大、26才の君へ
19戦目の伊藤圭太選手に判定勝ちしたリング上で 2014年6月25日
大、26才の誕生日おめでとう。
君は25才のうちに日本チャンピオンになると目標を定めて日夜トレーニングを積んできましたが、そのチャンスは廻ってきませんでした。一昨年、昨年と負けなしの7連勝ですが、君よりも日本ランクの上位につけている選手に対戦要望を出してもひとりとして対戦を受けてくれる選手はいませんでした。今年になってからも上位に位置する選手に改めて対戦要望を出しましたが全ての選手が断ってきました。その選手にとって君と対戦すると負けてしまうのが分かっており、タイトルマッチのチャンスが遠のいてしまうからです。そのような状況にあっても君は黙々とトレーニングに励んでいます。半年前から開始した体幹トレーニングの成果が出始め、身体のバランスが良くなってきたためパンチスピードが増してきました。7連勝は全て8ラウンドを戦っての判定勝利ですからスタミナも十分になってきました。あとはタイトルマッチが廻って来るチャンスを待つばかりです。君はチャンスが廻ってきたならば確実にそれを掴むであろうことを父さんは確信しています。
君とボクシング談義を交わしている場面でしばしが驚かされることがあります。それは目の前で進行している試合を見ながらも君は試合展開を詳細に分析し相手選手の動きや心理から自分だったらこのように戦うと次々に話していくからです。その解説は的を得ておりボクシング解説者も驚くであろうという内容です。それは君が10年近くボクシングというスポーツを君なりに追求し自分なりのボクシング理論を確立したと同時にストイックな生活を続けた到達点であり、それはまだまだ発展途上であるということです。君は頭で考える理想形に自分の身体の動きを実現化させていくための筋肉のバランスと使い方を日常のトレーニングで確実に掴んでいると思われます。
君は連勝していても人に会う時はいつも謙虚に対応しています。父さんも実際に後楽園ホールで君の応援に来ていた人から聞かされたことですが、「大さんはプロボクサーなのにこんなにも謙虚な人がいたことに驚きました」と君のことを褒め、「これからも試合ごとに応援に来ます」と言っていました。君にその人のことを聞いたら、その方は社長さん、と言われた時は少なからず驚きました。人と人とのつながりは心と心のつながりが基本です。決して損得を考えたお金を仲介としたつながりではありません。ここ2〜3年の君の周りの人とのつながりは急速に拡大していますが、君の対応を見ているとそのことがよく分かります。これからも謙虚という言葉を忘れずにいい人間関係を築いていって下さい。
君は精神的な弱さを克服しようと数々の専門書を読みながらポジティブな考え方をするように努力しています。ものには裏表があるので本人がどのように捉えるかで結果がまるきり正反対になることがあります。精神面の弱さは物事をどう捉えるのかの問題ですから自己自身の訓練によって克服することが出来るのです。体験を積むことは精神的な弱さを克服するのに大いに役立ちます。他人の体験であっても自分だったらどうするかを常に考えるくせをつけて具体的なイメージトレーニングを重ねることです。その積み重ねは自らの弱点を克服していく一つの手段です。
君は昨年11月に幼馴染みが先生をしている小学校で「将来の職業について考える」というテーマで君のボクシングの体験を話しました。君にその授業体験を聞かせてもらいましたし、その後に授業を受けた子どもたちからのお礼の手紙という形の感想文も読ませてもらいました。その体験は君にとって大きな経験になったことだろうと思いました。君は事前にどのような内容を話そうかを検討し、時間配分を考えながらイメージトレーニングを3回実施してから授業に臨んでいったと聞きました。君が実際に行っていることを集約し相手に分かるようにまとめて言葉にして出していくと行為は結構難しいことなのです。企業でもよく使われているPDCA理論という方法論がありますが、具体的な計画を立て、その目標を実現するために行動し、出た結果を総括し、良かった点は更に伸ばし、悪かった点は改善して次につなげていくという連続する一連の行動を続けていくことが自らを進化させていく方法だと父さんは思います。
今年の君の初戦は4月13日のダイアモンドグローブだと聞きました。2ヵ月先の試合となりますが君はその試合に勝つでしょう。色々なタイプの選手と戦いながら経験を積むことです。それがボクサーとしてのキャリアとなり財産となっていくのであり引き出しの多さになるのです。目標を高く掲げ、怪我に注意し、チャンピオンを目指して進んでいこう。これからも君を見守っています。
これで父さんからの26通目の手紙を終わりにします。
2015年2月7日