伝説の洋画家たち・二科100年展へ

 

「伝説の洋画家たち」ポスター

 

 毎年秋になると上野の森で『二科展』という絵画展が開催されている。私は何度か出かけて行って展示されている絵を観たことがあるが、その二科展が始まって今年で100回目になるというので、東京都美術館で『伝説の洋画家たち・二科100年展』という企画展が開催されているので出かけてみた。

 

『二科展』は日本三大公募展の一つとされており、1914年(大正3年)に第1回が開催され、175点が展示されたという。その後、毎年応募者数は増加し、現在では会員応募と一般応募を含めて約5000人、応募点数は約22000点にのぼっているという。その二科展を創った洋画家たちを始めとして現在まで連なる画家たちの作品回顧展である。

 

 ポスターやパンフレットに名前が載っている画家は、藤田嗣治、安井曾太郎、東郷青児、岡本太郎、小出樽重、有島生馬、鈴木信太郎、岸田劉生、佐伯祐三、坂本繁二郎、関根正二、村山槐多、古賀春江、萬鉄五郎、など錚々たる面々で、美術に興味がある方ならば一度は目にした画家たちである。その人達を始めとして数々の画家が実際に二科展に出品した絵画が約120点展示されているのである。

 

 都美術館地下1階の入場券売り場に行くと、目に留まったのはシルバー料金である。一般料金は1500円であるがシルバー料金は1000円となっていた。運転免許証を出して65歳以上を確認してもらいシルバー料金で入場できた。展覧会は100年間を振り返る形となるため、展示内容は、第1章 草創期、第2章 揺籃期、第3章 発展、そして解散期、第4章 再興期、の4章構成になっていた。私は入り口に置いてあった展示目録を片手に草創期の第1回二科展に展示された作品から一つひとつ観て行った。

 

東郷青児「ピエロ」             岡本太郎「重工業」

 

 第1章 草創期で印象に残ったのは有島生馬の「鬼」、萬鉄五郎の「もたれて立つ人」、第2章 揺籃期で印象に残ったのは東郷青児の「ピエロ」、林重義の「テルトルの広場」、浜田葆光の「水辺の鹿」、第3章 発展、そして解散期で印象に残ったのは向井潤吉の「争へる鹿」、伊谷賢蔵の楽土建設、そして最後の4章 再興期で印象に残ったのは岡田謙三の「シルク」、岡本太郎の「重工業」であった。

 

 東郷青児は淡色と流れるような曲線を通した女性像で有名な画家だが、1916年の第3回に出品した「パラソルさせる女」に女性を抽象した端緒が既に見えている。 “芸術は爆発だ”で有名な岡本太郎の絵は一度観たならば強烈な色遣いと奇抜な発想で誰にも印象の残る作家だと思う。第1章から第4章までに展示された作品の中で私が1番好きな絵画は1932年の第19回に出品された浜田葆光の「水辺の鹿」だった。奈良公園の水場で水を飲む雌鹿の脇で周囲を見渡し警戒する牡鹿を描いたもので、絵のバランスと形のシャープさが素晴らしく、夫婦鹿の愛情が画面から滲み出てくる絵だった。会場出口にあったグッズ売り場で「水辺の鹿」が絵葉書になっていたら購入しようと思って探してみたが、残念ながら絵葉書にはなっていなかった。

 

 『第100回記念二科展』は、今年92日から14日まで港区六本木の国立新美術館で開催されるので出かけてみようと思う。