あまりにも悲しい結末
銃撃戦に巻き込まれ死んでいくヒロイン・ヘヨン
韓国映画『DAISY』が5月27日から上映されている。早速、観にいった。あまりにも悲しい結末の純愛映画だった。オランダを舞台に画学生へヨンと孤高の暗殺者パクウィ、麻薬ルートを追跡するインターポール捜査官ジョンウの三角関係が、デイジーという花に想いを託し命がけで愛を貫こうとするが結末はあまりにも悲しく非情な純愛物語である。
物語はオランダで骨董店を営む祖父と暮らす画学生ヘヨンのもとに頻繁に届けられる真っ白いデイジーの花。それは彼女が展覧会用の絵を描こうと夏に訪れた郊外での忘れ難くも美しい夏の日の記憶を甦らせるものだった。名前も姿も知らない送り主こそ運命の恋人だと信じ愛を持ち続けるヘヨンは、肖像画の客として花を持って現れた麻薬ルートを追跡するインターポールの捜査官のジョンウに心惹かれるようになる。そんなヘヨンの毎日を人知れず見守り続ける男パクウィ。花を育てクラシック音楽を愛するその男は孤高の暗殺のプロだった。・・・・・
ヒロインのへヨンは『猟奇的な彼女』『僕の彼女を紹介します』のチョン・ジヒョン、相手役の暗殺者パクウィには『MUSA』『私の頭の中の消しゴム』のチョン・ウソン、インターポール捜査官ジョンウには『エンジェル・スノー』のイ・ソンジェ。『猟奇的な彼女』、『僕の彼女を紹介します』、『私の頭の中の消しゴム』の3本の映画は、いずれも恋愛映画であり私は3本とも観ているが、これらの内容に比べると今回の『DAISY』は結末が悲しすぎると思った。
広場で肖像画を描く画家の卵・へヨン
映画のタイトル『DAISY』は和名「ひなぎく」。かつてデイズ・アイ(太陽の目)と呼ばれていたところから、デイジーという英名がつき、花の芯を太陽に花弁を光線に見立てた名前。バラのような派手さはないが清楚で可憐。目立たず、そっと咲いているイメージをヒロインに重ね、花言葉は「乙女の無邪気」「心の底からの愛」だという。
花言葉の「乙女の無邪気」から言えば、無垢の明るさ、可愛さ、がピッタリのヒロインであると思った。「心の底からの愛」から言えば、それは打算のない愛であり純愛のことだと思うが、現代においては表面的な愛が当たり前となっている流れの中で、韓国映画が純愛映画を一貫して作り続け、それが日本でヒットしている現象を考えると心の琴線に訴える内容の作品を作れば普遍性を持つということが分かる。日本の中でも『世界の中心で愛を叫ぶ』という映画がヒットしたがキーは「ピュア・ソウル」ということだろうと思う。
孤高の暗殺者パクウィにしてもインターポール捜査官ジョンウにしても、自分の心に忠実に、そして相手を大切に誠実な対応をしていきながらお互いの人間関係を作り出していくということの大切なことを再確認させてくれる。恋愛映画だから人間としての基本を描くのだろうか。私は映画に限らず小説などからもその内容を吸収し自分自身の生き方としてそれを実践することの大切さを感じる。
映画は出来るならばハッピーエンドの結末を迎えたいのだが、物語の進行によっては悲しい結末の映画も仕方ないのだろうと思う。エンディングテーマ曲が流れていてもその歌詞に映画のせつないワンシーンが蘇ってくる。いくすじかの涙が頬を伝わった。