大、25才の君へ
2013年8月30日 増田靖之戦
大、25才の誕生日おめでとう。
君は三迫ボクシングジム近くのアパートで独り暮らしをしながらチャンピオンを目指し朝夕のトレーニングを積んでいます。昼間は『ドリルマン』という有名ラーメン店のバイト生活です。君が高校2年の時にボクシングというスポーツに飛び込んで8年という歳月が流れました。
最近は土曜日の練習を終えた後に幕張の自宅に息抜きに帰ってくることが多くなりました。アスリートの生活は試合が近づけば近づくほど肉体的にも精神的にも自分を追い込んでいきますから、選手にとってリラックスできる場所が必要になってきます。それが君の場合は幕張の家庭的雰囲気なのでしょう。
昨年の君のボクシングの戦績は4試合戦って4連勝でした。全て8ランドを戦ってうえでの判定勝利でした。多くの観客は派手なKO決着を望みますが、君の勝利がKO勝利ではないことで君の戦い方が地味だという声を聞くこともあります。しかし、君は高校や大学でアマチュアボクシングを習ったわけでもなく、町のボクシングジムに入門し、たたきあげとしての選手ですからアマチュア出身選手に比べると、どうしても経験不足はしかたのないところです。そこを自分自身の探究心を通して君のボクシングは少しずつ進化していると思います。歩みは遅いけれどもディフェンス技術を磨き、打たれないボクシングを目指して着実に進んでいくことが重要だと思います。大切なことは正々堂々と勝負し試合に勝つことです。その結果が昨年の4連勝につながっていると考えます。KOは試合数を重ね経験を積むことで相手との駆け引きやタイミングが分かることによって増えていくでしょう。左ジャブをこつこつ当て続けポイントを取りながら相手選手が弱まってきた後半に勝負をかける、という現在の戦い方を続けていけばいいと思います。焦ることはありません。
君が日頃から理想のボクサーと名前を挙げているアテネオリンピックのライトヘビー級金メダリストで現在のWBA世界スーパーミドル級スーパーチャンピオンのアンドレ・ウォード選手のようにボクシングに派手さはないがディフェンスの重要性を充分自覚した「相手に打たれずに打つ」ボクシングの完成を目指し、リング上では普段通りに淡々と自分のボクシングを実践し、対戦相手から戦いづらいテクニシャンボクサーと呼ばれることが好きなボクシングを長く続けられる秘訣だと思います。打たれてはダメです。
君は日本スーパーフェザー級の2位までランクが上がったところでジム移籍問題が発生し試合が出来ずランク外となりました。その後、ジムを移籍し日本ランカーに戦いを申し込んでも断られ続け、ようやく昨年11月に佐藤通也選手との対戦が実現し見事に打ち勝ち、東洋太平洋ランカーと日本ランカーに復帰しました。父さんは試合当日にはネパールトレッキング中でしたがタイのバンコクで勝利のメールを受信し、一緒にトレッキングに出かけた山仲間から祝福の言葉を受けたことを思い出します。
手に入れた東洋太平洋ランカー、日本ランカーに留まることはチャンピオンがタイトルマッチの対戦相手として君を指名してくれれば自らの戦いによってチャンピオンベルトを腰に巻くことが出来る位置に立っているということです。これからの一戦一戦が君にとっては重要な戦いとなってきます。君は今年の初詣に昨年同様に群馬県の榛名神社に出かけました。昨年は年男の厄払いでしたが、今回は今年中にチャンピオンになると誓ったとのことです。自分の目標を高く掲げ、その実現に向けて考え、トレーナーと相談し、思いっきり行動に移すことです。今年も4連勝しチャンピオンベルトを掴もう。父さんも君の目標が実現できるように応援するよ。
これで父さんからの25通目の手紙を終わります。
2014年2月7日