大、22才の君へ

 

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日本スーパーフェザー級2位・松崎博保選手を撃破(1126)

 

大 22才の誕生日 おめでとう。

 昨年、君は後楽園ホールで3月11日、7月23日、11月26日と4ヶ月おきに3度戦いました。結果は3連勝でした。3月の試合を勝つことによってA級選手に昇級し7月の試合をKO勝ちしたあと、右拳をボクサーの職業病とも言われている「ボクサーズナックル」で駿河台の日大病院に入院し手術を受けました。

 8月6日の手術時、手術を担当された医師から4ヶ月間はリハビリをして6ヶ月後から練習を再開するように固く言われていたのですが、次の試合が11月26日に決定したので手術後1ヶ月後に軽く打ち出し、2ヶ月後には手術前と同様なハードな練習を始めました。無理をすると右拳の悪い状態に戻ってしまい手術が台無しになる、とも医師から注意されているのにも係わらず、再発というリスクを負いながらもなぜ早期に練習を再開したのかというと、11月の対戦相手は当時日本スーパーフェザー級第2位の松崎博保選手だったからです。君にはこの一戦に勝利し日本ランクを獲得する目標があったためです。

 君は手術後まもない時期に三谷会長から松崎選手との対戦を打診され、「やらせてください」と即答したとのことです。目標を高く掲げ、それに向かって前進する姿は輝いています。勿論、朝練習のランニングなどの基礎運動は続けていましたが、手術後に右手が使えなくとも左手一本で練習を続けたと君は言っていました。

 君は11月26日の一戦に見事に勝利しました。父さんはいつものように西側リング下エプロン記者席で写真撮影をしていましたが、7ラウンド終了時点で君の勝利を確信しました。前半は互角か松崎選手が有利な展開でしたが、4ラウンド以降は全て君がラウンドをコントロールしていました。君は非常に冷静に試合を展開し、松崎選手のパンチを被弾しても決して怯むことなく挑戦者として堂々と真っ向勝負で対戦していました。松崎選手は離れてのアウトボクシング、接近してのインファイト、ともに出来る20勝しているテクニシャンですが、君は挑戦者として果敢にアタックし2:0の見事な勝利でした。8ラウンドが終了しリングアナウンサーに勝利を告げられたとたん、君はリング上で嬉し涙を流していました。その泣き顔をリング下から見上げ、君が小さかった頃の「泣き虫・大」を思い出していました。

君は2年連続で東日本新人王戦ではシード選手ながら不本意な負けで終わりましたが、その負けが決してマイナスにはなっていないことを父さんはことあるたびに君に話していました。その2年に渡る下積み、練習漬けの日々があってこそ今日の君の姿があると思います。君は精神的にも肉体的にも急速に成長しています。父さんは君が一皮向けたと感じたのはA級第1戦でエイトマンの入場曲でリングに上がった時でした。君の全身からオーラが発散され、溢れる自信に輝いている君がいました。「熱く強いハートと冷静な判断が出来る頭脳」という言葉はアスリートにとって最も重要な資質です。その資質を厳しく辛い練習を通して血肉化していくストイックな姿勢が君にはあります。君は、酒にしろ、煙草にしろ、ボクシングを続けていく中で悪い影響を与えるものは躊躇なく自分の生活から外していっている姿にそのことを感じます。君は、理想のボクシング選手はホルヘ・リナレスだけれど、現実の自分のボクシングスタイルは相手にプレッシャーをかけ追い込んでいく内山高志チャンピオンのタイプなので、今後、自分の型の完成を追求していきたい、と話しています。

 


 11月期の日本ランキングで君の希望通り日本スーパーフェザー級第5位にランクインしました。日本ランクに登場することは本当に凄いことです。日本にプロボクサーは約3000人いますが、そのなかで日本ランカーはほんの一握りです。これからの戦いは一戦一戦が厳しい相手となるのは目に見えています。その相手に打ち勝っていかないことには君が目指すチャンピオンベルトを腰に巻くことは出来ません。君は既に分かっているでしょうが、これからは今までより以上に君自身の精進に全てがかかっています。父さんはこれからも後楽園ホールに通いながら君の戦いを見続け、岩井大ファンクラブニュース『ファイト』を編集し続けていこうと思っています。

 君自身が一番知っていることですが、ボクシングはスポーツなので日々の練習の積み重ねが確実に試合に現れるものです。また同時に経験が重要なスポーツですから焦らずに基礎を確実に進化させ、対戦経験を積んでいけばと思っています。ボクサーは打たれてはだめです。ディフェンスをしっかりしたうえでアグレッシブな攻撃力が必要です。君はやっと22才です。昨年から取り組んでいる肉体強化・改造の筋トレは君に合った方法を指示してくれるトレーナーとコンビを組んで毎週日曜日にジム通いをしています。これからも「強く美しいボクシング」を目指して日々の練習が続いています。しかしまた、ボクシングというスポーツはいつも危険と隣り合わせのスポーツです。2年前に2人、昨年は1人が試合後に意識不明となり緊急手術の甲斐もなく亡くなっています。こういう事故に接するたびにボクシングは本当に真剣勝負ということを実感します。毎年のように事故が発生し若い命が亡くなっていますが、君は自らの意志で戦いのリングに上がっていきます。父さんは君の身体を心配しながら君の意志を尊重し見守っていきます。

 これで父さんからの22通目の手紙を終わりにします。

                                       2011年2月7日

 

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