピーマン、パプリカの炒めもの、サツマイモの茎、蒸かしたサツマイモ、キュウリの糠漬け、とおかずは全て畑で採れた野菜をスタッフが手料理したもの。それらを持参した食器に自分で取り分け、テーブルを囲みながら話が弾む。私はご飯、おかず、けんちん汁をそれぞれお替りした。作業のあと野外で食べる食事はことのほか美味いと感じる。

 

食事を終えると一緒に作業をした畑の所有者である70歳の石田さんが自分の現状を話してくれた。内容は、周りの農業従事者も殆どが70歳代で80歳になっても仕事をしている人もいる。米とヤマトイモと落花生を主に栽培しているが農業だけの収入では生活できないので息子も娘も農業を継がず後継者はいない。周りのほとんどが同じ状態なので10年後の農業を展望することが出来ない状態だ。私が住んでいる千葉市幕張でも休耕田や耕作を放棄した畑が目立つ。石田さんから伺った話の内容とあまり変わらない農業の状況が日本全国で起こっているに違いないと判断できる。農業後継者がいないのだろうと思う。休耕田や耕作を放棄した畑を買ったり借りたりすることは農地法で規制されているのが現状であり、行政を預かる人たちは農業=食の危機的状況が自分の問題として希薄なのだろうと思う。

 

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野外での昼食はことのほか美味かった

 

 午後は石田さん宅に戻って収穫した落花生の選別作業。一粒一粒選別しなければならず数が多いので結構手間のかかる作業だ。コンテナに座りながら黙々と作業を進める。今回は「おおまさり」と「さとのか」という2種類を収穫したわけだが、おおまさり」は名前の通り通常の落花生の3倍か4倍の大きさがある。茹で落花生ように開発されたもので私は始めてみる大きさだった。選別が終わるとさやに土が付いているため水洗いで土を洗い流す作業が待っている。水を流しながら米を研ぐ要領でごしごし落花生と落花生をこすり合わせながら土を落としていくものであり、この作業はなかなかの力技が必要となる。水が跳ね上がるため私のズボンはびしょぬれになってしまった。

 

洗い終わった落花生をいよいよ塩味で釜茹でにするのだが茹であがるまでに時間がかかるので前日に茹で上げた落花生を食べながら待つこと30分。茹であがった落花生はホクホクしていて実に美味しい。特におおまさり」は実も大きいため食べ応えがある。身の周りの薄皮はレスベラトールといわれているもので、赤ぶどうの果皮と同様にポリフェノールの一種だと教えられた。マウスなどの動物実験では長寿、抗癌、認知症予防、放射線障害の抑制効果などが報告されているという。勿論、私は薄皮のまま食べた。実に美味かった。冷えたビールを片手に食べれば最高だと思った。

 

参加者とスタッフ全員で記念写真を撮り解散となったが参加者には2種類の茹で落花生と生の落花生がお土産として手渡された。また、ヤマトイモが販売されていたので2袋買った。ヤマトイモは帰宅後に夕食としてとろろ汁を作ったのだが作っていて驚いた。おろしがねでヤマトイモをすりおろした時の粘り気が半端じゃない強さなのだ。子どものころ秋になると山に出かけては自然薯を掘っていたが、買って帰ったヤマトイモはそれと同じ粘り気だった。近くのスーパーで売っているイモとは全く粘り気が違っていたのだ。粘り気があまりにも強すぎるのでカツオの出し汁で割って食べやすいようにしたが、とろろ汁を店の名物料理にしているものよりも遥かに美味いと感じた。次回の12月のイベントはヤマトイモ収穫と予告があったので日程が合えば是非参加しようと思った。

 

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